104話
ゴンッ‼
(イッタァ……っ‼ もうっ‼ これ以上バカになったらどうすんのよっ⁉ てかっ‼ 痛くてもっ‼ これは離さないんだからねっ‼)
井戸の石組みに頭と背中を打ち付けながらもしっかりと縄梯子を握り締める。
「里道っ‼ サラっ‼ 無事っ⁉」
二人分の体重を握り締めただけでは支えきれないと思い、縄梯子に体を巻き付けるようにすると、規則正しい振動が伝わって来る。
(あぁ……。これは登って来てる振動だよね……? てか、マジ痛いんだけどぉ……。私、何回頭打った? 現世に戻っても大丈夫? かなりのバカになっててヤバいとかなってない?)
ホッとしたのも束の間。崎野のゾンビがズルズルと体を引き摺るようにしながらリリに近付いて来た。ロディも竹富も次々に湧き出て来るNPCゾンビに囲まれ動きが取れなくなっていた。
「リリ……リリ……オレノ……オンナ……」
「るっさいっ‼ あんたなんて大嫌いよっ‼ 私にだって選ぶ権利あんのよっ‼ こっち来んなっ‼」
リリが崎野ゾンビに叫ぶ。すると、井戸の中から物凄い熱量が感じられた。
(え?)
「グダグダうるさいのよっ‼ リリは、あんたなんかカケラも好きじゃないってぇのっ‼ 消し飛べぇ〜〜〜〜〜〜〜っ‼」
(え? え? え?)
どうやったのかサラがピョンと井戸から飛び出て来た。その頭上には超巨大な火の玉があった。
(元○玉……?)
リリは唖然と見上げた。ゴウゴウと唸るような音と熱量を持った火の玉が崎野のゾンビに向かって行った。
崎野のゾンビは何かを言いたげに口を動かしたが、超巨大火の玉に焼かれ消え去った。
「リリっ‼ 大丈夫っ⁉」
サラはリリの横に着地すると、潤んだ瞳でリリを助け起こした。
「え……あ……うん……。大丈夫……」
「良かったわ」
(うん……。良かった……のよね……?)
リリの目は崩れ去った屋敷の残骸を見ていた。コの字形の屋敷の東側は木っ端微塵に吹き飛んでしまっていた。
「マジで……サラはスゲェよ……」
「頼むから、夫婦喧嘩で魔術を使わないでくれよ?」
サラの魔法はNPCゾンビも一緒に消し飛ばしたようで、囲まれていたロディと竹富が苦笑いを浮かべながらリリの傍に集まる。
里道も井戸から体を出した。
「リリ、大丈夫……じゃなさそうだな」
縄梯子に引き摺られ、アチコチ出血し、泥まみれになったリリは誰よりもボロボロたった。
里道はリリの横に膝を付くと、回復術と浄化を使った。