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「星辰文庫」とは、僕が今回投稿して、見事、ありがたくも「最終選考通過」までしてくれた新人賞を主催しているラノベレーベルだ。
たとえば電撃文庫やスニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫のように歴史あるレーベルではない。
まあそれを言えばMF文庫Jあたりも、実働2000年代からといえ、新興レーベルというよりは明らかに大手であるし。
とまあ、新興レーベルである。
ゼロ年代の終わり頃、ラノベ業界一層のカンブリア的大爆発のような市場拡大を成し遂げ、収益的にも世間認知度的にも、「文芸」「エンタメ」「出版」の中で、確固たる位置を占めるようになり、今までラノベに及び腰だった出版社や、新規参入をもくろむ中小出版社が、こぞってラノベレーベル・ラノベ新人賞を立ち上げた。
このレーベル&新人賞も、そのうちのひとつである。
「今回は格別のご配慮、ありがとうございます」
僕は隣の彼女に、丁重に頭を下げる。これは礼儀だけの問題じゃない。これまで泣かず飛ばずだった僕の投稿人生において、光をともしてくれた出版社、レーベルなのだ。感謝してもしきれない。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
ぺこり、と、彼女も頭を下げてくれた。
「それにしても……です」
編集者様は、ちょい怪訝そうな顔をしておられる。
「なんでしょうか?」
「いえ、本当に高校生だったんですね、って、略歴読んで把握していたのですけど」
なるほど。
ラノベ作家の低年齢受賞率は、かなりのものがある。が、高校生が続々賞をとる、みたいなとこまではいってない。(それでも20そこそこでさらっと賞をとってプロになってしまうのが多い業界なんだけど)
高校生で最終選考まで残る、ってのは、そうそうないのだ。
が、
「このような若輩に機会を与えていただいたのも、ひとえに星辰文庫さまの寛大さによるものです。拙作に興味をもっていただき……」
ここでちょーしこいて「オレサマってアンファンテリブル(=早熟の天才)アピール」をしては、完全に元も子もないので、丁重に、丁重に。
「あ、あ、そんなにかしこまらないでくださいっ」
「とは申しましても、僕は……」
「それは私の方こそなんです。……実は私も高校生なんです。だからかしこまられることなんてぜんぜんなくて……」
「えっ」
こ、高校生編集者? そんなのあるの?
「バイトではなくて、一応社員ですけど、見習いもいいとこで……」
「そうなんですか……」
で、二人して、黙ってしまう。
僕が彼女にフォローする権限なんてないし(だって僕はまだプロとして「確定」すらしてないのである)、なんていったらいいかわかんない。
まいったな。