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神世界転生譚:蛇足譚  作者: Resetter
10/10

残された者たちの軌跡

残された者たちの続編です

https://ncode.syosetu.com/n9813ho/

↑本編はこちら

 

 レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。


 地球での"増幅者"としての役割から解放され、無駄に長いとも思えるような新たな名と神族の身体を与えられた、リセットの神能を持つ幼神。


 レイリィは、創造主たる母神ソールフレイヤの計らいで、獣族の星であるここテイルヘイムに送られた。(落とされた)


 そこには、同じくして転生を果たしていた愛犬ルビィの姿があり……


 そして、獣族の世界を旅するうちに、たくさんの仲間(美女)たちが増えてきていたのだが。


 元々の不運体質のなせる業……なのかは定かではないが、転移の神能を持つルーキスナウロスと邂逅、そして戦いの最中、異星へと飛ばされてしまったのだった。


 だが、レイリィ一行もただでやられてしまったわけではなく、ルーキスナウロスを消耗させ、撤退を選ばせる程度には善戦したとも言えよう。


 その激戦の翌日。


 大猿族高地の民の村、とある家では――

 その残された仲間たちによる話し合いが行われていた。


「それで、ハヌマ様。お気持ちはお決まりでしょうか。」


 黒髪の長髪から覗く小さな黒紫の角、灰色の瞳、小さな牙を持つ、嘗ては"忌み子"と呼ばれた鬼神。


 闇御津羽天弥媛神くらみつはあまねひめのかみ、通称アマネである。


 人形のような美幌を持つ美少女だが、濃紺の着物、黒袴、大小の黒刀を差す、侍風の出で立ちである。


 レイリィの名付けにより神化した彼女は、普段から基本的に従者然として振舞っているのだが……

 レイリィに関する事にはその限りにない場合が多い。

 今も平静を装っているようだが、声色が僅かに硬い。


「ねー! はやくいこーよー!」


 雪のような純白の体毛、ルビーレッドとオーシャンブルーのオッドアイが特徴的な巨大な神狼ルビィ。


 ルビィはレイリィをボスと慕い、とてもよく懐いている。

 そわそわと、今にも走り出しそうだ。


「これ、ルビィ殿。気が早いぞえ。まだ答えは出ておらぬであろうえ。」


 白銀の九尾、巫女装束に身を包んだ蠱惑的なまでに妖艶な雰囲気を醸し出す美女、フウカ。

 神狐の民の長である。

 彼女もまた、レイリィにより神名を授かっている。


 だが、テイルヘイムにおいては、最上位種族の長である。

 竜族襲来などの問題を鑑みれば、大猿族の問題を早期解決した後にレイリィを探すべきとの見解なのだ。


「ウィトもちゃんと戦うニャ。ウィトだってやれるんニャ!」


 ウィト・フレン。

 大猫族、虎人の長ハールマーの娘の白虎である。

 レイリィに神名を授かり、神化し神虎となった。

 経験も浅く、本能的ではあるが、今はやる気のようだ。


「アマネさん……オラは……争いを止めたいんだッキ!

 本当に呪いの神具の力であんなことになってるなら……何とかして欲しいッキ!」


 高地の大猿族、最強の戦士ハヌマ。

 彼は同族の死を望まない平和主義であった。

 だが、他族に害をなすならば……と、覚悟を決めたようだ。


「承知いたしました。では、早急に参りましょう。」


「えっ?!アマネさん、1晩だけで神力回復したッキか?」


「いえ……。ですが、フウカ様、ルビィ様、ウィト様もいらっしゃいます。それに、斬るのみでしたら問題ございません。」


「お……おぉ……そうだッキか……。」


「うんー!はやくいこー!みんなのってー!」


「ルビィ殿……まだ肝心な事を聞いておらぬぞえ。

 ハールマー殿。もし……低地の大猿が長を弑して止まらねば……こなたらには殲滅という道しかないが……如何かえ?それでも往くかえ?」


 ハヌマは、その両の拳を握り締め、顔に皺を寄せながら、目を瞑り……


 カッと見開くと

「ああ……大猿族の不始末は、大猿族でつけねばならんッキ!」

 と、力強く答えた。


「ふむ。では参ろうかえ。」


 フウカはハヌマの決心を確認すると、満足そうに頷いた。


 ――――


 マウラ山を下り、低地の民の森を抜けると、そこは広大な草原だった。


「ルビィさん! そんなスピードで大丈夫ッキか?」


「うんー! だいじょぶー!」


 ルビィの陸上移動速度は、この中の誰よりも早い。

 そして悪路をものともしない。


 ここまでの道中も一切スピードを緩めることなく、あっという間に山道を下りきってしまったのだ。


 それも、その背にはフウカ、ウィト、アマネを乗せているのである。

 山道を慣れきっていたハヌマも、ルビィのその速さについていくのがやっとの有様だった。


「ふむ。ハヌマ殿よ。そなたこそ大事無いかえ?」


「う……確かにずっとこの速度は無理だッキ……」


「じゃあ乗せてもらったらいいニャ! ルビィは速いニャ! 快適だニャ!」


 ルビィの上でアマネに抱えられたウィトは、上機嫌な様子であった。


「ふむ。それはそうであるがの……ウィトや。何故(なにゆえ)そなたが答えておるのえ?」


「ニャ……?! だ、だってニャ……はやくついた方がいいと思ってニャ……ニャ……ニャ……」


 フウカに詰められて、途端に小さくなるウィトだった。


 ――


 ハヌマもルビィの上に乗り、草原をひた走ること3時間ほど。


「いたッキ! あの群れだッキ!」


「……なるほど。」

「ふむ。」

「たくさんいるねー!」

「がんばるニャ!」


 大猿族の群れは、200は居ようかという群れだった。

 その分、歩みは遅く、追いつく事が出来たようだ。


「ハヌマ様。長は、あの中央の……異様な神気を放っている者で間違いございませんか?」


「ああ……。そうだッキ。……本当にいきなり斬るんだッキか?」


「はい。おそらく……神具を直接狙う事が適ったとしても、今の(わたくし)では破壊には到らないかと……。」


 話している間にも、ルビィのスピードは落ちる事はない。

 群れの最後尾まで既に目と鼻の先だった。


「……参ります。」


 アマネのその一言は、ハヌマには誰も居ないところから聴こえたように思えた。


 直後。


「ああーッ!?族長!?どうしたッホ?!」

「族長の……首が……無くなったッホ……」

「何があったッホ!」

「族長が……族長が……死んだッホ!!」

「止まるッホ!敵だッホ!」


 ルビィたちの前方の群れは、大混乱に陥った。


「ふむ……。長は死んだようぞえ。さて、他の者に伝播した呪いはどうなるえのう……」


 フウカがそう漏らした次の瞬間だった。


「後ろだッホーーー!!!」


 1人の大猿族が吠えた。


「ふむ。では皆、降りようかえ。ルビィ殿」


「はーい」


 ピタッと停止したルビィ。

 フウカ、ウィト、ハヌマは降りると、迎撃体勢を取った。


「「長の仇ッホ!!!」」


 一部の後列に近い大猿族たちが走り出し――


 ――ブシャッ! ゾンッ!


  「ギャッ?!」「……ウッ!」


 血飛沫を上げた。


「ふむ、では風雪を贈ろうかえ。」


 フウカの周りの空気が途端に冷たくなり――そしてそれは吹き荒れて、大猿族の群れに襲いかかった。


「「ぎゃああああ!! 」」 「寒いッホ!!」

「凍るッホ!!」


 走り出した群れの先頭は凍る大地に滑り、転んだ。


「ウィト。」


「んニャ! 呀音がおん


 ウィトの発した音の波は……


「……くァァァ〜〜〜ッ!!」

 大猿族たちの平衡感覚を狂わせ、自由を奪った。


「一先ず、終わりのようですね。」


 長を始め、幾人か斬り伏せたアマネが姿を見せた。


「あ、ああ……。さ、さすがッキ……」


 ハヌマは、アマネたちが強いのだろうとは思っていたが、ここまでだとは思っていなかったようで……

 戸惑いを隠せない様子だった。


「ぶー。ルビィなんにもしてないー。」


「ルビィ殿は、まだ炎しか使えぬえ。燃やしてしもうたら、大猿族は全滅ぞえ。」


「そ……そうだッキ!追い付けたのもルビィさんのおかげだッキ!ルビィさんがいなかったら、大変な事になってたッキ!」


 ハヌマは、ルビィのご機嫌を取っているようであるが、それは紛れもない事実なのだ。


「うひひー。そうかなー。ボスほめてくれるかなー。」


「はい。ルビィ様。ご主人様なら、きっとたくさん撫でて下さいます。」


 アマネは、ルビィに同意したのだが……


「ボスー……。」


 ルビィは、レイリィを思い出した途端、その瞳に涙を浮かべた。


「レイリィ様なら、きっと生きてるニャ! ウィトはまだ撫でてもらってニャいニャ! 撫でてもらう約束ニャ! 絶対見つけるニャ!」


 ウィトは、力強くそう言った。

 だが、レイリィはそんな約束をしていなかった。


「ふむ。では、ハヌマ殿。低地の大猿と交渉ぞえ。そなたには大猿の長となってもらうぞえ。」


「ああ……。分かったッキ! オラが、大猿族を纏めるッキよ!」


 ――

 

 その後の交渉は、やはりルーキスナウロスの呪いの影響が残っていた様で、交渉は遅々として進まなかった。


 そこで、一行は念の為、呪いの神具を回収した。


 大猿族の前族長の保有していた呪いの神具は、首飾りであった。


 そして、大猿族を無力化したまま1晩を明かした後、再度交渉したところ……


 低地の大猿族は、今までが嘘のように素直にフウカの出した条件を飲んだ。


 そうして、ハヌマは犠牲者1名をもって、大猿族の族長となったのだった。

ありがとうございました!今回はいかがでしたか?

少しでもご興味いただけた、ちょっとは応援してやってもいいかなというお優しい皆様!☆評価☆やブクマ、是非よろしくお願いします!

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