辺境領への遁走3
早朝に王都を出たおかげで本日の目標のガトン村には夕方たどり着いた。
村に辿り着く前に挟んだ休憩地点で、一般市民の平服に近いシャツとスラックスに着替えてブーツに外套を羽織って駆け抜けて来た。
休憩地点では薬草なんかも摘んだりして、日銭稼ぎ用にあれこれと採取もしている。
そんな私の様子を、御主人、本当にいつもちゃっかりというかという呆れた視線で見つめてパライズは待機してくれたものである。
合間に怪我した野生のウサギとか狐とかを治癒してあげたのも、呆れた視線の原因かもしれない。
中継地点のガント村はそこそこの広さのある農村だ。
だが、ラクレット子爵領の端にあり人が行き来するので小さいけれど食堂兼宿屋があるのでここで移動の一日目に休むことが多い。
そしてこの辺りからは移動中は愛称であるロッティと名乗ることにしている。
ウサギ亭という食堂兼宿屋にはいつもお世話になっているが今回は半年ぶりになる。
「こんばんは。今日、泊まれるかしら?」
表でパライズを待たせつつ、食堂に顔を出して声を掛ければ食堂のおかみさんのマーサさんが答えてくれる。
「おやまぁ、久しぶりだこと。ロッティが来たならもちろん歓迎するよ。部屋も一つ空いてる。階段側の部屋だよ」
「ありがとう。マーサさん、お世話になるね。パライズ、厩舎につないで大丈夫?」
「もちろん、いい子のパライズには牧草と水をあげようね」
マーサさんの返事は待ってたパライズにも聞こえたようで、ヒヒンと鳴いて返事をしていた。
「本当に賢い、いい子だよ。繋いだら食堂の方においでね」
「はい、すぐ来ますね」
パライズを食堂裏の厩舎につないで牧草と水をあげると私は食堂へと戻った。
「マーサさん、今日のおすすめを頂戴」
私の言葉にマーサさんは苦笑しつつ、はいよと応えて準備してくれる。
「また、少ない休憩で王都からここまで移動してきたね?この子は、全く大の男でも走らない道を駆け抜けてくるんだから」
そう言いながら出してくれた今日のおすすめはシチューとサラダに柔らかな白パンだった。
「マーサさんのシチューにありつけるなんてラッキーだわ。私マーサさんのシチューが一番好きなの」
本音でシチューはここのが一番好きだ。
美味しいのと、今日一番のしっかりしたご飯なのでどんどん食べ進んでしまう。
「本当に、美味しそうに食べるんだから。ほら、今日のサービスだよ」
そう言ってマーサさんはドライフルーツたっぷりのパウンドケーキを二切れ付けてくれる。
「わぁ、これも前回食べたとき美味しかったの。嬉しいわ、ありがとう」
私は美味しいご飯を食べて、部屋でしっかりと休み翌朝も美味しいご飯を頂いて早々にガント村から出発した。
「毎回強行軍でパライズとここに寄るけれど、いつも美味しそうに食べてくれるからご飯の作りがいがあるのよね」
という、評価を受けていたらしい。
またいつか食べる機会があれば寄りたいのはこのウサギ亭なのである。




