初遭遇!異世界人は伯爵家のお嬢様
馬車から降りて目の前に居る美少女二人、馬車の中で見た時は気にしなかったが、メイドの少女も美少女と言える女性で、茶赤色のウェーブ掛かったセミロングの髪型にすらっとした顔立ちにメイド服の上からでもハッキリと判るようなメリハリの付いた女性らしい体つき、俺達を警戒しているのか目つきはとても怖い。
お姫様風の美少女は縦髪ロールの金色に近い茶髪、ウエストがきっちりと締め上げられたドレスに身を包み胸元が強調された、中世のパーティ用衣装のような格好をしている。メイド少女の後に守られるようにしているが、表情は若干おっとりしているような世間を知らないお嬢様?と感じられたのが第一印象だ。
二人は外に出る事で俺の姿を見ると警戒を強めているので引き続きサクラが対応をする事にした。
「貴方たちどうしたの?」
「貴方たちとは失礼な!このお方はマーキュリー伯爵家のご令嬢リリアン様です」
「ごめんなさいね!でも細かい事は現状を確認してからの方が良いと思うよ」
サクラはサラッとメイドの言葉を受け流す。
「エリカ、いまはこの方達の話を聞きましょう。私たち置かれている状況は良く無いと思いますわ」
リリアンは森に放置された馬車や本来居るはずの護衛の姿が無い事で状況を整理していくと、現在の自分たちの状況を把握したようで、二人はこちらの話を聞く準備ができたようだ。
「私はマーキュリー伯爵家のリリアン・マーキュリー、こちらは私の専属メイドのエリカですわ」
二人の自己紹介が終った所で、俺達の自己紹介を始める
「私はサクラ、あっちにいるのがお兄ちゃんのシオンだよ、これで良いかな?」
凄く簡単な自己紹介が終るとリリアンが物珍しそうな感じで俺達の事を観察中だ。
「えっと、貴方たちは冒険者か旅人なのでしょうか?」
「うーん、ここの森から出られなくなったから遭難者かな?」
サクラよややこしい事を言うな、理解に困るキーワードは後々自分の首を絞めるぞ!
エリカさんも軽く”遭難者”のワードは無視して自分の居る場所についてサクラに質問していた。
「この森って、ここは何処なのでしょうか?」
これは俺にも解らない。
サクラが言ったように森から出たことがないから
「さっきの男の人達が言っていた話だと、地獄の三丁目とか聞こえたよ」
この言葉でエリカが深刻な表情を浮かべる
「地獄の三丁目ですって!?あなた本当にそう聞こえたの!?」
「お兄ちゃん、確かに地獄の三丁目って言っていたよね!」
「確かに地獄の三丁目とか物騒な事を言っていたな」
二人の顔から血の気が引き、真っ青に変わって行く。
「ここはドゥームグローブなの!?」
ードゥームグローブー
マーキュリー伯爵家の領地内にある広大な森である。
この地域であれば平均的強さの魔獣やモンスターが生息する森であり周囲の街や村から討伐依頼があれば冒険者や兵士達が討伐を行える程度の難度の低い森だった。
しかし、1年ほど前に森に変化がおこる。
森の中心部に塔のような建物が出現するとモンスター達の強さが格段に跳ね上がったのだ。
冒険者や兵士達が連携し出現するゴブリンやオーク達の討伐を試みたが本来のゴブリンやオークの強さとはかけ離れ森内部への移動はほぼ不可能となってしまい、状況を重く見たマーキュリー伯爵は大金をかけ上位冒険者チームによる調査隊を編成し森の調査を行うも失敗する。
生き残った上位冒険者の話では「この森は地獄が続いている」生還者の一人が破滅の森だと語った所から
”ドゥームグローブ”と呼ばれるようになったのだ。
森に街道が残っているのは難度が低かった頃に隣の領地へと続く道が整備されていた物である。
地獄の3丁目は調査隊が魔獣やモンスター達の難度により名付けた地域名だ。
謎の塔の付近は8丁目と呼ばれ未調査、街道沿いは1~6丁目と呼ばれる場所を横断している感じとなっている。
数が大きくなるほど敵の難度が上がり、本来この森には出現しなかった魔獣やモンスターの出現が報告されている。
リリアンとエリカのドゥームグローブの話を聞いて現れるモンスターのドロップ品がショボい理由がなんとなくわかった。
「やっぱりここは本来難易度の高い森じゃなかったのだな」
「お兄ちゃんと私ならもう、普通に倒せるようになったからね」
メイドのエリカは驚くような表情でこっちを見ていた
「貴方たち、ここのモンスターを倒す事ができるのですか!?」
まぁ初期の頃は家の敷地内から一方的に虐殺するだけの日々だったけど、ラスターとウインクが家族になってからは家の外に遠征もしてゴブリンやオークの集落を壊滅させる事もできるようになった。
この辺のゴブリン、オーク程度なら余裕で倒せる。
「貴方たち、リリアン様を伯爵家まで送り届けてもらえないでしょうか?冒険者であれば報酬はきっちりお支払いします」
さっきの男達の話ではこのご令嬢を殺すつもりは無く、生きて帰って来る事かのような話をしていたけど、ゴブリンやオークの慰め者になる事が前提となっていた。
彼女達がそんな事になるのは気分が悪いからリリアン様とエリカさんを送り届ける依頼を引き受ける事にした。
もちろんサクラも同意見で快諾してくれる。
「お兄ちゃん、これからどうする?もうすぐ夜になるよ。一度私達の拠点に戻ろうか?」
「そうだな、流石に夜この森の中を移動するのはイヤだからな」
「貴方たちはこの森を拠点にして活動をしているの!?」
「まぁ、そうなりますね。詳しい事は聞かないで下さい。冒険者のあるあるでしょう」
リリアン様もエリカさんも信じられないような目つきでこちらを見ていたが、冒険者事情には詳しくないようだったため、その場は普通に誤魔化せた。
さて二人を連れて自宅に帰ることにしようか。
初めて会話をした異世界人が伯爵家のお嬢様だったとは、俺もサクラもビックリだ。
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