生活インフラを整備しよう
光っている場所では解りにくいので、光の空間と名前を付けた場所。
どうやら父さん達の居る場所は元の地球のままであり、俺達の家と繋がっていた扉の場所はこちらと同様に真っ黒で、扉の一番下の部分に三十から四十センチ四方の光の部分があるのは同じなようだ。
両親と同じ認識にするために光の空間とし、光の空間の長さを計測。
四メートルの物干し竿がこちら側は三十センチほど残していることを伝えると、地球側も三十センチほど飛び出しているとの事だ。
この光の空間はおよそ三メートル四十センチほどの距離があり、光の空間に棒を突っ込んでも消滅するような事はなかったようだ。
双方の声は届くが真っ白の光の空間であり地球側を見る事は出来ない。
水や電気が無いのは不便であるが、食糧問題も深刻。
こちらの世界がどんな場所なのかもわからないので簡単に外に出る訳にも行かない。
もしかしたら熊や狼のような野生の猛獣がいる危険な場所だったら、俺達兄妹のような現代人では戦う事も出来ずにあっと言う間に捕食されてしまうからだ。
ラノベなどで今流行とされる異世界転移物みたいな状況だったらどうしようとか、さくらは騒いでいたので彼女の考え方は少し違うみたいだけど。
早朝からゴタゴタしていたので忘れていたけど、朝食がまだだ。
地球側の母さんにおにぎりと味噌汁をお願いし、この光る空間に物を通すと食べ物がどうなるのかを検証する事にした。
職人の父さんが物干し竿の先にお盆をビス留めした簡易トレイを製作。
十五分後には暖かいおにぎりと味噌汁二人分が簡易トレイに乗せられ、こちら側に運ばれてきた。
「見た感じ食えそうだな」
「美味しそうだよ!大丈夫だよ!平気平気!」
さくらは何を根拠に言っているのかチョット心配なるが、とりあえずこのおにぎりが普通に食えるのか検証しなければならない。
おにぎりを手に取り見回す。
普通におにぎりだ。
味噌汁も温かく湯気が出ている。
おにぎりを手で半分に割ってみたが、具に梅干しが入っている普通のおにぎりだ。
俺はそのまま口に入れてみると、普通に食べることが出来問題無い事を告げるとさくらはおにぎりを手に取る。
「私も食べるね!、ママ!頂きます!!おいしいよ!!」
光の空間を通過してきた食べ物が普通に食べられる事が確認出来たので、食糧については気にしなくて大丈夫そうだ。
食べ物が大丈夫なら、この光る空間に手を突っ込んでも大丈夫かもしれないと思い始める。
上手く行けばここを通って地球に戻れるかもしれないからだ。
俺は大けがをしないことを祈り、光の空間に手を突っ込む事にした。
最初は指先を入れて様子を見るだけだが、恐る恐る指先を近づけ指が光の中に入っていくと光の中に入った瞬間に指先が光の先で消え、まるで真っ白な水の中に指を突っ込んだような感覚で指先が全く見えない。
痛みも感じないがビックリして指を引き抜いたが、幸運にも指先は無事だった。
隣で様子を見ていたサクラはおにぎりを食べながら、手を入れるのは止めた方が良いと言っていたが、指が大丈夫なら手も大丈夫だろう。
勇気を振り絞り手を突っ込んで見ると、突っ込んだ先の感覚が消えた。
指先だと良くわからなかっただけで、腕が切断されたような感じに感覚が無くなった事に驚き素早く手を引き抜く。
「ふぅ…大丈夫だ…この光る空間の先は感覚が無くなるな」
「お兄ちゃん凄い汗だよ、手、大丈夫なの!?」
手をグーパーさせてちゃんと動く事を確認したが、あまりの体験に体中汗びっしょりになっていた。
四人で相談した結果、俺達ならこの空間を通ってむこう側に行く事も出来そうだが、腕の感覚が無くなった事を両親に伝えると、こっち側で危険が迫りどうにもならなくなった時の最終手段にすることになった。
「ところでお前の家の方は水や電気はどうなっているんだ」
父さんが心配して声を掛けてきた。
「あぁー、両方とも駄目だ、何とかならないかな」
「チョット待ってろ!」
10分ほどすると父さんが、電気の延長コードと水道ホースをこっちの世界に送ってきたのだ。
「ホースはとりあえず届く場所の蛇口に繋げ!、延長コードはそこから電気を取れ、難しい事は後にするから、今はこれで大丈夫だろ?」
「了解、有り難う助かるよ」
ホースを適当な蛇口に繋いだ事を知らせるとホースに水が送られてくる。
これで家中の水道が復帰した。
家電製品は最低限に絞り電源タップを使い繋いでいく。
ひとまず、冷蔵庫を復帰させ、夜に備え、デスクライトを取り外してリビングルームに設置、カートリッジ式のガスコンロを送って貰い、水・ガス・電気の確保が完了。
「お兄ちゃん!インターネットが繋がらないよ!」
ネット回線は新築母屋の方の回線を使っているので、良く調べると光の空間の目の前までは電波が届いていた。
モバイル回線の方は不通だがWi-Fiは微弱に電波が届いている。
スマホがネットワークに接続できる事を確認すると両親達にこちらの状態をスマホで録画しメッセージアプリで送る。
両親達も俺達が置かれている状況が大体飲み込めたのか今後どうするべきか光の空間の前で家族会議が始まったのだった。
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