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キングスメイト~精霊術士の学園生活~  作者: 暁 陽
1章 学園生活の始まり
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第2話≪無名の選出≫

 金色の髪、そしてコバルトブルーの瞳を持つ男子生徒が、ユンヌの目の前に現れた。

 周囲の生徒達の視線は、ユンヌと彼に注がれていた。

 降り立った生徒は、ユンヌの顔を一瞥すると、流れる様に自然にユンヌを横抱きにし、再び飛翔した。


「え、ぁ……?」


 ユンヌは何が自分の身に起こっているのか、全く理解できなかった。

 ただ、わかるのは、目の前には整った綺麗な顔があるということだけだった。


「何あれ?」

「あの子お姫様だっこされてる!」

「羨ましいんだけど…!」

「おい、誰か説明してくれよ」


 彼の行動に、ホール内はさらに騒然とした。

 壁際に並んでいた教員達も、皆驚いた表情で空中の二人の姿を見ていた。

 生徒達の上を抱き抱えられながら移動し、ユンヌはステージに連れていかれた。

 ステージに降り立つと、男子生徒はユンヌをそっと後ろの方に降り立たせた。

 そして、何事も無かったかの様に中央へと移動し話し始めた。


「新入生の諸君、突然のことで驚かせてしまい申し訳無い。私は、二年のルイス・リスティフォード。総合魔術学を専攻とし、今はⅩⅢ(キング)の位に就いている。」


 (この人が、ⅩⅢ(キング)?)


 ⅩⅢ(キング)

 それはこの学園において生徒会役員(ナンバーズ)を率い、尚且つ生徒の頂点を意味する位だ。

 つまり、王様(キング)とも呼べる存在である。


 (それで、えっと、私、何でこの人に連れてこられたの?)


 ユンヌは、ステージ上にいきなり連れてこられた理由がわからず、一人パニックを起こしていた。


 (私は、どうしたら……?えーと、えーと、とりあえず、ステージから降りたほうがいいよね)


 そう思い、辺りを見回した。

 すると、ステージの右側に階段があるのを見つけた。

 ユンヌは、少し後ろに下がってから階段に向かうため、ゆっくりと移動しようとした。

 しかし、その移動はジュンに腕を捕まれてることで阻止された。


「おいおい、どこに行く気だ?」

「え、あの、私……」

「まぁまぁ、少し落ち着きなって。急に連れてこられてパニックになるのもわかるけどさ。うちの王様が君に用事があるだけだから、ね?」


 ステージ中央でルイスが話しているのを考慮してのことだろう。

 小さな声で、ジュンは言った。


「でも、何も知らない、です……。離してください……!」


 その間、必死に掴まれた腕を離そうとする。

 でも、中々振りほどけない。


 (どうしよう……)


 見知らぬ男子生徒に腕を掴まれ、振りほどけないことに、ユンヌは少し怖くなった。


「大丈夫だから、少し落ち着いてちょうだい。」


 ユンヌの肩に手を置きながら、女性が仲裁に入ってくれた。


「そんなに乱暴にしちゃ、怖がらせてしまうでしょう?大丈夫よ、ルイスがあなたに用事があるだけだから。だから、少しだけここに居て欲しいだけなの。私も隣にいるから、大丈夫よ。安心して?」


 ミラは、ユンヌに優しく語りかける。

 掴まれていた腕が外され、ユンヌは腕をさすった。


「なんだよ、俺はただこいつが逃げないようにって気を利かせただけじゃないか」

「そうだとしても、女の子なのよ?いきなりここに連れてこられて、その上、腕を掴まれたら怖がるに決まってるじゃない。ほんっとにわからないのね!」


 二人は口論しつつも、ユンヌを逃がさないように両側からガードしている。

 その間に一通り話し終えたのか、中央にいたルイスはユンヌ達に近付いてきた。

 そして、ユンヌの手を取って前へと歩かせた。


 (え……?)


 手を引かれるがまま、ユンヌはステージの前方に連れていかれた。

 ある程度前まで来ると、ルイスはユンヌの手を放し生徒たちの方へ向き直った。


「自己紹介はここまでにしよう。今日は、皆に新しい仲間を紹介しようと思う」

「お待ちくださいⅩⅢ(キング)、そのような話は伺っておりません。一体どういうことなのですか?」


 司会をしていた生徒、セツカがルイスに聞いた。


「そのままの意味だが。何か問題があるだろうか」


 真顔で、ルイスは言い返した。


「皆は、初めて知ることだと思うが、この学園のⅩⅢ(キング)には代々自身の片腕として、生徒の中から自由に生徒会役員(ナンバーズ)を選出できる権利がある。その場合、その生徒会役員(ナンバーズ)には(エース)の位が与えられる。この位は、ⅩⅢ(キング)の裁量によって定められるため、各代の ⅩⅢ(キング)に必ずしも存在していたわけではない。実際、ここ十数年はいなかったとされる。しかし、私は、この者を自身の片腕として、そして生徒会役員(ナンバーズ)に相応しいと考えた。従って、私はその(エース)の位を彼女、ユンヌ・エスプリットに与え、我が片腕として生徒会役員(ナンバーズ)の一員とすることをここに宣言する」


「あらまぁ」

「なるほどな」




「え……、えぇぇぇぇーーーーっ!」



 (な、な、わ、わた、わたし……)


 ユンヌは、突然自分が生徒会役員(ナンバーズ)に選ばれたという事実に頭の理解が追い付かず、固まってしまった。

 驚きのあまり、開いた口が塞がらない。

 突然の生徒会役員(ナンバーズ)の追加発表、それがここ十数年無かった(エース)の選出であったこと。

 そして、選出されたのが、名も無き新入生であったこと。

 そのどれもが、その場にいた生徒及び教員に衝撃を走らせた。

 中でも、当の本人にとっては雷に撃たれるような威力だった。

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