表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編

猫の死

作者: UTUTU

 飼っていた猫が死んだ。悲しいのか、自分でもよく分からない。たぶん悲しくないのだと思う。霊園でペット葬をしようと思うが、差し当たってお金が無い。こんな事ならばキチンと働いておけば良かったと思った。


 その猫はとても苦しいときに拾った猫で、だから愛着があった。僕が涙にくれて眠れもせず身じろぎすると、顔や手を舐めてくれた。


 だけれど、そんな猫が死んで悲しくないのだから不思議だと思う。


 猫には一応、名前を付けていた。それはどこにでもある名前で、きっとあと何年かしたら忘れてしまうような名前だった。


 僕は色々な事を考えたが、考えることをやめて部屋の表に出た。


 部屋の外は夜だった。いま僕の感情は、その夜と似ていた。似た外見をしていた。


 だから女の子に電話を掛けてみた。ずっと前に死んだ子で、出るはずのない番号だった。


 それは、なぜか繋がった。


「今から会えないか」


 と、僕が言うと、


「大丈夫だけど、気をつけてね、境界を越えなくてはならないし、そこを越えると、」


 あとは砂嵐のような物に掻き消された。


 …記憶をたよりに彼女の部屋へ。


 …そこは真っ暗で、たどりつくのに骨を折った。


 呼び鈴を押すと、手招きをする彼女。


「よく、来たわね」


 含み笑い。それは苔むし、みどりいろに湿った笑いだった。


「おいで、」


 彼女は僕の名を呼んだ。


 僕は、


「にゃあ」


 と、猫の声帯で答えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ