ビーズのブレスレット。
ご無沙汰してました。
スーパーからの買い出しから帰ってくると、玄関のドアノブに回覧板がぶら下がっていた。急ぎの回覧板かもしれないから荷物を降ろして内容をチェックした。
豪雨被害のチャリティーバザーを町内会でするらしい。一旦荷物を冷蔵庫にしまってからメモを取る事にした。
「ただいま~。」
「のりちゃんお帰り~。」
とてて~と走ってわらしさまがお迎えしてくれた。今日も元気が有り余っているようで良い事だ。私から荷物を受け取るとわらしさまはせっせと冷蔵庫に食品を詰めてお手伝いしてくれるので、私はミルクパンでお湯を沸かした。
「わらしさま今日のおやつにタイ焼き買ってきたけど、紅茶と緑茶どっちがいい?」
「ボク緑茶がいい。」
「はいよ~。」
それぞれの湯のみに熱湯を注ぎ、急須に茶葉を入れて湯のみに注いだお湯を急須に注いで茶葉がひらくのを待つ。半分湯のみに注いだら、後から注いだ湯呑は全部注ぎ、残りを最初に注いだ湯呑につぐ。自分だけだったらこんなに丁寧に入れないけど、せっかく2人でおやつするなら美味しく食べたいもんね。
「「いただきます。」」
わらしさまはタイ焼きを頭からがぶりとかみついた。タイ焼き食べる時って頭派としっぽ派に別れるよね。私は1枚食べ終わると回覧板をもう一度開いた。チャリティーバザーをするから品物を寄付してほしいそうな。何々?贈答品かハンドメイドのみ受け付け?不用品はダメなんだ。まぁゴミを出されても自治会も処分に困るもんねぇ。
我が家に贈答品なんて届くことはほとんど無いから消去法でハンドメイドするしかないな。こんな時はカハクちゃんへ即LINEだ。
スマホを取り出してカハクちゃんとのトーク画面に内容を打ち込んで最後にHELPのスタンプを押すとすぐに既読が付いたと思ったら家の中の鳥居からカハクちゃんとチコちゃんが現れた。
「のりこちゃんお待たせ。」
……待つ時間もなかったし。
「のり子さんこんにちは。」
「カハクちゃん、チコちゃんいらっしゃい。」
「かはくちゃん、チコちゃん。タイ焼きあるよ。ボクお茶淹れてくるね。」
わらしさまは、自分用のタイ焼きをカハクちゃんとチコちゃんに分けてあげるらしい。まぢうちのわらしさまエエ子や。
3人が仲良くタイ焼きを食べる様子をニヨニヨして見ているとカハクちゃんが、
「丁度チコちゃんもハロウィンで配る小物を作りたいって話していたとこだったの。みんなで手分けして作ればあっという間に終わるわ。」
神使がハロウィンって突っ込んでいいんだかスルーした方がいいんだかリアクションに迷うわ!
「珍しい材料がたくさん手に入ったからいいタイミング。」
ダイニングテーブルの上を片付けたら、しゅばばばばと道具と材料を鞄から取り出したカハクちゃんが、細いカラーゴムと毛糸針をそれぞれに渡してくれた。
「まずはゴムの先っぽを5センチくらい開けてセロテープで留めて。」
説明と同時にサクサクと実演するカハクちゃんの手元を息を殺して見つめる。ゴムに針を通してビーズやスパンコールをランダムに通した。ぎちぎちに詰めないで余白を空けておくのがポイントらしい。
それをかぎ針で鎖編みにしていく。えらいスピーディーなカハクちゃんの手さばきにおののきつつも感心する。鎖編みだけの部分と鎖編みの一部にビーズやスパンコールが編み込まれいくようにする為の余白だったんだ。きっちり網目をそろえるのは初心者には難しいもんね。よく配慮してくれてるなぁ。ほどほどの長さになったら引き抜いて輪っかにしたら結び目にボンドを塗って乾かせば完成。
3人でカハクちゃんが作ったお手本を手に取ってしげしげと見た。
「あたしは、オレンジと黒のゴムでブレスレット作る。」
「ボクはこのキラキラしたので作る。」
私は残った茶色に手を伸ばした。
3つくらい完成させたらゴムに通すパーツも自分なりに選んで通す余裕が出てきた。
「このスパンコール大きいし鱗みたいな模様が入ってるんだね。」
スパンコールを光にかざして色の移り変わりを楽しんでいると平然とカハクちゃんが言った。
「それこの前大量に剥がしてきた人魚の鱗に自分で穴開けたの。」
めちゃ鱗に線が何重にも入ってるんだけど。これって剥がされたところ円形脱毛の人みたいになってるんじゃないの?ギギギと音が出そうな不自然な動きでカハクちゃんに顔を向けると無表情で手だけは高速で動かしている様が恐ろしい。
「あいつら水中庭園でも咲く花を作って欲しいって言うから海水にも強い花を生成してやったのに、支払いもしないでしらばっくれようとしたから二度とそんな気がおきない様にしっかり鱗毟ってやったの。」
シーンとして底冷えのする空気が漂うダイニングでカハクちゃんだけは決して怒らしてはいけないと心のメモにしっかり書き記す3人であった。