ばぁばと第一歩
幸いなことに投稿2日目にしてたくさんの評価ptを頂いています。これからもよろしくお願いします。
こんな感じでラフによめる、そしてクスッと笑えるような作品を作っ作っていきたいと思ってます。
「……か、神様!!こりゃあ、一体どういうことかえ!?若返っとる!若返っとるよ私!!」
きめ細やかな頬に両手を当て、その場でぴょんぴょんと跳ねている。そして言葉とは裏腹にはじけるような笑顔を浮かべて、麗子さんは猫のいる方へ向き直った。
先ほどまでの落ち着いた態度はどこへやら、ぴちぴちの20代に若返っていることに驚きを隠せず、未だ鼻から血を流して倒れている猫のもとへ駆け寄った。
「……う、ううん……なんて美貌じゃ……若返ったらあんなめんこいお方だったとは……あんな顔で迫られたrって麗子さん!?ちょちょちょ待って待って心の準備がまだぼああああっ……」
やっと意識を取り戻したと思いきや、迫りくる麗子さんをみて再び鼻血を暴発させる猫。
「か、神様や!しっかりしい!神様!!」
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「……大丈夫かい?神様?こんなに血をだして……貧血になっちまうよ?」
「……ううん、むにゃむにゃ……はっ、麗子さん……また近……」
猫の視線の先には、麗子さんの美麗な顔。膝の上で仰向けに寝転がらせられ、お腹周りを優しくなでられている。
要するに、膝枕されているのだ。銀色の癖のある髪がはらりと垂れ、それを耳にかける一連の仕草が何とも可愛らしい。覗き込んでいる形になっているので、漆黒の瞳が猫を射抜いている。今にも吸い込まれそうなほど深い黒をたたえた目が少し細まったかと思うと……
「まったく、世話の焼ける奴じゃの……神様ってえのは、こんなにも頼りない奴ばかりなのかい?」
いたずらっぽく笑ってみせた。そんな彼女を前にまた失神しかける猫であったが、何とか正気を取り戻すとぴょんと麗子さんの肩に飛び乗り……
「……お、おほん!というわけでじゃ。めでたく麗子さんは転生を果たしたわけじゃが……とりあえず、今麗子さんが若返っているのはワシの能力のおかげじゃ!今ワシが猫の姿をとっているのも右に同じ。というわけでじゃ。麗子さんにはまずこの世界で必要不可欠な魔法についt」
「まずは町に行きたいねぇ……ここがどんな所なのか、知らないことには始まらんじゃろ?」
どうも麗子さんはかなりマイペースな性格らしい。若返ったことには驚きつつも、すぐに受け入れてしまう。しかし、そんな麗子さんを前に猫は逆らうこともできないようで。
「そ、そうじゃなぁ〜!魔法なんてあとでどうとでもなるんじゃしのう~!まずは麗子しゃんとのラブラブデート……じゃなくて、もとい、探索に行かねばな!うむ!それがよかろう!!」
なんて宣言したにも関わらず、猫は顔を朱に染めてデレはじめた。猫なのをいいことに彼女のお腹(といっても限りなく胸に近い)にスリスリし始める始末である。忘れてはいけないが、こいつの正体は神様を自称するじじいである。
猫の分際で下心が見え見えなのはさておき、兎に角方向性は決まったようだ。
「はいはい。とりあえずここに乗って、大人しくしてるんじゃぞ?」
麗子さんは息をハアハアさせながらすり寄ってくる猫を頭にのせると、道なりにそって歩き始めた。
集落や都市があれば、そこから生活に関する情報や、この世界のことが聞けるだろう。麗子さんは猫はあまり役に立たないと判断したのか、迷うことなくずんずん進んでいく。
「……ところで、麗子さん。道わかるんかいの?」
「そんなのは気の向くままにさぁ~。旅は道連れ世は情け、じゃろう?」
「その前に世から見放されなきゃよいがのう……」
「あら、神様であっても見放されるのかい?大変な世の中になったもんじゃのう……」
「いや、そういう事じゃ……なんだか心配になってきたのう……ワシ、早く麗子さんをエスコートできるようにならないとじゃなあ……」
……どうやら困ったさんなのはお互い様のようだ。
こうして、一人と一匹(?)の、異世界スローライフへの第一歩が踏み出された。
「……麗子しゃん、そっち、崖じゃぞ」
「おやまあ危ない危ない……死ぬとこじゃったなあ……まあ一回死んどるがのう……」
「それ、シャレになっとらんぞ……ああ、でも天然な麗子しゃんも可愛い……」
おやおや。早くも前途多難な予感。この先どうなることやら……その行く末は神のみぞ知る。
「いや、ワシ神だけどそんなこと知らんぞ???」
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