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しかし……いまどき、ハー●ルン、通じるんだろうか? 魔曲
琴さんは演奏をする。ニコ動の「アイアンメイデンのあれを演奏してみた」レベルのものではない。そこに込められた鬼気、まさにプロのものだ。
アグレッションは本家メイデンの音源に負けてない。ツインリード前提の曲、よく一本のギターでできるな。
戦場にヘヴィメタルが鳴り響く。映画かこれは。しかし……それと同時に、プロペラ機の飛行音、それも引けをとらず、轟音すさまじく。
機種はスピットファイア、英国が誇る世界一美しい戦闘機。栄光のスーパーマリンエンジンの音色、高らかに。
その姿は歴戦の戦士という表現がふさわしく、至る所が傷だらけの装甲で、キャノピーのガラスにもヒビが入っている。
だけど、その機体に込められたオーラは、ロートル機体のそれではない。メッサーシュミットを相手にする華麗なる空戦の伝説は、古くさい昔話といわせるものか、それは今なお息づく神話なのだ!
ネタイメージを、琴さんはしっかり理解し、分析し、批評し、愛し……自分のものにし、解釈し、自己流のアレンジを施し、演奏する。
そうすることによって、ラノベ・アート・オフラインという設定は、「汝らの妄想を具現化する」。愛なくして、妄想は現実化しない。正確な理解なくして、作品は現実化しない。
Aメロから全開の絶唱。
琴さんはギターを掻きならす。歌にそうオブリをガンガン放り込んでいく。
スピットファイアは、まっしぐらに僕らを通りこし、ドラゴンへと突っ込んでいく。すさまじい風切り音と、巻き起こる旋風!
無論、ドラゴンがなにもしないわけはなく、再びメガフレアの放射が行われる……機体は炎に包まれる……
が。
撃墜王は一歩も引かなかった。
炎に突っ込んで、それをくぐり抜け、突撃、そして機銃の一斉掃射。
ドラゴンの肩は貫かれる。危機を悟ったドラゴンは、無理矢理に翼を羽ばたかせて空中に飛翔する。黒い血を滴らせながら。
そして広域に炎幕をまき散らす。目くらましのつもりだろう――人間相手なら、この炎だけで絶命せしめるほどのものだ。
が、「たかが凡ドラゴンごとき」、スピットファイアにとっては、数あるトカゲのひとつでしかない。ファイ●ルファンタジーでいえば、フィールドで戦うちょい大きめのザコ敵だ。
スピットファイアが……撃墜王が相手にしてきたのは、もっともっと、すごい奴らだったのだから。
琴さんは、機体を、ギターを弾くことによって操作する。操縦管を握っているわけではない。例えるなら、ポ●モンに指示を飛ばすくらいのもの。
でも、それで十分だ。ゲームでいうオート戦闘にしておいても、十分やれる。なんてったって、撃墜王なのだから。
サビ。
――生きるために飛ぶんだ、
飛ぶために生きるんだ、
おまえは死ぬのか生きるのか、
それが――「撃墜王の空の高み(Aces High)」!
もうほとんど間違いなく森博嗣の「ス●イ・クロラ」の世界だよ。
やがて音楽は、ウォーキングベースを通して、ギターソロに入る。
いよいよ琴さんはノリノリである。
赤いギター……ギブソン・ES―335。そのホロウボディには、大きな魔法陣が描かれている。完全に中二というか、ゴスというか。しかしES―335にああいうペイントをするのも大概だけど、本来ブルース用のギターでメタルをやるかね。
かっこいいけどさっ。
戦闘機は縦横無尽に空を駆け、相手の炎をかい潜りながら、確実にしとめていく。翼を、腕を、足、腹……ズタボロ。
それでも飛翔するドラゴン、まさにファンタジーの王者であったが、今回の分は、ミリタリーとメタルの王者にあった。
最後のギガフレア……ほとんど光線となった炎を放つドラゴン。プラズマティック! しかしそれを見事にギリギリでかわし、
そのときまさに事さんは叫ぶのだ。
ラストの超ハイトーンヴォーカルを。
そして機銃はドラゴンの顎をブチ抜くのだ。
トラトラトラ! 撃墜王飛竜ヲ撃墜セリ!
かくして、魔曲使い・比良野琴のライヴは終わったわけだが……
ひとこといいたい。
「これなんて『ハー●ルンのバイオリン弾き』?」
今回は解説多いですよ
・ギブソン・ES-335
wikiはこれ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%96%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BBES-335
あと、自分がいつも見てる楽器ブログはこれ
http://d.hatena.ne.jp/toy_love/20120603/1338735056
・ヒコーキ
森博嗣も絶賛した、このエンジン音!
http://www.youtube.com/watch?v=f6GxzlXvETk
・歌詞
これが原曲の英詩
http://www.lovecms.com/music-iron-maiden/music-aces-highqeco5.html




