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(2)

まだ序の口です。何が?

パクリだよ!

 「……って話だ」

 

僕らは主任の話に、思い思いのつっこみを入れながら、状況を把握する。つっこみ入れなくてはやってらんないよ!

 

「……ワナビパワーもここまでくると、って感じですねえ」


 琴さんが「うへえ……」的な感じで言う。琴さんもワナビってふつうに言うようになったな。いいのか悪いのか……。

 ドラゴンどもの行動に一貫性はない。あえて言うならば、「混乱に陥れる」。やたらめったら交通網に炎を浴びせたり、摩天楼をかいくぐってヒルズ族どもをビクっとさせたり。


 迷惑だ……この事件は、まだ国内(東京)ローカル事件の範疇に収まっているが、基本的に国の恥だな……これが朝以降も続くようなら。そう、朝にまで持ち越してはいけないのだ……何があっても。LAOがあったとしても、平凡な幸せが失われていい理由にはならない。


 東京タワーに近づいていく。路地裏、路地裏をかき分けて、僕らは最短距離で向かっていく。そこにバカがいるから。

 やがて大通りにでる。ここからタワーまで一直線。

 すると、そこにドラゴンが飛来してくる。まるで我々を妨害するように。


 「邪魔だな……」


 主任が苦々しい顔で言う。


 「やりますか?」


 僕は主任に確認する。


 「もちろんだ――あんなザコ」


 琴さんも主任も、一流のエージェントだ。この程度の敵、ザコに等しいのか。……チートすぎじゃなかろうか。僕が言うなって。そうか。


 「俺がやる。時間が惜しい」


 そう言いながら、主任は何かの本を読んでいる。文庫本だ……『緋●のアリア』? やたらと凝視してる。こんなときに何を……と一瞬思ったが、否、これは、間違いなく、主任のLAOだ。

 主任、凝視している。的確に、とあるページをめくって、それをじーっと見ている。


 ぱたん、と本を閉じる。そして主任は駆け出す。


 主任は、どういうわけだか、でっかい棺桶を肩にぶら下げている。ものすごく重そうだ。よくあれで走れるものだ。パワーが中年とは段違いである。



 次の瞬間、僕は信じられないものを見た。

 主任が、人間離れした跳躍を見せたのだ。あの巨大なドラゴンの、さらに上を行く。たった一度の跳躍で、竜の頭上まで。


 「黒井! 武器をよこせ!」


 そう言いながら、驚愕を隠せない竜に向かって、体を回転させながら、遠心力でもって棺桶をブチ当てる!

 完全にクリーンヒットである。竜はその重い一撃に、軽い脳震盪をくらっている。格ゲーでいうところのピヨり。


 「できたわ!」


 これまた一瞬でオルフェはスケブに絵を描きマテリアライズ、その具現化物質が、降り立った主任に向けて弾道一直線的に向かっていく。それを主任は、見もせずにキャッチ――かっこええ……。

 それは何か。巨大な刃に、銃のシリンダーとグリップが付いた、異形の剣。


 ……見まごうはずもない、FF8の象徴「ガンブレード」である。


 それを見た主任、獰猛な笑みを浮かべる。……これ、使えるっての? 

 ドラゴンは、戦闘のアドバンテージを稼ごうと、再び飛翔する。だがそれを追撃するように、再び主任は跳躍、一瞬でドラゴンの胴体に肉薄し、


 「あんなイケメンのくせして重度のシスコーン!」


 をい。


 主任は戦場の空気を読まずして、FF8の根幹であるスコ●ルさんのウィークポイントを叫ぶ。それはLAOの原理でもって、ネタを付く発言であった。よって、ガンブレードの「強度」はさらに上がる。


 「ライオンハ――――ト! 十六連打!」


 ズガンガンガンガンガン! 


 ガンブレードの独特の、剣撃とともに爆発が起こるアクションを、連打連打連打! スコ●ルの必殺技、連続剣である。ドラゴンは完全に圧倒され、ボコられるばかりだ。


 最後におもいっきり振りかぶって、重い重い一撃を。ドラゴンの頭にブチこむ。断末魔の咆哮。ドラゴンは墜落し、崩れ落ちた。そして灰が消えるように、紅い煙とともに、RPGで敵が消滅するように、消えていった。


 「さあ行くぞ野郎ども! ワナビをぶっ潰す!」


 主任のハンター精神がヒートである。僕らはそれについていく。 


 しかし。


 「主任って、マジ強かったんだなぁ……」


 そう思わずにはいられない。


 いくらLAOが使用者に異能をもたらすとはいえ、ここまで強烈になろうとは。もう超人じゃないか。鎧袖一触、明らかにザコ相手のやり口だった。


 「主任は、怪異エージェント最強なんです。LAO以前から」

 「以前から?」

 「主任、本を読んでたじゃないですか。あれが主任の異能なんです。自己の肉体的ポテンシャルを上げる、っていう」

 「本を読むだけで?」

 「あんまりこれ、言いたくないんですけど、あの本……」

 「おいお前ら、奴が現れた。その話はあとだ」


 目の前に東京タワーをバックにして立ち尽くすは――おそらくは、あれが、窓枠曲壁であろう。


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