表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/69

太陽



 【日輪空破(アトモス・ソレイユ)】。


 直径十メートルはある巨大な火球を自在に操る上位合体魔法の一つ。


 火属性の上位魔法【プロミネンス】と、風属性の上位魔法【ストーム】を掛け合わせることで発動できる、灼熱の業火。


 この合体魔法を一人で扱える魔術師は、オーデン王国中を探しても数十人しかいなだろう。

 天才のエイム・フィールですら、おいそれと扱うことは難しい。


――それをマックスさんが連発している? あり得ません、そんなこと。


 味方であるリツカですら、そう戸惑ってしまっていた。



「死ね! ノーマルが!」



 火球の一つに乗りながら移動するマックスは、因縁の相手――レグを追う。



「レグさん!」



「あ、エルマ。無事だったか」



 エルマの声に気づいたレグは、普段通りの間の抜けた調子で答える……が。


 その顔には、若干の焦りが見えた。



「ちょっとさすがに、あの魔法はやばいから逃げてたんだ。エルマも逃げ……」



 レグの視界に、傷だらけのサナの姿と倒れたキャロルが入ってくる。



「……」



 彼は一瞬、唇を噛んだ。



「マックスさん! 一旦攻撃を止めてください!」



 刀を納めたリツカが、火球に乗るマックスへ向けて叫ぶ。



「邪魔するなリツカ! そのノーマルはここで焼き尽くす!」



「そんな上位魔法を当てれば死んでしまうかもしれません! 失格になってもいいんですか!」



「知ったことか!」



 珍しく語気を強くするリツカの声に耳を貸さず、マックスは両手に魔力を込め始めた。


 そして彼も、地上にいるエルマやサナに気づく。



「丁度いい、あの時邪魔してきた女に、落第魔女もいるじゃないか! お前たちは絶対に殺す!」



 マックスの周囲に、赤褐色の魔素が渦巻き出した。


 今までよりも強く、濃い魔素が、彼の両手に凝縮されていく。



「やめてください! この近くにはあなた方の仲間も倒れているんです! 彼らまで巻き添えになってしまいます!」



 エルマも声を荒げてマックスを制止しようとする。



「……()()()()()()()。落第組にやられる程度の魔術師は、この学園に必要ない! 諸共焼き尽くしてやる!」



 二人のやり取りを聞いたリツカが、刀の柄に手をかけた。



「……今の話は本当ですか、落第魔女」



「はい。氷の魔法を使う方と水の魔法を使う方が、近くで気を失っています……彼の魔法が発動すれば、ただでは済まないでしょう」



「……わかりました」



 リツカは静かに目を閉じ。


 刀を抜く。



「ルーベル流剣術――【結晶塊】!」



「【日輪空破】‼」



 太陽と結晶が、ぶつかり合う。





 数分前。


 生徒たちを監督してた教師陣に、衝撃が走っていた。



「あれは上位合体魔法⁉ エイム・フィール以外に使える一年生がいるというのか⁉」



「しかも何発も撃ってるぞ! ありえない!」



「一年生レベルがあの魔法を食らったら、大怪我じゃすまないぞ!」



 演習場内が映し出された結晶を見ながら、複数人の教師が慌てふためいている。


 そんな中、冷静に状況を分析するエルフ――メンデル・オルゾの姿があった。



「……」



 彼はゆっくりと歩き、ある人物の元へ向かう。


 上位魔法学主任――トルテン・バッハの元へ。



「トルテン先生、少しよろしいですか」



「……何ですか、メンデル先生」



「いえ、マックスくんが素晴らしい魔法を使っているにもかかわらず、驚かないのが不思議でして……誤解を恐れずに言えば、数日前までの彼にあれ程の実力はなかったはずですから」



「……そうでしょうか。あいつの実力を見誤ったのでは? 奴も優秀な魔術師、本気を出せば上位合体魔法を使えたのでしょう」



「僕には到底そうは思えないですがね……例えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とか……そっちの方がしっくりきますねえ」



「……何が言いたいんですか、メンデル先生」



 こちらに目を合わせようとしないトルテンの横で、メンデルは不敵に笑う。



「仮に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼に力を貸していたとすれば、その痕跡を見つけることは困難でしょう。演習会での不正行為は昔からあるらしいですし、学長が放置している以上、僕も深くは気にしません」



「……」



「ですが、もし――」



 彼は、トルテンの肩にそっと手を置く。



「もし僕のクラスの生徒が死ぬようなことがあれば……その時は、どうなるかわかりませんよ。例え、死んだのが呪いの子だとしてもね」



 メンデルの顔から――笑みが消えた。



「……それを私に言われても困りますな」



トルテンは表情を変えず、淡々と答える。



「……ま、僕は生徒を信じていますから、そんな大事にはならないでしょう。本当に危なそうなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()



「……ふん」



 メンデルはトルテンに背を向け、演習場を見つめた。


――そう、信じていますよ、レグくん。君の力なら、何とかできると。


 彼は、優しく微笑む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ