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妾は気弱な闇の女王  作者: ヒラサカ
4/14

魔物が支配する国

 私はどうやらこのゲームと思われる世界に来てしまったらしい。

 異世界に来てしまうお話はマンガでもアニメでも小説でも定番中の定番。危機に瀕した世界に救世主として召喚されるとか、ゲームの中に取り込まれてしまうとか、パターンは色々あった。

 女性が転生する先は恋愛メインの乙女ゲームが多かったけど。


 この『宵闇の国の物語』はアクションRPGだった。


 お話は主人公が人間の町を追われて旅をしているところから始まる。そして流れ流れてついに魔物の住むこの宵闇の国へと逃げ延びて来るの。

 この国に潜伏しながら、自身の追い求める秘密とやらを探っていくのがストーリーだったんだけど。その秘密が何だったか忘れました。確かそれが町を追われる理由でもあったような……?

 うーん、結構前だし他のと並行してやってたからうろ覚えだ。


 主人公は女の子だった。ヒロインね。

 恋愛の要素が多少はあったけど、ゲームのほとんどは敵やトラップ満載のダンジョンを飛び回るアクションステージ。連れて行ける仲間キャラとの友好度がある、とかそのくらいだったはず。基本、街モードでキャラと会って話したりして仲良くなる、イベント起きる、アクションステージで戦うの繰り返し。

 それで仲良くなったキャラによってエンディングが、一緒にこの国で暮らす、共に逃避行に出る、などに分岐する。


 カミュ・フォン・カラミティはそのパートナーに選べる登場人物の一人だった。

 私がこのゲームを買ったのは、彼の妹のミザリーのため。

 吸血鬼フリークな私は吸血鬼が出るならゲーム、マンガ、アニメ、映画と何でもチェックしていた。

 この『宵闇の国の物語』もあんまりゲームとしての評判は良くなかったんだけど、絵が凄く良かったの。特にミザリーがね。ネットで偶然見つけた彼女の公式イラストがあまりにもストライクだったので即買いだった。


 長い黒髪と冷たげな美貌の中で、妖しく煌めく金色の眼差し。血のように赤い唇には魅惑の微笑みを湛え、雪のように白い肌を持つ肢体を漆黒のマントとドレスで飾っている。

 彼女はまさに私の理想の女吸血鬼だったのだ。

 脇役ではあるけど結構出番は多かった。この町に来たばかりのヒロインと偶然出会ったミザリーは彼女に興味とライバル心を抱き、以後何かとつっかっかってくるようになるのだ。

 特にミザリーと深く関わりがあるキャラのルートになると、彼女がボスを勤めるステージもあり、戦いを繰り広げる事になる。


 ショッキングな事も思い出したんだけどね。

 このゲームのバッドエンドについて。

 なんと友好度がマイナスにも行くのだ、このゲームは。

 基本は会話中の選択肢で上下するんだけど、対象キャラ全員との友好度がマイナスになっていた場合はラストバトル後にとても救われない終わりを迎える。

 この町の住民にヒロインが人間だとバレてしまい、処刑されてしまうの。荒れ果てた処刑場で磔にされ、心臓に杭を打ち込まれそうになって泣いているヒロインのスチルが出てバッドエンドと表示される。


 そして最大の問題。

 その処刑のスチルでヒロインの奥に描かれている、磔にされた黒髪の女性がどうにもミザリーにしか見えないのよね。

 ダラリと首が折れ自らの白い胸に打ち込まれた杭を見るように虚ろな目を見開き、口から血を流している姿。ボロボロに破れた黒い服が炎と風に煽られていた。


 でもどうしてミザリーまで一緒に処刑されているのか理由が全然分からないのよね。バッドエンドのシナリオでは主人公が捕まってしまった、という場面まで語られると、その後すぐにそのスチルが出て終わり。

 ミザリーに関しては一切語られていないのだ。しかし別人と片付けるには容姿が似過ぎているのもあり、ネットでは単にミザリーが描きたかっただけではないかという、製作者達の悪戯心だという説が有力だった。

 一晩で骨折も治ってしまう回復力の高いミザリーだけど、心臓に杭を打たれれば死んでしまうのは吸血鬼の一番有名な話でしょう?

 きっとこのゲームでもそうであるはずだと思う。


 冷静にまとめているけど、勿論こんな事をすぐに納得出来たわけじゃない。

 数日間は信じられなくて頬を抓ったり、頭を叩いたり、寝て起きたりをしてみたけど、夢じゃなった。

 だから仕方なく受け止めている。


 私がミザリー・フォン・カラミティとして存在することになってしまった事を。

 元の世界に戻る方法は何かないのだろうか。人間の私は階段で転んでそのまま死んでしまったのだろうか?


 だけど、戻れないのなら。

 ミザリーである私といつか来るヒロインに、あんな無残な最期を迎えさせるわけにはいかない。

 杭を打たれて処刑されるなんて絶対嫌だもの。どうにかして回避しなくては。

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