第一話 バンド
バンドってかっこいいと思わない!?
そんな中学二年生の青春小説。
あたしは杉野澪中学二年生。
8月、吹奏楽部をやめた。
ただ飽きてしまったわけでもない。
練習がつらかったわけでもない。
理由があったけどそれはまたあとで。
今は思い出したくないんだ。
退部届けを担任の先生に出した。
「なんだ、杉野部活やめるのか。」
先生にハンコをもらう。
少し斜めって担任の先生の苗字が赤の丸の中に納まっていた。
その次に顧問の先生に見せる。
「え、杉本さん部活やめるの??」
吹奏楽部の顧問の先生は、ふんわりしていてどこまでも優しそうな先生だった。
「はい。」
先生が不思議そうにこっちを見る。
「どうして??」
「その用紙に書いてあるとおりです。」
先生は声に出して読んだ。
「勉強に身が入らなくなって、テストの点数が落ちてしまったため。」
嘘。
だけど今はそれくらいの嘘しか思いつかなかった。
「今までおつかれさま。」
そういって先生はふんわりした笑顔で笑った。
「ありがとうございました。」
そういって頭を下げてから職員室を出る。
職員室を出ると見慣れない男子が二人、あたしを見ていた。
「杉本澪!?」
そう言って右側の男子があたしを指差した。
「あ、うん。そうだけど何?」
今度は左側の男子が言った。
「お願いがあるんだけど!」
何でこの人たちはこんなにも必死なんだろう。
こんなに暑い夏なのに。関係ないか。
「えーと、お願いって何?」
男の子たちはお互いの顔を見詰め合ってからいっせーのーででいった。
「バンド、やる気ない!!??」