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3 悪魔

 くるはずの衝撃がいつまでたってもこない。


 なんだ?どうなっているんだ?


 もしかしてすでに死んでいるのか?


 それとも、こうやって思考ができるということは生きているのか?


 実際は違うだろうが、永遠にも似た時間を目を閉じて、衝撃に備えていた気がする。


 ただ、その衝撃がこない。


 それにすでに地面にいるような感じがする。


 恐る恐る目を開ける。


 真っ暗だった。


 上半身を起こし確認する。じゃり、と砂の感覚がした。


 砂...?下はコンクリだったはず。


 キョロキョロと見渡すと、先のほうには明かりのようなものが見えた。


 うっすらとわかることは、この場所は洞穴のような感じのところだということだ。


「...どこだ、ここは?」


 無意識に砂をはたきながら立ち上がる。


「...どこも痛くない。いや、肩が少し重い...か?それになんだこの格好は?」


 落ちたとき俺はジーパンにTシャツだったと思う。


 でも、今は黒いローブを纏っている。 


 何で?と思いながら明かりのほうに目を向けると、赤い。


「何か燃えてる?」


 わけのわからないまま、洞穴の出入り口、燃えてるほうへと足を踏み出す。


「...わかった、ここは地獄だ。黒い服着せられて、外が燃えてる場所が天国ってことはないよな。ははは...」


 乾いた笑い声が洞穴に小さく響いた。


 そんな現実逃避したことを呟きながら進んでいると、不意に何かが洞穴の中に飛び込んでくる。


 ドン、という衝撃とともに俺の胸に何かがぶち当たった。


「あぐっ」


 口から変な声がもれ後退る。


 見ると、飛び込んできたものは女の子のようだった。中高生くらいの年齢だろうか。尻餅をついて「あ、あう、あ」と声にならない声をあげ、恐怖の表情で俺を見上げている。


 な、なんなんだ、いったい。


 言おうとしたところで、外の方からまた別の女性の聞こえた。


「待ってよおん」


 同時に洞穴の出入り口を覗き込むようにして、誰かが入ってくる。


 俺と同じような黒いローブを身に纏った女性。


「こんなところに逃げてどうする気なのん?ってあら、もう一人増えてるじゃない」


 言いながら、その女性はキョロキョロと洞穴の外を見る。


「誰も見てないわねん」


 その瞬間、ローブを脱ぎ捨てる女性。


 ビキニのような露出多めの服装で両腕を大きく広げる。大きな胸がプルンと震えた。


「んん、解放感ん」


 ろ、露出狂だ。初めて見た。すごいおっぱいだ。


 色々突然すぎて思考回路が追い付かない。ただわかることは、それは天国のような光景だということ。


 なのだが、ただ、残念なことに女性の姿は普通の人間ではない。


 その肌は紫で唇は青く、妙に鋭い瞳は赤色で、黒い羽と尻尾があり、指の爪がナイフのように鋭い。まるで悪魔みたいだった。


 天国のような状況だが、いよいよ地獄の説が濃厚なってくる。


「なかなかかわいい顔してるじゃない。わたしの世話係にしようかしら」


 悪魔が俺をなめ回すように見る。


 30のおっさんを捕まえて、かわいいとはどういう美的感覚してるんだ?と思いながらも内心どこかで嬉しい気持ちがあるのは、いよいよ頭がおかしくなってきたのかもしれない。


 それに世話係ってなんだ。想像力が膨らまされる。


 さすがは悪魔、甘言がすごい。


「ま、話しは後。二人とも大人しくしてねぇ」


 悪魔が囁くように言うと同時にどこから現れたか、身体中に鎖のようなものが巻き付き、身動きがとれなくなる。 


「うわっ、な、なんだこれ」


 引きはなそうと暴れるがびくともしない。


「大人しくしててよぉ」


 悪魔は俺に抱き着き頬にキスすると、俺を肩に担ぎ上げる。


 そのまま俺と同じように鎖の巻き付いた少女を空いた手でつかみあげると、悪魔は洞穴を後にするのだった。




 キスされた...


 なんか照れる。


 でもよく考えたら、この状況やばない?



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