俺の旅日記
ウッ、眩しい。
後、痛い。
……寒い…五月蝿い………眠い……最悪だ………
「…功ですかね?これ」
「俺に…なよ。先生呼んで…、報告だ。」
「はい、見張…お願い…す。」
「了…、行ってこい。」
何を…喋ってる?上手く聞き取れ…ない。
というか…誰だ?
「にしてもこんなガキがほんとにアレと?」
あ……聞こえる。ちゃんと聞こえる。
耳が慣れてなかっただけか。
「こんなのに頼らんといかんとは、何が……。いや今はいいか。」
聞こえてはいるけど何を言ってるのかさっぱりだ……
なにか…伝えられれば…
「ヒューヒューヒュー」
「!?」
目の前の男から驚愕の声が漏れでた。
男は俺の方を凝視する。
そうか、今の音は俺の口から出たものか。
男の体がフリーズしている。
「ビッッッックリしたぁ。怖ぁ……ま、まぁ……生きてるから当然だよな。……フゥ」
ようやく動き出した男の口から漏れ出たのは衝撃、安堵、納得が混ざったその一言だった。堅物そうかと思ったが、意外と怖がりなのかもしれない。
感情を伝えられはしなかったが、得たものはあった。どうやら俺が生きてるのは当然のことらしい。
まぁ自我があるのも気づいてるし、痛みも感じたから、自分が生物であるだろうという検討はついてたが。
なら今度は……
さっきと同じ要領で…でも少し力を込めてみる。
「ァ…ァァ…ァ」
「…本当かよ。もう声の出し方覚えだしやがった。」
「ァァ…ゥ…ァ」
「俺の方見てる。覚えた要因俺か?独り言言い過ぎたかね。」
「ォ、オレ」
「……俺だな。要因。」
「ま、まぁ特に支障はないか…先生に任せよう。問い詰められたら…黙ってよう」
……どうやら喋るという行為自体は、俺がやってもこの男は違和感を覚えなかったらしい。
先程から見えてる自分の体とこの男の体のつくりの共通点、言葉が通じる……俺は目の前の男に限りなく近い生物なのかもしれない。
「それにしてもこれの成長速度は凄いな、そろそろハイハイくらいは…」
ウィーン
先程もう一人の男が出ていった所が開いた。
また…誰か来たのか
「あ、先せ…え!?なんでここに!?」
男の声に驚愕の色が突如としてあらわれた。それから……
パンッパンッパンッ
ヒュンッヒュンッ…シャ
な、なんだ?男がなにか黒い筒のようなものを……先から光と煙が?
それにそれと向かい合うアレは…なんだ?
「くそ!装備が少なすぎ……グァ!」
「何か」から放たれた一撃が男の体を吹き飛ばし……その上に何かが覆い被さる。
「クソッ。退けよ!」
慌てて引き離そうとする男に、その「何か」が顔を近づける。
なんだ?男の体が…動かなくなった?
男はその「何か」の顔にあたる部分が近付いた瞬間に体の動きを止めた。いや、あれは止めたと言うより…
その「何か」は男の体に何度か顔を押し付けた後、ゆっくりと男から離れた。
ドチャッという物音がする。倒れる身体、流れる血。そうか、この生き物は、あの男の命を、問答無用で終わらせたんだ。
こいつ、俺の方見てるよな。その生き物はその両眼で俺をじっくり見据えていた。
その目は、見逃してくれるかなんて贅沢な希望を俺に与えてはくれなかった