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キングスメイト~精霊術士の学園生活~  作者: 暁 陽
1章 学園生活の始まり
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第1話 ≪出会い≫

短い時間ではありますが、読者の皆様に楽しんでいただけたら幸いです。


 ──月が学園一帯を照らす頃。


「~♪~~♪」


 聴いたことの無い旋律、詞が風に乗り、学園に響き渡る。

 誰もいないはずのこの時間。

 声が聞こえる方に、そっと静かに近づいていく。



 ──声は温室から聴こえてくるようだ。



 温室の開け放たれた窓からそっと覗きこむと、そこには、月明かりのスポットライトを浴びる一人の少女が祈るように歌っていた。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 アーラシィ大陸、レクシア地方。さらに十一の領地に分けられた内の一つにどの領地にも属さない中立地域ユートラがある。その中の都市の一つが、ここエレンデールである。

 ここには、多くの研究機関や学舎、商業施設が立ち並んでいる。その中で多くの学生が通うここアルファ学園は、身分に関わらず魔術師や召喚術士、魔工学士等の育成を行う名門校の一つである。

 本学園は三年制で一年生は基礎クラス、二年生以降は応用クラスの他、各専門学のクラスに配属となる。

 そして、今年もまた多くの新入生が入学した。

 入学式から五日経った今日、新入生は朝から校内見学や授業が少しずつ始まっていた。

 午後の基礎のDクラスにて──


「それでは、この後、ホールにて生徒会からの講演があります。準備ができ次第、各自移動するように──」


「生徒会って、学園のトップってことだよね!」

「そうそう!もしかして噂のあの人も……?」

「え!それなら前の方で顔を見たい!早く行こうよ!」

 

 生徒達(特に女生徒)は、早々に移動を開始した。


 (……)

 

 移動を始める生徒達の中、窓際の席で椅子に座ったままの生徒がいた。

 窓の外、ゆっくりと雲が流れる空を新入生の一人、ユンヌ・エスプリットはぼーっと眺めていた。

 ユンヌは、「勉強のためこの学園に入学するべき」と祖母に言われ、生まれて初めてこの都市にやって来た。

 入学前にここに来た時は、あまりの人の多さに驚いたものだった。なぜなら、彼女が住んでいた場所とは、人も街もあまりに違いすぎたからだ。

 準備期間も含め、この街に来て一週間経ったものの、正直まだ人の多さには慣れていない。


「どうしたの、ぼーっとして」


 声をかけてきたのは、エリナ・シーズだった。

 彼女は、入学後に初めてできたユンヌにできた友人だ。

 学園寮では隣室だが、クラス分けも一緒だったために、すぐに仲良くなることができた。


「エリナ。ううん、空を見てるだけだよ」

「そっか。ほら、みんな移動してるから私達もホールに行こう?」

「あ、うん。ごめん」


 エリナに連れられ、ユンヌはホールへと向かった。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ホール内には、既に多くの新入生が椅子に座っていた。

 二人は、開始時間ギリギリに駆け込んだため、空いている後ろの席に座った。

 すると、間も無く生徒会による講演が始まった。


「新入生の皆様、初めまして。私は二年のセツカ・アマナと申します。今回は皆様に生徒会役員(ナンバーズ)とその活動について知っていただきたく、この場を設けました。まずは、メンバーについてご紹介させて頂きます」


生徒会役員(ナンバーズ)か。ユンヌは、興味ある?」

「ううん、無いよ。エリナは?」

「私も無いよ~。ただ、めっちゃイケメンな先輩とか、モデル級の美女がいるって話を聞いたからそれは興味あるよね!」


 (そういえば、クラスの子達もそんなことを言っていたような……?)

 


生徒会役員(ナンバーズ)は、ⅡからXIIIの位を与えられた学生のことを指し、十二名で構成されています。私を含めた九名に関しては、広報誌にて各自の紹介をさせていただきます。次に、私達の活動は──」


 また、その後の話を聞くと、生徒会役員(ナンバーズ)は主にトップランカー(いわゆる成績上位の学生を指すが)、能力に優れたもの、稀有な能力を持つ者等で構成されているそうだ。

 しかし、成績が良いからといって安易になれるものではなく、適性や生徒達から資格があると認められなければなることはできないとだと言う。


「次に我が学園が誇る生徒会役員(ナンバーズ)、三皇をご紹介致します」

「来た来た!ほら、ユンヌ、ちゃんと見て!」

「うん……」


 エリナに言われ、ユンヌはステージを見た。

 アナウンスの後、ステージ上には三人の生徒が登壇した。

 ステージ上に三人が一列に並ぶ。


「それでは皆様、自己紹介をお願い致します」


 すると、左端の男子生徒が前に一歩出た。


「俺はジュン・ステイル!二年でⅩⅠ(ジャック)の位だ。専門は魔工学。後輩ができるなんて嬉しいぜ!みんな、よろしくな!」


 その声に、前の方に座っている学生から「かっこいい!」という声が挙がった。


「誰だ、今、俺のことかっこいいって言ってくれたのは?」


 そう言いながら、ジュンはその声がした方へと歩き、その生徒の前でしゃがんだ。


「ありがとな」


 ウインクと共に感謝の言葉を贈った。

 それを受けた生徒は、言葉よりもウインクに射貫かれ、今にも気絶しそうであった。

 エリナがユンヌの方を見て、「ジュン先輩は、イケメンな上に気さくで明るい人らしいから、人気があるんだって!今みたいにファンサービスもしてくれるしね」と、補足説明をしてくれた。


 背は高く、健康的なやや褐色の肌にアップルグリーンの爽やかな髪色の男子生徒。そして、この整った顔立ちから放たれる屈託の無い笑顔が、特に女子生徒の心を掴むのだろう。

 エリナの言う通り、この見た目に人柄の良さも合わされば人気があるのもよくわかるし、会場内の女子生徒達がカッコいいと言うのも理解できる。

 次に右端の女子生徒が前に出た。


「新入生のみんな、こんにちは!私はミラ・ロゼリア。同じく二年よ。ⅩⅡ(クイーン)の位についてるの。専門は属性学で炎が得意よ。ふふ、よろしくね」



「ミラ先輩は、美人で実力もあるから、男子生徒のみならず女子生徒にも人気があるんだよ」と、エリナが情報を提供してくれた。


 女性なら誰でも憧れるようなグラマラスな体型の女子生徒。

 薔薇が咲き乱れるような深紅色のさらさらとしたロングヘア。

 さらに、片方に髪をまとめていることで、白い首筋が露になり、大人の女性の色気が増している。

 目鼻立ちも整っており、会場内の男子生徒達の視線を釘付けにするのもよくわかる。

 そして、最後に中央にいた男子生徒が前に出た。

 金髪で一人目の学生程ではないが背も高い様に見える。

 そしてステージからホール全体を見回し、そして──


 (あれ、今、目が合った?)


 ドキンと自分の鼓動を強く感じた。

 目があったように思ったが、いや、気のせいだろう。

 これだけの人がいて、尚且つこんなに後ろで話を聞いているのだから。

 目があったなどと感じる方がおかしい。

 再度ステージに目を向けると、ステージ上にいた男子生徒は風魔法を使い、ホール後方へと飛びだした。

 会場内は騒然。

 一体どうしたのかと生徒達はその姿を目で追う。


「ねぇ、ユンヌ!あの人こっちに来るよ!」


 隣のエリナはやや興奮しながら、カッコいいと騒いでいた。

 しかし、その言葉はユンヌの耳には届かなかった。

 何故なら、勘違いでも気のせいでもなかったからだ。


 ──彼の目は、私を見ているのだとわかってしまったから。


 風魔術の影響か、金色に輝く髪がサラサラと靡いている。

 こちらを見つめる深くて透き通ったコバルトブルーの瞳、ユンヌは目が反らせなかった。

 先程感じた鼓動が次第に強く、ドキドキと鳴り続ける。

 そして、男子生徒はふわりとユンヌの横に降り立ち──。


「──見つけた」


 ユンヌにしか聞こえない大きさで、彼は一言、呟いた。

初期内容より一部内容が異なります。

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