異世界の人と初めての食事
俺はリビングルームで、夕食のセットアップをしている。
異世界のお客が来ると母さんに話をしたら、すこしだけ気合いを入れてくれたようで、ローストビーフとパンにサラダ。
それにビーフシチューと食後のデザートを用意してくれた。
俺とサクラは箸とスプーンだけど、彼女達はフォークとナイフにスプーンだよなと想像しテーブルをセット。
本日の両親達とのリモート会議はリリアン様達が居る関係で簡単に済ませる事にした
『シオン、お客様ってどんな人なの?』
「母さん、初めてのこの世界で会った人だよ、悪い人じゃなさそうで困っていたから助けたんだ」
『私も異世界の人、見て見たいわぁ』
「うーん、画面に映る母さんを見たらビックリすると思うから今日はやめておいて、彼女達も色々な事があって疲れているみたいだからさ」
『わかったわ、もし紹介できるなら紹介して頂戴ね』
大きな変化として、この世界で初めての異世界人との遭遇、あとは通常報告のみ済ませてリモート会議を終了する。
リモート会議が終ると風呂上がりのリリアン様達がリビングに集まってきた。
俺はリリアン様とエリカさんの姿を見て驚いてしまった。
まず髪の毛の色が違う!リリアン様は茶色系の髪だと思っていたのに、彼女はダークブロンド系の髪色で茶色は強いが金髪部分が照明の明かりを浴びてキラキラと輝き、綺麗な縦巻きロールだった髪型はここではセット出来ずに緩いウェーブのかかったロングヘアの姿へと変わっていた。
エリカさんも赤茶系の髪はストロベリーブラウンのストレートヘアに変わり一層赤みを増して高級シャンプーのTVCMのような艶を発していたのだ。
そして、サクラよ、お前は何を着せているんだ!
異世界の二人は胸元の双丘がシャツの上からも十分に解る位に強調され、リリアン様はシャツのボタンが弾けそうな感じになっているし、エリカさんはボタンを閉めるのを諦めたのが谷間が見えてしまっている。
ちょっと目のやり所に困るような状態である。
昼間のスカート・ドレス姿から一変しパンツスタイルで膝下くらいのパンツではあるが二人とも恥ずかしそうだ。
ちなみにサクラの方は、体型がわかりにくいダボダボのTシャツ。
彼女も母さん似で俺が見てもプロポーションは良いけど、妹なので気にした事は無い。
しかし目の前の二人は他人なのでどうしても意識してしまう。
「サクラ、もっとゆったりとした服は無かったのか?」
「普段お客さんなんか来ないからダボTシャツだってそんなに無いよ!他のはまだ洗濯していないし、私が昔使っていた古い服しか無いの!」
普段着ならあるけど、寝間着に使えそうな柔らか素材の服なんて普段からそんなに用意していないと逆に怒られた。
古い服だからサイズも少し小さいのかもしれない、だから二人ともキツそうだったのかも。
「お兄ちゃんも二人が美人だからって鼻の下伸ばしちゃ駄目だからね!!」
警告までされると、俺も気を取り直す。
それに異世界でサクラなりに頑張ったのだね。
ごめんね。
初めてのお客さんを招いた夕食のスタートだ。
貴族様に庶民の料理が口に合うか解らないけど、母さんの作った料理を並べられたテーブルに着席し俺とサクラは自分で取り分けていく。
今夜のメニューは新鮮野菜のサラダ・スーバーの牛肉を使ったローストビーフ・同じくスーバーの牛肉のビーフシチュー・野菜多め、コンソメ風スープ、パンまたはご飯、食後のケーキと紅茶となり母さんが気合いを入れて作ってくれた。
リリアン様の方はエリカさんが全てやってくれるようだ。
作法とか解らないからお任せで良いよね。
食事の前に彼女達は祈りを捧げ、良くTVで見るシーンに似ている。
「それじゃリリアンさん、エリカさんも遠慮無く食べてね!ママの料理は美味しいよ!」
サクラが促しても、彼女達はこくりと頷くだけで食べようとしない。
料理が変わった物なのか何なのか解らないが彼女達は手を付けようとしない。
もしかしたら食べたことが無いような物を出してしまったのかもしれないと思い、俺達が先にたべる事にした。
サクラがローストビーフを口に運び、食べ始めるとその様子を見ていた彼女達も動き始めた。
リリアン様がローストビーフを口に運ぶと、次の瞬間に口元が緩む
「美味しい!、そして凄く柔らかいですわ!」
続けるように2枚目のローストビーフを口に運ぶと、エリカも食べなさいと促していた。
「では失礼して頂きます」
エリカさんも料理を見て緊張している感じだったが、口の中で咀嚼を始めると顔の緊張が一気に緩む。
外からみても美味しそうに食べている。
「サクラ様、この料理は何のお肉なのですか?」
「うーん、たぶん牛だよ」
牛の名前でリリアン様、エリカさんの頭に?マークが点灯したように見える
「ウシですか?知らない獣の名前ですわ」
「お嬢様、バウの肉に似ていると思います」
「バウとは魔獣のお肉ですか、臭みも無くこれほど美味しくいただけるとは素晴らしい料理ですわ!」
俺はその様子を見ながらサラダをバリバリと食べていたのだが、エリカさんがその様子を見てやっぱり驚いている。
「シオン様、それは生野菜なのでしょうか?」
「そうだけど?何か食べられない物とかあるの?」
「いいえ、こんな森の中でそのような生野菜があるとは思えませんでしたので」
エリカさんは珍しい物を見るかのように、ボウルから自分の小皿へサラダをとりわけ口の中に入れる
「美味しい、しかも冷たくシャキシャキとしたこの新鮮な感じ、保存の魔法…それに冷凍の魔法を…?信じられません」
魔法と聞こえた気がするが、とりあえず今は流す。
エリカさんはリリアン様の小皿にもサラダを取り分け、彼女にも勧めると、二人はパリパリと咀嚼しながらサラダを美味しそうに食べていた。
次にリリアン様はビーフシチューを口に入れる
「なっ!なにこれ!凄く美味しい!!バウの肉がホロホロと崩れて口の中からとろけるように無くなりますわ!」
エリカさんが続くようにビーフシチューを口の中に入れた
「はい、口の中で転がすだけでお肉がバラバラになっていきます!」
「凄く味わいがあってこんな美味しい料理が森の中で食べられるとは思いませんでしたわ!」
「お嬢様、このパン凄く柔らかいです!」
リリアンはパンを取って食べると、あまりの柔らかさに
「おいしい!」と口ずさんでしまう
「白パンは良く食べますが、こんなに柔らかいパンを食べたのは初めてですわ!」
気が付くと二人とも作法も何も考えず夢中になり料理を食べていた。
俺とサクラはTVのグルメ番組を見ているかのような二人の実況を見て若干引いてしまったけど、美味しそうに食べている二人を見ると貴族様も美味しい食べ物の前では普通の人とあまり変わらないんだなぁと思った。
最後にサクラが冷蔵庫から食後のケーキを運んできた。
二人とも驚きの連続だったのだが、まさか食後にケーキが出てくるとは思って無かったのだろう。
「サクラ様、まさか、これはケーキなのですか?」
「エリカさん!普通のスーパーのイチゴケーキだから味も普通だよ!」
サクラよ、通じない単語を話すとリリアン様達が混乱するだろう!
「すーぱー?のケーキなのですか?」
細かい事は置いておいて、二人にもケーキを食べて貰う事に。
甘いケーキに顔が緩む二人、幸せそうにケーキを楽しみあっと言う間にケーキを食べ終えてしまった。
「まさかこんな森の中で甘味が食べられるとは思いませんでしたわ」
最後に食後の紅茶を出すと、一緒に置いてあった砂糖に飛びきり驚いていた。
スーパで売っている上白糖を料理用の砂糖ケースに入れた物を何の飾り気も無く机に置いてご自由にどうぞとしただけだったけど
「砂糖が白い…」
と凄く驚いていたのだ。
聞いたら「白い砂糖はほとんど見た事が無い」って事で彼女達は驚きの連続だったみたい。
こんな感じで初異世界人との初食事会が終了したのだったが、もしかして白い砂糖は超高級品だったりするのか?
ご一読いただきありがとうございます
おかげさまでPVも順調に伸びております
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