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キングスメイト~精霊術士の学園生活~  作者: 暁 陽
1章 学園生活の始まり
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第5話≪つかの間の休息≫

 王の部屋(シークレットルーム)は、中央棟五階の南側に位置しており、北側には主に生徒会役員(ナンバーズ)との打ち合わせに使う会議室がある。

 ここは、学園内においてⅩⅢ(キング)ⅩⅡ(クイーン)ⅩⅠ(ジャック)のみに入室が許可されている、いわゆる部室のようなものである。つまり、ⅩⅢ(キング)の片腕に選ばれた(エース)にもまた入室の許可権がある。


 中央棟に入ったユンヌ達は、昇降用の魔工具を使い5階へと昇った。初めて乗ったのだが、比較的ゆっくり昇るのだと知った。そして、魔工具がスピードダウンし五階へと到着した。昇降エリアから出ると、廊下を真っ直ぐに進み始めた。


 周囲を見ると、一階とは造りが異なる様で、フロア全体から高級感溢れるのが見てわかった。

 白を基調とし、手すりや柱、窓枠、花瓶等フロア内にあるもの全てに金色の装飾が施されていた。また、花瓶には綺麗な花が飾られていた。床は、綺麗に磨かれていて、顔が写ってしまう程だった。

 同じ学園内だと言うのに、ここだけ貴族の豪邸の様な印象を受けた。縁遠い景色に、眩しさを覚えた。


 (……どこに部屋があるんだろう?)


 ユンヌは、周囲をあちこち見回したが、部屋らしき物は見つからなかった。というより、扉が何処にもないのだ。

 そんな中、ルイスは一面、真っ白な壁の前で歩みを止めた。


 (え、ここ?壁、だよね……?)


 どこからどう見ても真っ白な壁にしか見えない。しかし、ルイスはそこから動こうとしなかった。すると、後ろから歩いてきたミラが壁の前に立ち、こちらを見ながら話し始めた。


「ここには魔術結界が張られているの。だから、今はただの白い壁にしか見えないんだけど、この部屋はちょっと特殊だから、私達以外の生徒は、許可無く王の部屋(シークレットルーム)には入れないようになってるの。三人のうち、誰かに許可されれば一時だけ入ることは可能だけどね。じゃあ、どうやって部屋に入るのかと言うと…!」


 そう言いミラは、扉に手を当てた。すると、扉一面に魔術が展開し、ガチャリと音をたてた。


「こうすると、結界が解けて扉が現れるの。それに、勝手に扉も開いてくれるし。ふふ、驚いたかしら?」

「ほんと、この部屋スゴいよな」


 二人は、先に部屋に入っていく。


「今日から君もこの部屋の仲間だ。自由に使うと良い」


 ルイスに抱えられながら、ユンヌは王の部屋(シークレットルーム)へと足を踏み入れた──。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 部屋に入ると、その美しさに目を奪われた。

 部屋の中の机や椅子等の家具から壁、床まで白色で統一されていたのだ。また、濃紺の絨毯が敷かれており、銀の刺繍が施されていた。壁側には、書棚の他のに、剣やナイフ等の武器が飾られていた。どれも手入れがされていて、美しく輝いていた。シンプルな花瓶には、白い花が飾られていた。

 全て高価な物だというのは見てわかった。しかし、廊下の雰囲気とは異なり、ただ華美なだけではなく、上品さを感じた。それでいて、高潔さを思わせるインテリアだった。

 書棚や机に置かれた書類等は、全て整頓されていた。壁側の戸棚にはティーセットが複数個あり、どれも綺麗に並べてあった。

 


 (素敵な部屋……まるで絵本の中のお城の部屋みたい)


 そんなことを思っていると、部屋の中央にある白いソファにそっと降ろされた。地面にようやく足が着き、ユンヌは少しだけほっとした。


 (やっと降ろしてもらえた……)


 今まで、誰かに抱き抱えられたまま移動したことは無い(むしろある人がいるのかというレベルだと思う)。そのため、正直自分の身に起きた事は夢、そう夢だと信じたいのだが──。


「あ、ジュン、そこの紅茶の缶を取ってくれるかしら」

「ん?あぁ、これか。ほらよ」

「ありがとう。ルイス、今日はローズティーで良いかしら?」

「あぁ、それは良いね。それでお願いするよ」


 他三名は日常会話を繰り広げており、これは夢ではなく現実で起きている事だという事実を、ユンヌに突きつけてくるのであった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「はい、どうぞ!熱いから気を付けて飲んでね」


 ユンヌの目の前に薔薇の模様のあるティーカップが置かれ、紅茶が注がれた。カップからは湯気が立ち上ぼり、それと同時にほのかに甘い薔薇の香りが漂ってきた。


「……いただきます」


 恐る恐るティーカップに口を付け、紅茶を一口──!


「!」


 (今までで一番美味しい!)


 一口飲んだ瞬間、薔薇の香りと優しい甘味が口の中いっぱいに広がった。色々な事が重なって緊張していた体には、この温かさと甘さは嬉しかった。

 その緊張が解けたことで、自然と表情も緩み──。


「ふふ、お気に召して光栄だわ」

「さっきより良い顔になったな!」

「それは良かった。さすがはミラの淹れた紅茶だね」


 三人は、ユンヌのホッとした表現を見て安心した。


「?」


 三人の言っていることがよくわからなかったが、何故だか少し恥ずかしい気持ちになった。

 しかし、それ以上に、今はこの紅茶をゆっくり味わいたいと思うのであった。

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