ガーゼのハーブカーテン
さらにさらにご無沙汰してました。
アラクネーがガーゼを1反持って来た。
「かはくちゃん、これ1反でガーデンビュッフェしてもいい?」
「たらふく食べて行って。」
アラクネーは大喜びで庭に出て行った。害虫駆除してくれるのは助かるから手ぶらで来ればいいのにアラクネーは律儀に自分で織った布をいつも持ってくる。
こんなに布ばかり貰っても溜まっていく一方なんだ。LINEでのりこちゃんに遊びに行くと連絡してガーゼを一反抱えた。
「アラクネー私ちょっと出かけてくるから、好きなだけ食べて行って。」
モグモグと口を動かしながらアラクネーが手を振って見送ってくれた。人間もイナゴとか蜂の幼虫を食べるらしいけどやっぱり実際に食べている現場を見るのはちょっと気味が悪いと思った。
のりこちゃんちに着いたら、のりこちゃんが丁度赤福があるからお抹茶点てるねとおやつタイムになった。
どうせモグモグするならこちらの方がずっといい。
「ガーゼを1反貰ったからのりこちゃんとハーブを入れたカーテンを一緒に作ろうと思ったの。」
「へぇ~。なんだかおもしろそうね。チコちゃんは呼ばないでよかったの?」
「チコちゃんは今弟弟子達の修行してる。」
「じゃぁ、チコちゃんの分も作ってあげよう。」
「それ名案。これで随分ガーゼを消費できるはず。」
「ガーゼと言えばこういうちょっとおやつを食べる時に指を拭くくらいのお手拭きも便利だったよ。でも、こんなに肌触りのいいガーゼそんなに湯水のように使うの勿体なくない?」
「またすぐアラクネーが持ってくるから大丈夫。」
ふ~ん。そんなものなの?なんて返事しながらのりこちゃんはキッチンの窓の幅をメジャーで測っていた。
測った幅の1.5倍のガーゼを切って、ポケットを縫い付ける。
ちくちくちくちく。
「ね~ね~カハクちゃん、白い糸だと淋しくない?」
「ポケットの中にハーブ入れるから寂しくないと思う。」
「そっかぁ。」
ちくちくちくちく。
単純作業だから普通にお話してもいいけど、いつもうるさく騒ぐわらしやチコちゃんが居ないと、作業に没頭しているのりこちゃんは黙々と針を動かしてる。
ちくちくちくちく。
ハッと顔を上げたのりこちゃんが、
「カハクちゃん、ハーブは何種類くらい入れるの?」
「ローズマリーのやつと、ラベンダーのやつから試したらいいと思う。」
「でも乾燥させたハーブ今無いわよ?」
「フレッシュハーブをポケットに入れるんだよ。ほらこんな感じ。」
私が、縫い付けたポケットにローズマリーとラベンダーをわさわさと生えさせたら、真ん丸な目で驚くのりこちゃんが、嬉しそうに
「わぁ。カーテンでポプリが作れたのね。乾燥したらローズマリーでハーブソルトをつくっても良いわね。」
「これなら刺繍したり、色糸使わなくても華やか。」
完成のイメージが付かなかったらしいのりこちゃんは、それからまた黙々とガーゼにポケットを縫い付けてガーゼの反物の消費に協力してくれた。
ちくちくちくちく。
気が付くといつの間にか夜になっていて、お腹が空いたと騒ぎだしたわらしがデリバリーピザを勝手に注文しだした。……わらし今までどこに行っていたんだろう?
ガーゼのハーブカーテンを嬉々として設置したのりこちゃんは達成感に満足して冷蔵庫からコーラを出してくれた。
アラクネーが来たらまたのりこちゃんに布を消費して貰おうと固く心に刻んだ。