第八十二話「決戦」
「な、なんだあれは!」
忍者たちは、竜山に走ってくる巨大な城におどろいた。
「マックスたちだ! みんなあれに乗ろう!」
阿修羅丸にむかいながらステファンは説明した。
「あの阿修羅城は、内装もかなり軽くつくられていて、人が住むようにはつくられていなかったんです。僕らは最初、倉庫城とか言っていたけど、ベンさんがあの城の秘密を見抜きました。この城自体が蒸気の力で動けるように作られているってね。だから、こちらでなにかあったとき、城で助けてもらうように言っておいたんです」
皆はステファンの説明にうなずきつつも、こちらに向かってくる巨大な動く城に目を丸くしていた。
忍者たちは城に乗りこんでマックスたちの場所にいそいだ。
「マックス、松さん、ありがとう!」
「ああ、でも、ステファン、あの巨大マジェスタにどうやって立ち向かうんだ」
「……龍鈴の力を思いっきりぶつけるんだが、力が足りないがな」
答えたのは勒角だった。マックスの顔に「?」がついた。
(ステファン、だれだこの人)
(龍脈の力を守っていた四人衆の一人の勒角さん。龍鈴も持っているんだ)
(えっ、そうなのか)
「おい、俺は木の龍鈴の力でお前たちの考えが全部読めるんだぞ。俺は勒角だ。四十年ぶりに外にでたが、まさか城が動くようになっているとはな」
「たぶん、特殊ですよ」
という迅の真面目な答えがでた。
「こうなったら一か八かだ、四人の力をあわせて紫電様にぶつけるぞ」
勒角は、龍鈴をもつ三人に呼びかけた。
「そうだね。やるしかない」
「あっ、じいさんが増幅器を直してくれた、それをつかえよ。そこに置いてあるいびつな箱だ。なにかぶっ放すんなら天守閣がいいぞ」
ステファンたちは増幅器をもって、天守閣へあがった。
光のマジェスタが竜山の上からこちらをみていた。
「ずいぶん面白いマシンだな。君たちを倒したあと、じっくり研究させてもらうよ」
そういうと光のマジェスタはさらに大きくなった。
「勒角が混ざったくらいで、エネルギーの量はまだ五倍以上足らんぞ。私の勝ちだな、はっはっは」
天守閣では、マジェスタの声で不安になっていたが、四人は「やるしかない」と腹をくくった。
ステファンは増幅器の箱をあけて手早く組み立てた。大きな輪っかとそれをささえる土台ができた。ステファンはその輪をマジェスタのほうにむけた。
「この輪の中にエネルギーをはなつと、が増幅されるようです」
一方、竜山の上で光のマジェスタが大きな声でさけんだ。
「さあ、終わりにしようか! 大統領になる準備があるんでな」
マジェスタは掌を前に出してエネルギーを発射する構えをとった。
その掌に赤い光が集中していく。
「僕らもやりましょう」
ステファンたちはそれぞれ印をきり、マジェスタと同じ構えをした。四つの龍鈴が強く光り輝きだした。
ほぼ同時にエネルギーがお互いに向けて発射された。
ドドドーーーーン
エネルギーがぶつかりあった。
力の量は拮抗していた。
「うぉぉぉぉぉ」
「くわぉぉぉぉぉ」
お互いが大声を出して、力の限りのエネルギーを放出した。
ドドドドドドドーーーーーーン
「だめだ、まだ拮抗している」
操縦席のマックスが不安そうにいった。松五郎も息を飲んで状況をみている。
「このままだと、生身の人間であるステファンたちのほうが分が悪いな。なんとかならないのか」
「じじい、なんとかしろ……あれ、じじいは?」
マックスは操縦席のまわりでベンを探しているとき、当のベンはやっとの思いで天守閣にたどりついた。
「はぁはぁはぁ、下手したら成仏ものじゃった。だって、みんな無視して登っていくんだもん。今度ぜったいにエレベーターをつけてやるわい」
力をはなつ四人の間をかいくぐりながら、這いつくばって増幅器のほうへむかった。
「じいさん、あぶないぞ!」
勒角がさけんだが、ベンはかまわなかった。
「か、花織ちゃんに会うまでは、花織ちゃんと食事をするまでは……死ねん!」
ベンはのろのろと増幅器の前まできた。
「あっ、やっぱり『四倍』になってたわい。ちゃんとツマミを『七倍』にしておかないと」
といって、ベンが増幅器の裏にあるわかりにくいデザインのつまみを、カチカチカチとまわした。
『えっ?』
四人の声がかさなった。
その瞬間、増幅器が大きな光を放ち、エネルギーが倍増した。
ドゥドゥドゥドゥドゥオオオオオオオー
超巨大なエネルギーがマジェスタを飲み込みた。
「な、な、なにぃぃ!」
マジェスタの断末魔の叫びがひびいた。
ドドドドドュオーーーン
ステファンたちのエネルギーはそのまま竜山の中に強烈に食い込んでいった。
竜山の中で大きな破裂音がきこえ、光が方々に分散するのがみえた。
そしてしばらくするとすべての光が消えてなくなった。
「や、やったのか」
流がつぶやいた。
ステファンたちも息を飲んで竜山をみていた。
轟音と砂ぼこりがおさまったころ、ステファンはふと自分の腕をみた。
「あっ」
「どうした、ステファン?」
「全部、終わったみたいですよ」
ステファンは腕をみせた。
そこにあった龍鈴の腕輪がきれいになくなっていた。
バルアチアのマジェスタの執務室に秘書が入ってきた。
「失礼します。マジェスタ様、ついに大統領からお電話が……う、う、うわぁっぁ」
秘書はあわてて部屋から逃げていった。
そこにはマジェスタの服をきた「骨」が机の上に倒れていた。




