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フランスの伝説のミクスチャー・バンド「マノ・ネグラ」のフロントマン「マヌー・チャオ」のお話は、まあ、話の本筋には関わりがないので、飛ばしてもらって結構です。
お好きな方は、感想欄で作者と語ってみませんか? そうですね……わたしのフェイバリットは、やはり最初の一撃、ということで、1stの冒頭、マノ・ネグラのテーマから二曲目に入る、怒涛の勢いというか。ままっまま、まま、マノ・ネグラ!!!!!!
「マヌー・チャオはホント貪欲な音楽好奇心、ミクスチャーの手法、スパニッシュの伝統に根ざしたメロディセンス、ストリートのリズム感、パンクス的反骨精神……マノ・ネグラ時代から南米を中心に世界レベルで、90年以降の音楽影響力を考えたら、ぜったい無視出来ないフランス人ロッカーだと思うんですよ、どう思います、塔乃森先生?」
「いわゆるロック史が、国産ロックメディアが……まあ雑誌ですけど、奴を黙殺してるのは、論外どころか犯罪ですね。間違いない。ロック・エン・エスパニョールをなんだと思っているのか。そんなに英米が偉いか。国産歌謡ロックが偉いか……」
僕らはしばらく、バスの中でお互いのことをしゃべっていた。
お互い高校生ということで、「それらしい」話題……好きな漫画、アニメ、音楽、音楽、音楽、音楽……
そう、やたらと、僕らは音楽について、話がはずんだ。かなりディープなところまで語り合える。
それも当然か。どういうわけかわからないけど、琴さんはギター抱えているのだから。詮索しても仕方あるまい。
新人作家が編集者の、業界の流儀に口を出せる義理はないし、女の子のプライベートを詮索するストーカー野郎になってもマジで仕方がないし。きっと仕事終わりにセッションでもするのだろう、くらいに見当をとどめといた。
それよりも圧倒的に音楽の話が盛り上がったのだから、そっちの方が楽しい。
しかし……琴さん、しゃべるしゃべる。最初の儚げで穏やかそうで、なんかおどおどしてたのが、音楽のこととなると、まあ。
仕事の話には、あえてお互い持ち込まなかったのが、なんかアトモスフィア的なルールっぽかった。どうせバスが着いたら全開でするんだしね。
というわけで、音楽、音楽、音楽トーク! 僕の周りでこんだけ話せるひとは皆無だったし、なんか琴さんの方もそうだったみたいで。
ちょい話疲れて……って、まだ編集部着いてないぞ。僕は背もたれに寄りかかる。琴さんはパックのオレンジジュースをちゅーとストローで飲む。両手で抱えて。目線は僕の方へ固定したままだ。
やべえ。かわいい。
外見好み、性格好み、話・趣味合いまくり、しかも仕事相手、担当さん。
僕のこれまでのラグナロク最終決戦的な悲惨な投稿ワナビ的戦いの果てに、勝利のヴァルハラの光が散々と差し込めている。
BGMは言うまでもなくリヒャルト・ワーグナーの「ニーベルンゲンの指輪」のラインの黄金だ。
ああ、人生は輝いている……僕は窓の外を見た。
見た。
……あの黒い影は、なんぞや。
更新が遅れてすいません。即興小説(野獣兄)のほうに、なんかかまけていました
こちらの小説ですが、すでに書きあがっております。だいたい十万文字です。
だったらさっさと更新しろと。