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「で、結局ただの打ち合わせかよ!」
僕は琴さんの部屋(一人暮らしのマンッショーンであった)で、オルフェと共に同席させていただく権利を賜り恐悦至極幸甚の極みなる心持ちでパーティに望んだ。
が、結果はこれである。
オルフェは琴さんがもう着なくなって相当経つパジャマを着ていた。それでも完全なるぶかぶかであった。そこがまた琴さんの萌えポイントをくすぐっている。まあ見かけだけはかわいいといえなくないこともない。見かけだけだぞ! デレてなんてビタイチないからな!
んで、僕は当然ながら改造制服の上っ張りを脱いだだけの、シャツと黒ズボンである。さっき琴さんが
「私のでよければ着ます?」
なにそのご褒美ボーナスステージ! なんてことをおっしゃった。初回のダンジョンでラストエリクサー入手レベルじゃねえか! と思ったが、しかし真に受けては、それこそ礼儀知らずのキモオタではないかと瞬時に判断し、丁寧に拒否した。するとこの場の女子二人、途端に落ち込んだ。何で。僕
確実に紳士的な態度だったやん。問うてみたら、
「ショタっ子せんせい女装の機会が……」
「今の佑のかわいいところが……」
みたいな意味のわからんことを抜かす。なんだよ僕はショタポジなのかよ。どの作品にも一人はいる気弱系受け系なのかよ。ニャ●子さんでいうとこのハス太的な。
……まあしょうがない。超幸運で招かれているので、追い出されないために、とりあえず的に、
「着たらこんな感じになりますけど」
と、服を僕の前面に……って何だよこのフリフリはっ!
「何でそんなに似合うんですかっ! 黒髪ショートとフリフリロンスカネグリジェって案外合いますね、しかしどうしてゆうせんせい、女の子のサイズがふつうに着こなせるんですか!」
何で逆ギレされにゃならんのだ! もうだめだこの美少女! オルフェとは別ベクトルでやっかいだ。しかし好みだから許す。オルフェ、てめーは許さん。
そんなこんなのパジャマパーティであった……まあここまでの流れは、それなりにキャッキャウフフといえなくもない。確かに僕ごときにこの空気を甘受できたことは、幸せだった。
じゃあ次はコイバナかな? お菓子を持ち寄って、みたいに連想がくるのは必然だろう。
そこになんだ。出されたのは、僕と琴さんの原稿をはじめとして、オルフェが描いたイラストやキャラデザのラフ、主任の指示書、企画を社内会議にかける際のプレゼンの殴り書き……仕事かよ!
僕は愕然とした表情を隠せない。大声でのつっこみを押さえられない。二人を見ると、くすくす笑っている。……こ、こいつら、引っかけおったな……!
「ぷぷぷ……」
ホスト役琴さん、爆笑をこらえている。
「まったく童貞には困ったものね」
すっげえ偉そうにくそオルフェは「ふふん♪」みたいな感じでのたまう。
「おいてめえら、そこになおれ」
立ち上がり、二人を見下ろして告げる。
琴さんは女の子座りをしてるからまだいいが、オルフェの野郎はダラダラ寝っ転がってポテチを食いながらスプライト飲んでやがる。
「なんですかゆうせんせい」
「なによ童貞」
僕はオルフェのポテチの袋を足でおもっきし踏んずけて中身を粉々にする。
「か、神をも恐れぬ所行を、この愚弟は!」
「正座」
「お姉ちゃんに向かってずいぶんな……」
「次ほざいたらスプライトをシェイクする。正座っ!」
オルフェからペットボトルを奪い取り、宣言する僕。ぶーたれながらも正座するオルフェ。憎たらしい……。それに比べて、自主的に正座する琴さんのなんと愛らしくけなげなことよ。
「よし、じゃお前ら、この状況を説明しろ。簡潔に、ネタを交えず、僕を人間としてきちんと扱った上で、だ」
「いえゆうせんせい、これ、きちんと企画して、だまくらかしたわけじゃないんです」
「ほう?」
「パジャマパーティも、てんてーが言ってくれて、あの戦いのときに決まりましたから」
「そうそう、全部アドリブ」
「ほう……」
「だから、ドッキリでだまくらかしたわけじゃ……」
「しかし偶然を利用して僕をだまくらかしてるんじゃねえか! そのアドリブ力と連携力がよけいにタチ悪いわっ!」
「佑、落ち着きなさい」
「主犯格がよくもまあ!」
「結果のみを見なさい。確かにこれは、打ち合わせも兼ねてるわ。でも、オーソドックスなパジャマパーティは、その後のお楽しみ、ってとこなのよ? どっちにしろ、参加権利はちゃんとあるじゃない」
「むぐぐ……」
「それに、よ。あなた、忘れてるようだけど、大変なのよ、この状況」
「なにがだよ」
「You are in Koto‘s Private room at deep night.」
すげえ流暢な英語が僕の耳にまっすぐ突き刺さった。言語の壁を越えて、本質がダイレクトに僕の心と脳に突き刺さった。
……そうだったよ。
なにがどうであれ、全くどうでもよかった。僕は琴さんの私室にいるのだ。しかも深夜。
冷静に考えろ。そうだオルフェの言うとおりだ。エロゲのルートでいったら、幼なじみや妹以外だったら、ここにたどり着くには、プレイ時間の相当をかけなくてはならない。まして、入ったら入ったで、LOVEずっきゅんなことになるかといったらそうでもなく、大抵はギャグで落とされてしまう。オチが。オルフェがさっきいった『視聴権利』みたいなノリで。
が、今僕は、正規の手段で、理屈で、理由で、なんの問題もなく、琴……さん……の……部屋に?
「ふぉ……」
「奇声あげたら叩き出されるのはわかってるわね、佑?」
なんでこいつは人の心がやすやすと読めるんだろうなぁ。
「じゃ、今日の反省会というか、ミーティング、それからこれからの出版の打ち合わせをしましょうよ、ゆうせんせい、おるふぇてんてー」
人数分のコップにオレンジジュースを注ぎながら、琴さんがまとめた。
「ところで私はいつまで正座してればいいのかしら?」
僕はそれを華麗に無視する。




