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夢ならば、どれほど良かったでしょう

この作品は、少々下ネタが増えそうです。ご注意ください。

「なあ圭介、いきなり初対面の女にフレンドリーに話しかけられたらどう思う?」

「は?何言ってんのお前」


目の前にいる男は、食事をしていた箸を止め、ガイジを見る目で俺を見る。


男の名は 工藤 圭介(くどう けいすけ)

俺が最も親しくしている友人だ。ぱっと見、眼鏡の真面目系イケメンだが、とても残念な性癖を持っているため、彼女はいない。ざまあみろ。


「午前中、ずっと上の空だと思っていたが、まさかそんな事を考えていたとはな」

「え?私そんなぼーっとしてたでありましたか?」

「おい日本語。仮にも言葉を扱う仕事をしてるんだから、日頃から気を使え」

「仕事のつもりでやってないからセーフ」

「屁理屈を…」


本格的な活動は、高校卒業してからと決めているので、今は趣味の範疇だ。屁理屈っすね。


「で、話を戻すが、なんで突然あんな事を?」

「ん?ああ、忘れてたわ」

「おい、お前が聞いてきたんだぞ」

「いやだって半分どうでもいい事だったし」

「どうでもいい事であそこまで上の空になれるお前を尊敬する」


まあ実際、上の空になってた理由は微妙に違うのだが。


「で、お前はどう思う?」

「そうだな…。美人局か、勧誘か、はたまたヤリマンか…そんなとこだろうな」

「だよな!やっぱりそうだよな!」

「お、おう。どうした急に」


やっぱ普通はそう思うよな。俺だけじゃなくて良かったわ。


「さっきの質問…今の反応…まさかお前!」


なんだその反応は。まさか女子に話しかけられたのがバレたとか?まあ別に、バレたところで結論は出てるし問題はない…


「その作品について詳しく教えてくれ。俺も是非とも見てみたい」


本気でこいつの友人を辞めたくなった。こいつの頭はピンク一色かよ…


――――――――――――――――――


しかし、何故あの子は俺の名前を知っていたのだろう。


俺自身、学校じゃ目立つ方じゃ…、圭介のせいでめっちゃ目立ってたわ。学年じゃ圭介の次に有名かもしれん。もちろん悪い方向に。


だがしかし、だからと言って俺に話しかけに来るだろうか。俺と関わるという事は、間接的に圭介と関わるという事であり、それを望む女子はいないだろう。俺ですら圭介とあまり関わりたくないしな。


残された可能性としては…、夢オチ、という物があるか。でもそれだとおかしいよな。だって俺の頭の中はいつだって美希の事でいっぱいだし。俺は身も心も美希に捧げている。よもや別の女の夢を見る事なんてあり得ないだろう。


でも、万が一、億が一、兆が一、そんな夢を見たとなれば、俺は美希の事以外を考えていたという事であり、身も心も美希に捧げていないという事である。クソ…俺はまだまだ甘かったのか…


よし、これからは四六時中美希の事を考えられる様、美希の写真を抱いて寝よう!これで夢の中でも美希に会えるぜ!


「かず兄…なんか凄い顔してる…」


やべ、顔に出てたか。危ない危ない。


「かず兄さ、いい加減彼女の一人や二人作ったら?」

「二人作ったらまずいだろ…。それに彼女なんて俺にはいらねぇ」

「え?なんで?」

「俺には美希という最愛の人がいるからな!」

「あーはいはい。そうですね〜」


俺の渾身のプロポーズは、美希に軽く流されてしまった。悲しい…


「まあそもそも、俺と付き合ってくれる奴なんていないだろうけどな」

「そんな事ないでしょ。かず兄の財力ちらつかせれば一発じゃない?」

「それだけは絶対しねぇ!」


平然となんて事を言いやがる。お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!


「かず兄にも、いい人が見つかれば、もうちょっとまともになってくれると思うんだけどなぁ…」

「何言ってんだよ。いい人ならとっくに見つかってるぞ」

「え!?嘘!誰!?誰!!?」

「美希、お前の事だぜ!」

「もうこのシスコン誰か早く引き取って…」


残念ながらそんな人はいない。つまり一生美希の側にいられるという事だ!…なんかちょっと言ってて悲しくなってきた…


――――――――――――――――――


「じゃあね!かず兄!」

「おう!じゃあな」


翌朝、いつものように家の前で美希と別れる。美希の事を見るだけで、俺の一日分のエネルギーは充填された。今日も一日頑張るぞい!


今日は火曜か…。部活に行かなきゃ行けない日だ…。行きたくねぇなぁ…


ほんとは部活辞めたいんだけど、あの部活、退部出来ないんだよなぁ。ほんと理不尽。なんで俺がこんな目にあわな…


「おっはよー!」バシッ!

「いってぇ…」


いきなり背中を叩かれた。何これデジャヴ。


「元気ないね〜。どうしたの?」


美少女が、俺の顔を覗き込んでくる。


どうやら昨日の出来事は夢じゃなかったみたいだ。という事は、俺は美希以外の女の事を考えてはいなかったという事ではないか!さす俺、美希への愛なら誰にも負けないぜ!


「どうしたの?ぼーっとして。大丈夫?」


しかし、現実であるという事は、俺の美希への愛を確認させてくれたと同時に、試練を課してきたという事でもある。ほんと、この子どないしたらええねん。


「あ、大丈夫だ。ちょっと眠いだけ」

「そっか!良かった!ちょっと心配しちゃった」


え?何この子。昨日会ったばっかだよね?なんでそんな積極的?それとも俺が忘れてるだけ?


「私週番だから先いくね!またね!かず君!」

「あ、ちょっと…」


行ってしまった。全く、何なんだよ…。


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