僕はずっと変わってないよ
両片想いみたいな話しです。
「ねぇ、誰が好き?」
「ねぇ、僕のこと、好き?」
もう付き合って何年もたつのに、彼はことあるごとに私にこう尋ねてくる。
そのたびごとに私は、心の中でため息をつきながらこう言う。
「また言うの?」
「言って…。」
彼は切なそうに、また言う。
だから私は答えた。
「裕さんが好き。」
「本当~!」
彼はいつも嬉しそうに答える。
私は複雑そうに、
「うん…。」
とうなづいた。
聞ければ良かったのだけど、私はいつも思っていた。
彼と私は付き合っていると言っても、彼の仕事が忙しくてなかなか逢えない。
前に逢ったのは、いつだったのか…。
「私のことは好きなの?」
彼はいつも僕が好きか、聞いてくるけれど、私を好きだとは言ってくれない。
彼はなぜいつも聞くのだろうか。
聞きたいのは私の方なのに…。
いつか、聞いてこなくなる日は来るのだろうか…。
その日が来たら、彼が私に興味がなくなったときなのかも知れない。
その日が来る前に聞いておきたい。
彼は答えてくれるだろうか。
ある日、またデートが仕事でドタキャンされたときに、また彼が聞いてきた。
「ごめんね。逢いたかったんだけど…。あの、僕のこと、好き?」
「うん、好きだよ。」
私はそう答えながら、涙が出そうだった。
彼はまた約束を果たしてくれなかった。
もうダメかも知れない。だから、聞いてみた。
「私のこと、好き?」
彼はハッとしたようだったが、すぐに答えてくれた。
「僕はずっと、変わってないよ。」
「それは、どういう…?」
涙声で私は聞き返した。
「響子ちゃん、泣いているの…?」
心配そうに彼が聞いてきた。
「う、ううん。泣いてなんか…。」
早く電話を切りたくなって、私はそう強がりを言った。
「響子ちゃん…。やっぱり泣いているじゃない。今、家?」
彼が慌てたように聞いてきました。
「家だけど、何?」
ぐずぐずと鼻を啜りながら答えた。
「すぐ行くから待ってて!」
彼はそう言うと電話を切った。
私に残されたのは、ツー、ツー、と残されたのは一方的に切れた電話音だった。
だって、仕事だから無理だって言ってたのに、すぐ行くって何なのいったい。
来るわけない…。
そう思っていたのに、30分もたたないうちに彼はやって来た。
真っ青な顔をして。
「響子ちゃん…。」
「裕さん、驚いた。仕事、大丈夫なの?」
私は逢えて嬉しかったけど、彼の邪魔をしたくなくてそう言った。
「いいんだ。響子ちゃん、やっぱり泣いてたんだね。」
彼はそう言うと私をぎゅっと抱きしめてきた。
「裕さん…。」
私は彼の体温を感じて、今度は嬉しくてまた涙が出てきた。
「響子ちゃん、ごめんね。いつも逢えなくて、でも、僕は初めて逢ったときから響子ちゃんが好きだよ。」
彼はさらにぎゅっと抱きしめてきて苦しいほどだった。
でも、幸せだった。
だって、彼が私のことを好きだって言ってくれたから。