伯爵令嬢を返しに行こう
翌朝、リリアン達は目の行き場に困る格好から着替え、リビングルームへとやってくる
「おはようございます、二人とも早いですね、リリアン様はドレスでは無いのですか」
「馬車の中に着替えがいくつかありましたので、動きやすい服装を選びました」
乗馬クラブのお金持ちが着ているような茶色い乗馬服なのかな?乗馬服なんて見た事が無いから詳しくわからないけど、リリアン様はふわふわ感ゼロのロングスカート、エリカさんはキュロットを着用し、二人ともブレザーのような上着を着用している。
この服なら魔獣との戦闘になっても動きやすそうだ。
「シオン様、昨日は有り難うございました、早速ですが出発の相談をしたいのですが」
早々ではあるがリリアン様とエリカさんはすぐにでも伯爵家に戻り今回の事を報告しなければならないようなので、なるべく急いで欲しいとの事だが、目的地までの距離が解らないので装備をある程度調えないといけない都合もあり、今日いきなり出発するのは勘弁してもらいたい所だ。
エリカさんの話によると伯爵家に嫁いできた三人目の女性、リリアン様からすると義母に当たる女性の実家に呼ばれパーティが開催されていたのだと言う。
パーティも無事に終り帰路の途中で盗賊団に襲われ、リリアンとエリカは薬で眠らされた状態でドゥームグローブ内に放置される。
リリアン様達が発見されたドゥームグローブ地獄の三丁目と呼ばれる場所はドゥームグローブの入り口から馬車を飛ばして1日位の場所、普通に徒歩で移動すれば野営を含めて2~3日程かかる場所で、森から出て1日馬車を走らせるとマーキュリー領フリッグの街があると言う。
「地獄の三丁目からここまでラスター達に引っ張ってもらって二時間だから、往復で3日程度かかるかな?距離や移動速度が判らないから何とも言えないけど」
エリカさんの話ではブラックウルフが森の外に現れたら大騒ぎになるから止めた方が良いと言われたので、森から先はラスターとウインクは使えない。
ラスターが楽々と引いていた馬車だけど、さすがにキャリーカートの何倍もの重量がある馬車を引きながら森の外を目指すのは難しそうだ。
「エリカさん、馬車は諦めてもらって、不便ですがキャリーカートで移動で大丈夫ですか?」
「そうですね、その魔獣に馬車引いてもらっても森の外では使えませんから、装備品を持ち歩くとなるとシオンさん達のキャリーカートの方が良いかもしれません」
元々殺す気がなくてゴブリンやオークにご令嬢を滅茶苦茶にさせるのが目的だった今回の事件、森の外まで行けば捜索隊と合流できるかもしれないと結論が出たので、準備ができ次第出発する事にした。
必要な物を母さんに発注。
テント等のキャンプセットと食糧品のレトルト食品、あとは少しだけサバイバル装備品。
時間が無かったのでこれらを近所のアウトドアスポーツ専門店やスーパーで買ってきてもらい光る空間を経由して送ってもらうとその日の夜には出発の準備が整う。
荷物の受け取り中、母さんは異世界人を一目見たいと騒いでいたが「明日早いから」と遠慮してもらい、後で記念写真でも送ろうと思う。
翌日早朝にキャリーカートにサクラ、リリアン様達が乗り荷物を載せ、ウインクを接続、俺はラスターにまたがって伯爵令嬢返却作戦を開始した。
ウインクにはキャリーカートが接続されているのでそんなに早くは走れない。
本当は凄く早く走れるのだけど、走るとキャリーカートの二人が大変な事になりそうなので、スピードに慣れてきたら速度を上げて様子を見ながら、現在は馬車よりは速いペースで移動中だ。
時々ゴブリンとオークが現れるけど、そのときは俺が金属バットで殴って倒す。
拠点に数日帰れないので残弾の心配があるサクラのエアガンはできるだけ温存だ。
新しくレッドキャップゴブリンといわれる上位種も出てきた。
集団ではなく5~6体のパーティのような感じで襲われた。
「キーキキキキ」と奇妙な笑い声を上げて薄気味悪かったが金属バット一発で簡単に倒し、ドロップ品が腰巻きではなく帽子、ゴブリンでも落とす物が違うみたいで、金貨やポーションの違う種類の物も落とした。
金貨持ちなので本当は凄く強いのかもしれない。
背後のゴブリンマジシャンがハンドボール位の大きさのファイアボールを打ってきてもラスターが吠えると衝撃波のような物が出てファイアボールも消える。
ラスターとウインクは魔力量が多いから魔法を打ち消す事とか出来るのだろうか?
俺も覚えたい。
なお、このファイアボールは金属バットで打ち返す事も出来る。
野球ボールが当たるような感触じゃなくて風船のような大きなゴムボールを打ち返すような感じで弾力がすごくあって不思議な感じ。
振り抜いてしまうとゴムボールが弾けるような感じになりファイアボールも飛散して消えてしまうけど。
ファイアボール位では怖くなくなり、この辺のゴブリンはもう敵ではないなと思い始めた頃、ラスターが止まる。
「どうしたラスター、敵か?」
『ウォン!』
森の中から大きな体つきの緑色をした、人型のモンスターが現れた。
場所は地獄の三丁目。
「バーバリアン!」
キャリーカートのエリカさんが叫ぶ。
ゴブリンがハゲ頭に長い耳が付いているような感じなら、バーバリアンはパーマがかったチリチリのロン毛のモンスター。
細い目は目全体が黒目で凄く不気味だ。
ラスターを見て逃げないのでそれなりに強いか馬鹿かのどちらかである。
最近ゴブリンの集団攻撃を受けなくなったのはラスター達が成長したからだと思っている。
時々ソロで現れるのは大体ゴブリンやオークでも馬鹿な奴等なのか、よっぽど自信があるのか…わからないや。
目の前に居るバーバリアンは自信を持っているかのように現れ、それがやがて3体、5体、10体と増え、奥の方には一際大きくドクロネックレスをしている奴まで現れ、俺達は取り囲まれた。
俺とサクラはラスターを降り、ウインクの接続紐を解くと戦闘開始だ。
ラスターとウインクは目にも止まらぬ速度でバーバリアンの首元を食いちぎって行く
俺とサクラはラスター達が居ない方向を担当。
俺が金属バットで殴りつける、バーバリアンは大きな棍棒を持っていたが、棍棒ごとあっさり破壊して金属バットがバーバリアンの頭にめり込んでアイテム化。
サクラはハンドガンを構えて俺を後からサポートしようとするが、バーバリアン達の目的はサクラやリリアン様達だったようなので、俺は近づけさせないように応戦。
雄叫びを上げて最後にボスらしきバーバリアンが棍棒を持って襲いかかって来たが、最後にサクラがハンドガンでヘッドショットを決めるとボスバーバリアンの頭が飛び、戦闘終了。
「お兄ちゃん、あいつ私達の事を凄く下品な感じで見ていたから我慢出来なかったよ」
バーバリアン達は何が起きているのか訳が解らないまま5分もしないで全滅した。
ドロップ品は、ドクロのネックレスと腰巻き…それにいつもの石と銀貨だ。
地獄の三丁目に入るとこんな戦闘が増えて、本当にご令嬢を帰す気があったのか怪しくなってきた。
「シオンさん、人型のモンスターが連続で出現するのは私達が居るからかもしれません…」
エリカさんの話だと人型の低位モンスターはメスが極端に少なくその代わりに同じ人型の人間女性をさらって同族を増やす。
だから女性が多いこの状況では襲われやすいのだとか。
恐ろしい世界だ。
ご一読いただきありがとうございます
サブタイトルが適当です。送り届けるとかが良いのかなと。
面白そう!続きが読みたいと思いましたら
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