仮面舞踏会4
そのあとは魔法をかけ始めたところで殿下が私を組み敷いてしまった。
その際に私は殿下から漂う微かなにおいで使われた媚薬が治癒でも解消しにくい、最近話題になっている隣国からの密輸で裏社会から出回っている強力な媚薬だと気づく。
この間、入団前にご挨拶に行ったときに団長と副師団長にお会いしこの話題の媚薬についての厄介な点を学んだばかりである。
公爵家の御令嬢、無駄に行動力ありすぎだし、少し黒い噂のあった公爵様もこれが手に入るルートをお持ちなら黒確実だろう。
この厄介な媚薬のルートの持ち主と見て間違いないのだから。
「殿下、少しの我慢です。私などに手を出してはいけません!」
無理と分かりつつも一応声をかけるがすでに、薬がしっかり回ってしまった殿下は媚薬の効果で私の身体に手を出し始める。
高貴な身分と下位貴族ゆえに、ここで魔法で張り倒すことも出来ず必死に抵抗を試みるが力の差は歴然で上手くいかず。
そしてこの媚薬の厄介な点、接触した相手にも匂いで媚薬効果を発揮する。
私にも媚薬の効果が徐々に出始めて、最後にはこちらも抵抗するすべなく流されてしまうしかなかった。
本当に、恐ろしい媚薬である。
しかも、媚薬効果が出始める前には護衛騎士は捕縛と部屋の前の警備に移動してしまい、ここには止める者が居なかった。
この媚薬の危険性に気づいた私が部屋から出してしまったのも、過ちの始まりだった。
この媚薬男女関係なく効く代物なので、ここに騎士が居たらそれこそ同性での過ちという新たな一部界隈が喜ぶ展開が始まっていた。
それはそれで大問題なので、ここは犠牲が私一人だったことが幸い?なのかと思ったが聖魔法で自分の身体を調べて愕然とする。
聖魔法の使い手の女子のみに綴られている書籍を読ませてもらった私だけが出来る聖魔法スキル。
妊娠を調べるスキルは、本来は妊婦さんと赤子の成長を見守る魔法なのだが自分自身に使える聖魔法スキルの女子は受精と着床も把握できるのだ。
そして念のため媚薬が切れるまで事に及んでしまったので、この魔法を使うと私はこの短時間で第三王子殿下のお子を身籠ってしまっていることに気づいた。
「これは事故、事故なのよ。子爵令嬢が相手では、殿下の身分と釣り合わない……」
かといって今できたばかりの小さな命の種を、無かったことにすることは聖魔法の使い手として選択肢になかった。
幸いにも殿下は媚薬が切れるまでかなりお元気だったので、切れる頃には体力のスイッチも切れてお休み中。
「なかったことには出来ないが、隠すことは出来る。でも、王宮魔術師団へは報告義務がある。媚薬の件だけ報告したら入団辞退を告げて伯父様頼りに遁走一択か」
とりあえず基礎魔法の伝達魔法を展開するとエイネイ様に殿下の状況と入団辞退の両方を送って私はこの場から撤退し、そのまま伯父の居る辺境伯領への遁走を決行した。
家に未練が無いからこその、素早い行動が第三王子殿下に大きな衝撃をもたらすことは私には分からなかった。
だって、媚薬で抗えずの過ちだとこの時の私は信じていたのだから。




