フェルト羊毛のボール
今の時期はハンドメイドやはりマスクが一番多いのでしょうか?
「のりこちゃん、こんにちは。」
「カハクちゃんいらっしゃい。丁度ミルクセーキ作ろうと思ってたんだ。一緒に作る?」
「作りたい。」
「え~かはくちゃんの分の空きボトルあったかなぁ?」
「ドールのフルーツボトルがたくさん洗って置いてあるでしょう?」
のりこちゃんに促されてわらしと私は、洗面台へ手を洗いに行った。キッチンへ戻ると、のり子ちゃんがミルクセーキの準備をしていてくれた。ドールの空きフルーツボトルに牛乳、ガムシロップ、卵黄、バニラエッセンス、クラッシュアイスを入れて蓋をし、ひたすらシェイクする。子供サイズでシェイクするにはフルーツボトルは手に余るので大人サイズになって黙々とシェイクする。
「ね~のりちゃんまだ~?」
「泡立ち具合外からも見えるでしょ?お好みまで泡立ったら完成だよ。」
「ふっ。わらしの泡しゃばしゃば。私の結構いい感じになってきた。」
ぐぬぬぬ。と悔しそうな顔をしたわらしは顔を真っ赤にしてボトルを必死に振っている。空気が上手く混ざるようにするだけなのに、わらしの振り方はイマイチ。のりこちゃんは、ミルクパンでホットミルクセーキを作っている。
「のりこちゃんは、冷たいのダメなの?」
「ん~。本当は冷たい方が好きなんだけど今は、なま物控えるように言われてるからホットなんだよ。」
「ふ~ん。」
出来上がったミルクセーキをタンブラーに移し替えてたら、のりこちゃんがミントの葉とストローをさしてくれた。
「ふふふ。さらにゴージャスになったでしょ。」
私は、妊婦さんでも大丈夫なハーブに今すぐ植え替えようと思った。ざらりとお皿に盛られたクッキーをかじって一息ついたところで今日の本題に入る事にした。
「のりこちゃん、最近ずーっと家に籠っていてストレス溜まってるんじゃないかな?と思って、この前シープの妖精が送ってくれた羊毛持ってきたの。」
「カハクちゃんありがとう。もう退屈で退屈で、かといってモニターばっかり見ていても叱られるしイライラMAXだったんだよ。」
あまり根を詰める大作だとダメだけど、ニードルフェルトくらいならチマチマできていいよね。ダイニングテーブルを片付けて、ニードルフェルトの準備をする。当然の様にわらしも座ってるけどニードル足りるかなぁ?
「カハク先生宜しくお願いします。」
のりこちゃんがニコニコしてくれて嬉しい。この前までトイレの住人だったもんね。
「まず一番の注意点は、針は机に対して垂直に刺す事。ちょっとよそ見して変な角度で刺したりするとすぐに針が折れるから。念のために予備を持ってきているけど、無くなったらわらし買いに行って。」
「どうしてボクなんだよぉ?」
「折るとしたらわらしだから。」
「ちぇっ。気を付けるよ。」
のりこちゃんの前であざとく口を尖らせたって無視無視。
固まっている羊毛をほぐしてリボン状にしたらくるくる巻いて針を刺して固める、巻いて針を刺す。途中で角ばった所を丸くなるように机から持ち上げてプスプス刺して形を整えながらまた丸める。ひたすらこれを繰り返した後に、泥団子作る時の要領で両手で挟んですり合わせて丸くなったら出来上がり。
「うわぁ。無心になれて楽しい。このっこのっこのっ。」
「のりちゃんなんだか黒いオーラが出てるよ。」
わらしめ、そういう一言多いのが嫌われるんだぞ。……教えてやらないけど。
「ちょっとずつ丸を作ってコースターや鞄のモチーフなんかにしても楽しいよ。後は、こうやって出来たボールに違う色のフェルトで模様をつけてもかわいいよ。」
私の手元を覗き込んだ二人が微妙な顔をしている。
「シープの妖精の羊毛でススワタリ作るって、かはくちゃんくらいしか思いつかないよね。」
わらしめ、そういう一言多いのが嫌われるんだぞ。……教えてやらないけど。
のりこちゃんは気に入ってくれたらしく、次に遊びに来たら、あちらこちらにススワタリの集団が大小ごちゃ混ぜで飾ってあった。最初の頃のいびつな顔とは違い、随分ユーモラスでかわいいススワタリが増えていた。