辺境領への遁走4
ガント村から先は辺境伯領までもう村は無いところをひた走る。
草原や空き地の続く地帯を突っ切るほうが早いのである。
街道沿いに行くとどうしても各町や村を立ち寄るので、たどり着くまでに時間がかかる。
地図を見ているときに山でもないのだし、なにも無い区間を突っ切れば早く辺境伯領に辿り着くのでは?と気づいてしまった私は試したところ、三日で辿り着けてしまい以降その道を使って移動している。
幸いなことにレイストン王国は平和な国なので野盗こそ街道沿いを行く旅人は狙うがこんな道なき道を行く旅人が居るとは思わないのだろう。
このなにも無い区間を通り過ぎるときに出くわすのは野生動物だけであり、彼らは総じて魔力量の多い私にはあまり近寄らない。
寄ってくるのはそれに気づかない小さな生き物や、ケガを治してほしい野生動物である。
一度大きなクマ親子にケガの治癒で近づかれた時は驚いたものの、子熊の後ろ足を治してあげると丁寧に頭を下げて立ち去って行ったし、翌朝の野営テントの前には大きな川魚を置いて行かれた。
感謝の品まで用意する、人間のような感覚のクマ親子であった。
その後遠目に見かけたときは元気だったので良かったと思っている。
そうした道なき道を駆け抜けて、いつもの開けた野営地にやはり夕方近くで辿り着き早々とテントを立て、煮炊きを始める。
「今日はここで一休みだよ。近くの草を食べておいで」
そう声をかけて、パライズを好きにさせる。
パライズは賢い子なので、近くの小川で喉を潤し、草を満足するまで食むと戻ってきてくれる。
簡単に干し肉とちょっとした野菜を煮込んでスープを作ると堅パンを浸しながら食べる。
食器も調理器具も一人用なので簡単に水魔法で洗うと、小さなバックにしまう。
パライズ含めて野営テントに防御結界を張って、就寝。
こまめに休憩しつつでも結構な距離を移動しているので今日は疲れた、ストンと眠りに落ちた私は夜の鳥がその様子を見ていることには気づかなかった。
気づいたパライズは、テント前を陣取って私の様子を見せないようにしっかりガードしてくれたので鳥は諦めてその場を立ち去った。
パライズは、気にくわないときのフンという鼻息を鳴らし、立ち去った気配を感じるとしばしの休息を取るのだった。
パライズは相棒として最高の働きそしてくれるのである。
周囲の警戒はもちろん、騎乗する人を気遣うことのできる賢い馬なので。
旅の用心棒としても頼りになるだ。
パライズとしても、馬を気にかけ駆け方も道も考える乗り手のシャルロッテが大好きだし、そもそも幼児の時から見ている娘である。
パライズからしたら妹分の世話をしているようなものである。
たとえシャルロッテの方が年上でも、馬年齢15歳は年上なのだとパライズは思っているのである。




