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【プロローグ】スメルズ・ライク・ワナビ・スピリット

※「窓枠曲壁まどわく・きょくへき」というのは、作者の旧ペンネームです。


なお、この小説は、ありとあらゆるところから、さまざまなアイテムをパクってきております

プロローグ スメルズ・ライク・ワナビ・スピリット


 うわ……

 

うわ……うわ! 通ったよ! 最終審査!


 僕は自室のPCの前で、ネット越しにみることのできる、その静かにして圧倒的な「事実」に震えていた。


 夢、それが具現化する――とは、まだ確定していないけれど、確率的にいったら、それは相当高いのだから。ここまでたどり着くことのできる人間が何人いる? 


 多くの、嫉妬と疑惑に満ちた作家志望連中……通称「ワナビ」が怨嗟の声をあげ、嫉妬と疑心暗鬼に胸を焦がすこのシーン、しかし、僕は確かにそこから抜けだしつつある……!


 ライトノベル新人賞のこの最終審査に、僕と、僕の作品の名前がある。


 夢じゃない。夢をつかみつつあるけど、夢じゃない。ややこしいな日本語。


 ああ、ああ、僕はテンションが妙になっている。


 ここにこうして名前があがっていることはもちろんだが、それ以上に、なんと、なんと、あの! 編集部から! 


 「おめでとうございます、最終審査に合格しました」


 との電話さえあり、なんと、


 「つきましては今後の方針をご相談したく……」


 とのことで、会うことはできないか、との旨まで!


 僕はネットの「事実」をみている。こんなにうれしい日はない。人生の中でもベスト5に入る。いまだに信じきれていない。


 ……イヤッッホ――――イ!!! あ――――っ!


 僕は暗がりのなか、モニタを見ている。


 あの日のむらむらは忘れない。


 第二次選考結果から、最終選考発表までは、地獄だった。


 逐一某ネット巨大掲示板――そーだよ2ちゃ●ねるの文芸書籍サロンだよ、文筆家志望の吹き溜まりだよ!――のリークから、最終発表のある程度の日付を割り出していたので、こんな時間にネットに張り付く癖ができてしまった。


 まあ、もう電話かかってきたのだから、いいといえばいいのだけれど、それでもやっぱり確認したい。


 新人賞公式HP、審査員の先生がたや、編集部のブログやtwit●erをストーカーのごとくチェックし、某2ちゃ●ねるの各種新人賞系のスレッドの噂話をチェックし……ああ、みじめな日々。


 何回、


 「自分の送ったのはカテエラじゃないか?(※カテゴリーエラーの略。「出版社/レーベルのカラーにあってない」とか「ラノベらしくない」とか、原義の「募集しているジャンルの小説じゃない」とか、意味は幅広いが、ネガな意味なのは間違いない)」


 とか、


 「あそこの展開締めとけばよかったな、いや発想力で先生がたは理解してくれるだろう、いややっぱり理解してくれないだろう、いややっぱり……(無限ループ)」


 とか、うじうじ考えていたわけです。初デートまえの童貞だってここまで悩まないぜ!


 僕の名前が書いてある。


 塔乃森佑とうのもり・ゆう


 いろいろ考えたすえ、本名投稿だ。


 中二病的なペンネームだの(鳳凰●狂真的な)、

シュール系の名前だの(一次審査で落ちた名前のなかに「窓枠曲壁」というへんなのがあったが、あれはどういう意味でつけたのだろう)、

回文だの(NishioishiN的な)、

純文学系だの、昨今はやりの「つかさ」系だの(川口士、瀬尾つかさ、土屋つかさ、上月司……)いろいろ考えましたよ。


 でも、僕は、結局この名前にした。


 「彼ら」が気づいてくれるかも、という思いは、あった。


 あてつけ? 示威行動? まあいい。どちらにせよ……。


 とにかく、およそ生まれる瞬間から死ぬ瞬間まで、僕は僕以外の人間にはなれない、それがこのペンネームのテーゼだ。だったらかっこいい系のペンネームを三週間かけて登下校中考えつくしたあの時間はなんだったのかと自分に問い詰めたい。


 PCの電源を消す。一気に暗くなる。ベッドに転がる。窓の外は、月明かりがぼんやり照らす。


 オルフェ、君は今の僕をどう思うだろうか。2ちゃ●ねるのワナビ関連のスレッドに張り付いている人間のことなんてどうでもいいか?そう思ったら、いままでの自分がすごく情けなく思えてきたが、この焦燥感を慰める方法がほかにあるとでもいうのか。                                                 


 「あるにきまってるじゃない」


 彼女、オルフェは、記憶の中の声で、僕の脳に語りかける。


 「真の才能は、つまらないことには拘泥しないの。たとえば、次の作品を書くみたいにね。論理的に、数学的に考えて、2ちゃ●ねるをみるよりは、新作を書いていたほうが小説家になる確率が高いことくらい、わからないの? ばかなの? 死ぬの? 一生ワナビなの? 30になってもそれを続けるの? ねえ童貞?」


 「どやかましいわ!」


 がんがんがん! と、枕にヘドバン。僕は脳内の声におもいっきりつっこんだ。いかん……疲れてるのかな。


 こんなことをしている場合じゃない。あんな化●語のガハ●さんをロリ化したようなツンドラ少女に関わってどうするのだ僕の人生。明日は、人生初の「小説の打ち合わせ」なのだ!


 寝るっ! 僕は寝る! あんなくそオルフェなんぞくたばってしまえばいいっ! 


 くっそー、天才で、Favoriteのエロゲ「いろとりどりのセ●イ」の真紅くらい白衣が似合って、川原礫「アクセル・ワ●ルド」の黒●姫くらい黒髪が似合う美少女で、コンピュータの天才で、ロリガハ●さんで……あれ? 完璧じゃね?


 まあいいや。明日がんばろう。


 そして僕は、ここ数日の寝不足と妙なテンションを収めるべく、ひと仕事終えたときのエロゲ主人公のように眠りに落ちていく……なんのひと仕事かって? 察してください。


 ……………………わーったよ、いうよ、


 かわいいかわいいギャルどもに己のハッスルスティックをピストン&ロータリーするお宝シーンのことだよ! 言わせんな恥ずかしい!


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