2 転落
終わった...
その瞬間、俺の人生がここで終わることを理解する。
それはそうだ。なんせ7階の高さ、下はコンクリなのだ。
ちょっとした浮遊感。落ちているという感覚。
時間にして一瞬のはずがやけに永く感じる。
突風で飛ばされた洗濯物を反射的に取ろうとして、ベランダを乗りだしたことへの後悔は一瞬で、残りは人生の反省に入る。
思えば、寂しい人生だった。小さいころに親を亡くし、親戚の家をたらい回し。もちろんそこに愛情などなく、高校生のときから一人で暮らした。
高校卒業後は、この世で最も自分を楽しましてくれる本というものを、自らの手でも書こうと小説家を目指したが、泣かず飛ばずで、今もアルバイトで食いつなぐ日々。
別にこの人生が嫌だったわけじゃない。楽しいこととか嬉しいこともいっぱいあった。
ただ、それ以外に色々と憧れるものがあっただけだ。
もう地面がすぐそばまで迫ってきている。
俺の生み出した幻想か、体がふわりと光に包まれた気がした。
人生の終わりはこんな感じなのか...
せめて痛くないのでお願いします。
さよらな、俺。
俺は目を閉じ、覚悟を決めて衝撃を待った。