第一章/地獄の始まり
4月21日。天気は晴れ。
心地よい気温の中、家路を急ぐ。
「畜生…!あと少しで…!」
鉄製の冷たいドアを開けると、買い物を終えた親が立っていた。
「あんたぁ…?何で外にいるの…?」
最悪だ。バレてしまった。
本来ならこの時間には自分は家にいるはずだ。
親に「留守番しとくわー」などと言ってしまったからだ。
「い、いやぁ…外の空気が吸いたくてさぁ…」
「ベランダでいいじゃない。どこに行ってたの!?」
「…買い物行ってました…」
そうだ。予約を入れていたナイフを買いに行った。
無性にナイフが欲しくなり、ついポチってしまった。
「…まあいいわ。ちょっと風呂入ってくるから。」
良かった。今日は説教は無かったみたいだ。
いつもなら大目玉を喰らうのだが…何故だろうか。
「ま…いいか。ジュースでも飲もうかな。」
冷蔵庫からコーラを取りだす。
「…あれ?シャワーの音が止まった…早くないか…?」
何故だろう。何時もは気にしないのだが、今日に限っては
妙に背中がゾクッとする。要するに嫌な予感だ。
「か、母さーん…大丈…ッ!?」
目の前には、窓から入ってきたであろう少し異臭のする
男が母親を喰らう瞬間であった。
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ヴヴ…ヴァァアァァァァ!!」
B級ホラー映画にありがちな光景…だろうか。
そんな物を突然見せられたらたまったもんじゃない。
グロテスクな物には耐性はあるが、流石に無理がある。
そんな事が走馬灯のように頭をよぎった。
「ゾ…ゾンビ…!?とりあえず逃げなきゃ…!」
「ヴ…ヴァァアァァァァ!!!」
化け物がこっちに向かってくる。
このままでは確実に食い殺される。
「自分の部屋…自分の部屋…!!!」
とっさに近くの部屋に入り、カギを掛ける。
しかし、ドアは叩かれているのか軋み始めている。
「開けられるのも時間の問題か…武器持たなきゃ…!」
ふと、ポケットに何かの感触を感じる。
「これは…ナイフか…仕方ない…これしか…」
さっき手に入れたばかりの新品ナイフだ。
しかし手元にはこれしかない。
「後は…携帯とかだ「ヴァァァァァ!!!」
ドアが破壊されてしまった。
「ヤバいって…!死にたくねえ…!!」
咄嗟にナイフを頭に突き立てる。
すると、糸が切れた操り人形のように倒れた。
「やっぱ頭は弱点なんだ…新品でよかった。」
切れ味が良かったんだろう。おかげで助かった。
「とにかく…SHINEでも使うか。」
SHINE。人気SNSアプリだ。パロディだろうけど。
あんこ)ねえ!なんか外ヤバくない!?
高野)それな
だいそん)実況スレ立ってたし…ゾンビらしいよ。
あんこ)ヤバい、噛まれた(
高野)死亡フラグビンビンじゃねえか
「情報無し…か。あっ…アイツ大丈夫か…!?」
脳裏によぎった「アイツ」が心配になった。
「よし…家行くか…死んでませんように…」
次回、幼馴染登場。