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5 全力疾走

 あれからしばらくどうしようか考えたが、あそこにいても仕方がないので、とりあえずあてはないが道に沿って歩くことにした。


 転がったせいで道の脇に広がる森の中にいたが、あの馬車が通っていたのはこの道のようだ。


 この世界がどういう世界観かはわからないが、コンクリートなどの道ではなく、人や馬車が通るために草木を取り除き土を固めた道である。


 黒のローブに茶色っぼい布製の服っていう俺の格好からしても、よくある中世ヨーロッパ風ってやつかもしれない。


 まあ、なんか響きも世界観もかっこいいから気持ちはわかる。


 あと、召喚されるってことは魔法みたいなのがあるのだろうか。


 魔法みたいなものがある世界だと、科学は発展しづらい気はする。


 その分、もとにいた世界よりも遅れてるような感じになるかも。


 とかいう無駄な考察もいれたりしながら、なんとなく馬車が進んだ方向と反対であろう方向に歩いていく。


 あの痴女悪魔がなんなのかはわからないが、捕まっていいとは思えない。


 世話係ってのは、未だにちょっと気になってたりもするが鉢合わせでもしたら最悪だ。


 ただ歩いているだけでも、時間は経つもので気付けば、夜が明けてきた。


 怒濤の展開に気持ちが興奮しているせいか、お腹が空かないのは不幸中の幸いと言えるのだろうか。


 いつまでもこんな道をさまよっているわけにはいかない。異世界に召喚されてすぐに餓死なんて斬新すぎる。


 しかも、俺を召喚した張本人は頭の上で寝てるし。展開が動いたら起こしてくれって、もはや投げやりすぎるだろ。


 まあ、とにかく人を見つけないと。


 何をするにしても生活基盤を整えないことには何にもできない。


「誰かいないか?」


 とぼとぼと道を歩きながら呟いてみるが、当然いるはずもない。


 今日が人生で一番歩いていると自信を持って言えるくらい歩いているのに。


 それなりにきっちりした道が続いているところを見ると、どこかにはつながっているとは思うが、到着はいったいいつになるのだろう。


「異世界でも月も太陽もあるんだな」


 向かう先に見える太陽らしきものを見つめる。地球と同じなら東に向かっていることになるなあ、と考えていたら背中からガサガサと草木を掻き分ける音が聞こえた。


「ん?」


 振り返り確認する。


 ウサギがいた。見た目の形はそうとしか言いようがない。


「う、あ、う」


 ただ牙を持っている。


「ぎしゃああぁぁぁ」


 そしてとてつもなくでかい。少なくとも2、3メートルはある。


 俺の頭なんか丸かじりされそうだ。そして、鳴き声が怖すぎる。


 俺にはわかる。こいつは今、俺をエサと認識した、と。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」


 もはや逃げる以外に道はない。人生で何年ぶりかの全力疾走。もはや限界に近いはずの体だが、アドレナリンが不可能を可能にする。


 冷静に考えれば、左右に広がる森の中に入ったほうが逃げれたであろうが、そんなことを考える余裕はない。


 ただただ道を一直線に駆けていく。


「ふあーぁ...なんだ、騒がしいな」

 

 俺の魂の全力疾走にメシアが目を覚ました。


 い、良いところに!なんとかしてくれ!!


「はっ、ふっ、はっ...」


 だめだ、言葉をだす余裕がない。


「クハ、クハハハハハハハ!!何してんだ、おめぇ!ウサギに追い回されて逃げてんのか」


 状況を理解したらしいメシアが声をあげる。


 心のどこかでやっぱりウサギなんだ、と思いつつも、今はそんなことはどうでもいい。


 わかったんならなんとかしてくれ!


 頭で叫ぶがメシアには伝わらない。


「クハハハハハハ、クハハッ、クハハハハハハハ...あー腹痛ぇ!早く逃げねぇと食われちまうぞ!」


 なんじゃこいつ!!


「はうっ、ふぐっ、ぐっ...」


 頭は元気だが、もはや体を騙すのは限界だ。


 どれくらい走っただろう。


 ウサギは相変わらず追ってきている。ウサギってこんなに早いのか。


 まさか、餓死する前にウサギに喰われて死ぬことになるとは...まじで召喚された意味!!


 ...だめだ、本当に頭がおかしくなってきている。


 もう本当に無理だ。もう動けない。もう止まる。今すぐ止まる。


 そのときだった。


「しゃがんでください!!」


 前方から声が聞こえたかと思うと、誰かが走ってくるのが見えた。


 しゃがむというよりは、限界で足がもつれ、倒れこむ俺。


 走ってきたのはゴシック調の黒のドレスを着た少女。両手に細剣を持ち、倒れた俺を飛び越え、そのままウサギに飛びかかる。


 ドレスの中のドロワーズが見えたのは不可抗力だと主張したい、と同時にドロワーズだったのが、少しだけ残念だった言う気持ちは墓場まで持っていこうと記憶に封印をかける。


「ごめんなさい」


 少女がウサギとすれ違う瞬間に聞こえる声。


 そのまま少女はウサギを通り抜けるように着地すると、いつの間にか血のついた細剣の血を払い、鞘に収める。


 同時にウサギの胴体がずれ落ち、3つに分かれた。


 少女が振り返ってウサギの死体を確認する。 


「ごめんなさい、人を襲った動物は駆除しなければならないのです」


 なんて子なんだ。切った瞬間とか何も見えなかった。


 こんなとき少女の凄さについてもっと語るべきなんだろうけど、俺にはもっと気になることがある。


 ウサギの死体、グロすぎる。




 まだまだ序盤ではありますが、これからも順次更新していきます。


 お手数でなければ、評価や感想などいただければ嬉しいです。


 今後ともよろしくお願いいたします。

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