表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちいさな話  作者: さくら
3/3

僕はずっと変わってないよ

両片想いみたいな話しです。

「ねぇ、誰が好き?」


「ねぇ、僕のこと、好き?」


もう付き合って何年もたつのに、彼はことあるごとに私にこう尋ねてくる。



そのたびごとに私は、心の中でため息をつきながらこう言う。


「また言うの?」



「言って…。」

彼は切なそうに、また言う。



だから私は答えた。

「裕さんが好き。」



「本当~!」

彼はいつも嬉しそうに答える。



私は複雑そうに、

「うん…。」

とうなづいた。


聞ければ良かったのだけど、私はいつも思っていた。


彼と私は付き合っていると言っても、彼の仕事が忙しくてなかなか逢えない。


前に逢ったのは、いつだったのか…。



「私のことは好きなの?」


彼はいつも僕が好きか、聞いてくるけれど、私を好きだとは言ってくれない。



彼はなぜいつも聞くのだろうか。


聞きたいのは私の方なのに…。



いつか、聞いてこなくなる日は来るのだろうか…。


その日が来たら、彼が私に興味がなくなったときなのかも知れない。


その日が来る前に聞いておきたい。


彼は答えてくれるだろうか。





ある日、またデートが仕事でドタキャンされたときに、また彼が聞いてきた。


「ごめんね。逢いたかったんだけど…。あの、僕のこと、好き?」



「うん、好きだよ。」

私はそう答えながら、涙が出そうだった。

彼はまた約束を果たしてくれなかった。


もうダメかも知れない。だから、聞いてみた。


「私のこと、好き?」



彼はハッとしたようだったが、すぐに答えてくれた。

「僕はずっと、変わってないよ。」



「それは、どういう…?」

涙声で私は聞き返した。



「響子ちゃん、泣いているの…?」

心配そうに彼が聞いてきた。



「う、ううん。泣いてなんか…。」

早く電話を切りたくなって、私はそう強がりを言った。



「響子ちゃん…。やっぱり泣いているじゃない。今、家?」

彼が慌てたように聞いてきました。



「家だけど、何?」

ぐずぐずと鼻を啜りながら答えた。



「すぐ行くから待ってて!」

彼はそう言うと電話を切った。



私に残されたのは、ツー、ツー、と残されたのは一方的に切れた電話音だった。



だって、仕事だから無理だって言ってたのに、すぐ行くって何なのいったい。


来るわけない…。


そう思っていたのに、30分もたたないうちに彼はやって来た。


真っ青な顔をして。



「響子ちゃん…。」



「裕さん、驚いた。仕事、大丈夫なの?」

私は逢えて嬉しかったけど、彼の邪魔をしたくなくてそう言った。



「いいんだ。響子ちゃん、やっぱり泣いてたんだね。」

彼はそう言うと私をぎゅっと抱きしめてきた。



「裕さん…。」

私は彼の体温を感じて、今度は嬉しくてまた涙が出てきた。



「響子ちゃん、ごめんね。いつも逢えなくて、でも、僕は初めて逢ったときから響子ちゃんが好きだよ。」

彼はさらにぎゅっと抱きしめてきて苦しいほどだった。


でも、幸せだった。

だって、彼が私のことを好きだって言ってくれたから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ