【短編】星新一リスペクト
暇潰し
「もしもし。Nです。Sはいませんか?」
「もしもし。どちら様でしょうか?」
「えーと……Sと一緒の職場に通ってるNです」
「すみません、Sなんて人は知らないです。お掛け間違いだと思うんですけど……」
「そうですか! すみませんでした」
「いえいえ、大丈夫です。これも何かの縁かもしれません。暇ならお話ししませんか?」
「そうですね。少し話しますか。といっても何を話したらいいのか……」
「たしかにそうですね。では、私から1つ質問があります」
「はい」
「もし、1つだけ願いが叶うとしたらどんな願い事をしますか?」
「急に聞かれると、すぐには答えられないですね。
そうですね……自分にとって全てが思い通りにいく世界になって欲しい、なんてのはどうでしょうか?」
「不思議な回答をするんですね。普通の人なら、お金が欲しい。恋人が欲しいなどと言うものですが。
理由を聞いてもいいですか?」
「いいですよ。もし自分が死んで、生まれ変わった時にそんな世界なら嬉しいな、みたいな感じです」
「もし、次生まれる世界がこことは違ったらどうしますか?」
「そうですね。でもいつかはこの世界にまた生まれ変われると思うんです。それに僕の願い事なんだから願った本人が損したらいけないと思うんです。だから問題は無いです」
「なるほど。
全てを上手くいかせたいなんて願い事をするって事は、何かどうしても成功させたい事があるのですか?」
「そうですね……………………
あなたたち、地球外生命体からこの星を守りたいですね」
「気付いていたんですね、驚きました。しかし、それは強情ですね。私たちにも諸事情があるんですよ」
「それは、僕たちも同じですよ。たまたま繋がった電話であなたと話すことが出来たんです。おかげで居場所も特定する事が出来ました。今、特殊部隊があなたの元へ向かっています。運が悪かったのです。諦めてください」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。この電話で地球という惑星に生息する人間という生物の思考回路を解明することが出来ました。そのデータはもう私の母星に送ったので、もうこの星に用は無いです。隠蔽工作のため、私もろともこの星を爆破します。運が悪かったのです。諦めてください」
「え?」
その日、地球という惑星が宇宙から消滅した。
酷い話ですすみませんなんでもしますから