0.5. 女神の蛇足(知らない間にざまぁな件)
かなり拙い文章で、お恥ずかしい限りですが。
本編のカットした部分になります。
「色々と、気になっているでしょうから、折角なので、しっかりと説明しますね。」
にこりと微笑む女神は、心做しか嬉しそうだ。
人類には、共有したい願望があるが、この女神にもそのような感覚があったのだろうか。それとも持て余した時間の使い道にでも困っているのだろうか。
目の前の男(魂)の一生を、違う角度から見ていた事を、得意気に話し出すのだ。その様は、人間であれば、"生き生きとしている"という形容が当て嵌りそうである。
「あなたが学生だった頃、あなたの成績は、平均以下でしたね。そして、いじめられてもいましたが、腕力での解決を試みて、皆から嫌われてしまいましたね。」
そうでしたね。
「ですが、あなたが受験を迎える年、あなたの学年は、嘗て無い程の上位校への合格率だったそうですよ。」
へー。そうなんですね。
「ちなみに、就活の頃も、一流企業への合格率が過去最高だったそうです。
あなたは、漆黒企業行きでしたね。それからも、職場を転々として。」
……そうでしたね。
「そうそう。あなたが入社して、業績が伸びた企業、あったでしょう?たくさん。」
言われてみれば、ほぼそうだったような……?
「でも、あなた自身の成績が高かったわけでは無かったですよね。だから、冷遇されて、辞める羽目にばかりなりましたよね。」
それは……いつもそうだった。
「あなた自身の運気が最低だったので、そうなってしまったのです。」
なるほど。酷い話だ。運気最低とか。
「あなたが去った後の企業達は、軒並み業績が悪化しています。倒産した企業も、いくつかあります。」
へー。そうなんだ。まぁそれはどうでもいいんだけど。
「ちなみに、あなたが一目惚れをしてお付き合いされた女性。」
ああ……、あの娘か。元気にしてるんだろうか?
「あなたに別れを告げた後、外国人の方とお付き合いを経て、ご結婚されました。外国籍が欲しかったそうです。」
そうだったんだ。
「ですが、結婚生活は、お相手に冷遇されてしまい、上手くいかず、あなたと別れた事を後悔していますね。」
はぁ。と、今更言われましてもね?
……どうせなら幸せになってて欲しかったけどな。
「あなたがご結婚されたお相手。」
……毒嫁か。
「あなたを騙し、長く不倫をされていましたね。
更には、あなたの稼ぎを遣い込んだり、あなたの分だけ食事を作らなかったりと、冷遇していましたよね。」
そうでしたね。まぁ、気付いたのはヤツが居なくなってからでしたが。騙されてたオレが無能だったんすよ。
「せっかくあなたのような存在と一緒になれたのに、上手く利用出来なかったのは、愚かしいですね。」
……辛辣ッスね。
「そうそう、息子さんは、間違いなくあなたのお子さんなので、ご安心ください。」
そうなんだ。あれだけ懐いてくれてたし、血の繋がりなんかどうでもよかったけど。
「実は、元奥様。不倫相手の子種を身ごもられたのですが、あなたを誤魔化し中絶したのです。子宮の病気だと言って、二日だけ入院した事、あったでしょう。」
あったね。
「その事があって、あなたとの間に子供をもうけようと思ったようですね。保険の為にも。
人間は、妊娠中ですと、妊娠しませんからね。
それに、離婚前提で考えると、子供が居る方がお金になりますからね。」
なるほど。凄いアイデアですネ。ぶっ飛び過ぎでしょ。
「元奥様、あなた名義の預貯金を全額引き出され、出て行かれましたよね。」
あー、そうだったね。帰ったら誰も居なくて、びっくりしたなぁ。キャッシュカードも無くなってたしなぁ。
「その時、あなたが溺愛されていた息子さんを連れて行かれたのは、あなたへの嫌がらせと、母子手当や、婚姻費用の請求、養育費の請求の為に、長い時間を掛けて計画していたようですよ。」
……息子が不幸にさえならなければいいんだけど。
結局オレ死んだみたいだし。
「元奥様は、あなたから奪ったお金と、母子手当をもらって、不倫相手と楽しく過ごそうと考えていたようですが、その不倫相手にお金を持ち逃げされてしまったようですよ。」
え、マジか。息子は大丈夫なのか?
「息子さんは、しばらくの間、あなたに会いたいと泣いていましたが、今は元気に暮らしていますよ。
息子さんには、あなたが注いだ愛情の分、あなたの力が働くので、今後も大丈夫です。あなたの力が枯渇寸前になるまで注がれていますから。」
そうかぁ。元気かぁ。良かった。何も遺してやれなかったけど、あの子には幸せになってもらいたいな。
「起業の件ですけど。」
ああ、最後のですね。
「共同経営を持ち掛けた元同僚さん。ギャンブルで、多額の借金があったみたいですよ。」
そうなんだ。羽振り良かったけどな。言う事のスケールもデカかったし。気付かなかったな。
「口座の出資金は見せ金で、店舗も準備期間分しか契約しておらず、備品なども全て売却して、全額返済に充てたようですね。」
マジかぁー。詐欺師の手口ー。
「ですが、結局全然足りず、一昨日、山に埋められました。」
えぇぇ。何してんだ、アイツ。そこはせめて逃げ切れよ。
「あ、それと……」
いや、もういいです。もう充分です。息子が元気なら、それだけでいいんです。
死後の断罪ってやつかも知れないけど、マジでもう勘弁して下さい。
「そうですか。バンドの話とか、ルームメイトの話とか、まだまだ色々話してないのですが……」
はい。もういいです。
「分かりました。では、この話はお終いですね。」
女神は、もっと話したかったのか、残念そうな表情を浮かべた。
いやいや、こんな話より、もっとあるだろ!
ありがとうございました。またよろしくお願いします。