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妾は気弱な闇の女王  作者: ヒラサカ
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受難の日々

「お嬢様、そこ! 曲がっています、もっと伸ばして!」


「あいたっ、ひゃう、おうふっ!」


 鋭い声と共に細いムチが飛んできて狙い違わず、私の背中、右ふともも、左腕をピシピシピシッと打つ。

 痛い、痛いです!


 広いホールに、顔が映りそうなほどピカピカに磨かれたフロア。今はダンスの練習中だ。決して面白い悲鳴大会ではない。教師の手拍子に合わせてステップを踏み、クルッとターン。涙を堪えながら、手足と背筋をピンと伸ばす。

 だって涙をこぼしたら頬っぺただって打たれかねないから。


 仮にもお嬢様と呼ばれてる身分の女性なのに、さすがに顔はやらないだろうって?

 そんな事ないの、どうせすぐに治るんだから大丈夫ですよって、きっとやってくるわ。

 こっちを見つめる鬼コーチの瞳は冷たいを通り越して、冷酷そのもの非道で無機質、嫌悪感まで抱いてそう。私なんてモノ以下、ゴミカスのクズブタとしか認識してないもの。


「もっと集中しなさい!」


「ひいぃ! か、顔はご勘弁をっ!」


 愚痴を考えていたら、今度はおでこにムチが飛んできた。

 ホラ、顔だからって容赦ないでしょう?

 きっと赤くなってるわ。


 今日はたまたま一緒にレッスンを受けている私の兄も見て見ぬ振りをしている。兄は結構運動神経が良いからそんなに怒られる事がないのよね。

 全く不公平よ! 身体だけは彼と同じ両親の遺伝子から出来ているはずなのに。

 ああ、理想の淑女になるためとはいえ、ここまで厳しいレッスンを課されるなんて。

 そもそもダンスなんて上手くなっても何だっていうのかしら。別にプロの舞踏家になるわけでもないのに。


 国一番の家庭教師をお願いしますと父上にはお願いしたけど、まさかここまでのスパルタン様がお越しくださるなんて、予想外だったわ。


 打たれたおでこを擦りたいけど、そんな事をしていたらまた打たれるので練習を続ける。

 いくらなんでも家庭教師が令嬢相手に体罰はマズイんじゃないかって?


 そんな事ないの、人間基準なら傷が残るようなことはしないだろうけど、ここは人ではなく魔物が暮らす宵闇の国。

 人間とは比べ物にならないほど、魔物の生命力、治癒力は高いからムチ打ちなんて朝飯前。

 ましてや、私は特に回復力が高いほうだから、向こうも遠慮してくれない。

 以前スパルタン様にダンスパートナーをしていただいて、足の甲をヒールで踏み抜いてしまった時の事なんて今思い出しても震えが来るわ。

 オシオキとして荒縄できつーくグルグル巻きにされたあげく、狭くてジメジメしてカビ臭い地下倉庫の石畳に正座をさせられたわ。五時間くらいだったかしら?

 ネズミにはつま先を齧られたし、酸欠になりそうだったしで大変だったんだから。

 それからは一切パートナー役をしてくれなくなって、私は一人で練習してます。これはこれで難しい。


 午前の魔法と剣の特訓で私のHPもMPもすでにボロボロでスタミナもゼロよ。

 このレッスンが終わったら、次はスパルタン様に監視されながらお茶の時間。

 座れるから身体は休めるけど、気は休まらないわ。

 茶器をカチャンとでも鳴らしたら、すぐにムチが飛んでくるでしょうね。それでカップを落として割ったりしたら、また縛り倒されたりしちゃうのかしら?

 でも恐ろしくて震えながらお茶を飲むから音を立てないなんて無理なのよ。


 想像しただけで口元には乾ききった諦めの笑みが浮かんでくる。


 だって私ったら、極度のビビリで上がり症、緊張しいの心配しいで不器用で話し下手でドジで物覚えが悪くて忘れっぽい。

 とっても気弱で言いたい事も言えないタイプ。

 一度雇った先生にもう結構ですなんて怖くて絶対言えやしない。だから怒られないレベルに自分が成長するまで耐えるしかないわ、そんな日がいつ来るのか見当もつかないけど。


 ああんもう。何でこんな生活になってしまったのよ。

 私がこうなった切欠を遠い目をして思い出す。


「全く、レッスン中だというのに何をボンヤリしてるんです?」


 スパルタン様が額に青筋を浮かべて、ムチを撓らせこちらを睨んでいる。

 ああ、またやってしまった……。

初投稿になります。不手際もあるかと思いますが、お読みいただきありがとうございます。

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