創星記
本編に入れるか迷いましたが、こちらにします。
暗い暗い、ただ何も無い――ひたすらに広大な、闇。
だが、そこには、小さな小さな、粒子があった。
それらは、散り散りに、その空間を漂う様にして、確かに存在していた。
その粒子には、意思があるのか、それとも無いのか――永い永い時を経て、一所に集まった。
何故か……は、誰にも分からない。
ただ――お互い惹かれ合う様に、少しづつ、だが、確実に集まった。
粒子が集まりだしてからも、永い永い時は経つ。
"目"という物が在れば、いつしか視認出来うる程の大きさになっていたかも知れない。
だが、そこには、"目"などは在りはしない。
集まった粒子がどれだけの大きさになったのか、知る者は居ないのだ。
粒子は、集まってからも、中心を目指した。
ただひたすらに、目指した。
すると、不思議な事が起こった。
中心に向かって引っ張られる様な力が沸き起こったのだ。
それにより、次第に粒子が集まる速度は加速していった。
それは、重力と後に呼ばれる力だった。
重力の中心には、夥しい数の粒子が集まり、いつしか新しい力を手に入れた。熱だ。
その熱は、粒子を変質させた。
ある時、内側へ内側へと向かっていたその力は、突然限界を迎えたのか、力の向かう方向を変えた。
それは、大爆発だった。
収縮し、熱を帯び、変質した粒子は、光というものを生み、反対方向へ――つまり、外側へ向かって、凄まじい勢いで、拡がる様に飛び散っていった。
それらは所々で衝突し、そこでまた粒子が集まる事もあった。
だが、変質した粒子は、様々な性質を持つ物に成っていた。
ひたすらに拡がる物、ぶつかると集まる物、様々だった。
集まって固まった物は、後に星と呼ばれた。
だが、この時には、その様な概念は無いのだ。
何故なら、その様に呼ぶ者が存在していないのだから。
それからまた、永い永い時が経つ。
ある時、突如として、"星"の一つが、意思を持った。
それは、漠然として、そして、単純なものだった。
だが、確実に意思と呼べるものだ。
無機物だが、意思がある。無機生命体が誕生した。
無機生命体に、薄らとあった意思。
それは、二つあった。
一つは、"生きたい"という事。
もう一つは、"仲間が欲しい"という事。
概念的に要約すれば、こんなところだろう。
生きたいという、意思。それは、特に問題が無かった。"星"は、生命活動に必要とする物が、少なかった。いや、有機生命体に比すれば、無きに等しいだろう。
問題は、"仲間が欲しい"という意思の方だった。
この頃、"星"は無数に出来ていた。しかし、それらは、明確な意思を持ち合わせてはいなかった。
この"意思を有した星"にとって、それらは仲間と呼べるものでは無かったのだ。
"星"に、何かを掴む"手"は、無い。
漠然とした意思だけが浮かぶ頭脳――意識と、近くの物を引き寄せる重力だけがあった。
"星"は、仲間を創る事にした。
材料は、他の"星"や、まだ星に成っていない粒子だ。
幸い、時間はたくさんあるのだから。
この無機生命体が、仲間を増やすべく、その思考を巡らせている時も、中心から反転した力は、どんどんと拡がっている。
無機生命体は、永い永い時の中、一つの仲間を創る事に成功した。……のだが、バラバラの方向へ押し流され、離れ離れになってしまった。
無機生命体には、あまり感情というものは無かった。
だから、方法を確立した後は、流されながらもいくつか仲間を創った。
だが、いずれも離れ離れになった。
永い永い時を跨ぎ、そんな事を繰り返す内に、無駄と悟ったのか、別の方法を思い付いた。
自身の内側に、別の意思を持つものを創ればいい、と。
そうして、後にこの"星"に於いて、神と呼ばれる者が創られた。
第一に誕生した"神"は、"星"の中心に走る、光の柱と成った。
第二に誕生した"神"は、"星"の中に、"星のような物"を幾つか創った。
だが、その"星のような物"は、意思を持たなかった。
そうして、自らも星のような物の一つに成った。
第三に誕生した"神"は、より明確な意思を持つ"神"を、三体創った。
そして、自らは、星々を包み込んだ。
第三の"神"により創られた三神は、それぞれ力を持っていた。そして、それぞれが役割を担う事にした。
"創造"の神が、創り出し、"力"の神が、能力を与え、"時間"の神が、育んだ。
そうして形作られた世界に、その三神は、自らの分身の様な存在をも生み出した。神族だ。
自らの能力を丸写しした様な存在を創り、満足した三神は、その存在に後を任せ、旅立つ事にした。
自らを生み出した無機生命体は、仲間を創る事に成功したのだが……
他の無機生命体がどうなったのか。
感情の様なものを有していた彼等は、気掛かりだったのだ。
必要ならば、手助けをするべきだろう。そう考えた。
この"星"には、それを可能とする者達を創ったのだから。
そうして、三神は、永い永い時をかけ、方々で無機生命体を発見し、必要であれば手助けをし、必要であれば、路を繋いだ。
無機生命体は、実際にはそれぞれ思いが違ったり、既に活動を停止していたりと、様々だった。
中には、自然発生した無機生命体に出会う事もあった。
永い永い時の中、生まれたそれらを探す旅は、未だ未だ終わりそうも無い。
だが、問題は無い。
三神には幸い、時間だけはあるのだから。
ありがとうございました。
またよろしくお願いします。