再会は唐突に
一時的にレイストン王国に帰ってから、クーロン皇国に戻って数日。
いつも通りの穏やかな一日になるはずでした、この訪問者が現れるまでは……。
ここに来るのは村のおじいさんやおばあさんばかりなので、完全に油断していた。
ドアのノックの音に返事をして開けて、見た顔はあの仮面舞踏会の夜以降に顔を合わせることなく逃げ出した相手。
レイストン王国の第三王子殿下であるトーラス・レイストン殿下でありました。
失礼にもほどがあるのですが、人生最速のスピードで開けたドアを閉めて鍵まで掛けて裏口すらも風魔法で最速で鍵を閉めて、窓までがっちり施錠を一気に風魔法で済ませました。
まさか締め出されるとは思っていなかったのでしょう、数十秒ののちにさすがの殿下も一時停止から解放されてノックと共に声が掛けられる。
「シャルロッテ嬢。ようやく見つけた、私の話を聞いてほしい。どうか顔を見せてくれないだろうか?」
丁寧だが、断固とした意志を感じさせる声でかけられる言葉に私には決まった返事しかありませんでした。
「話すことはありません。責任を負う必要はないと手紙にも書きました。私は実家も出て、ここでの穏やかな暮らしが幸せなのです」
きっと一瞬だったから、私のお腹には気づいていないはず。
ゆったりしたワンピースで過ごしていたのは幸いだった。
この子だけはバレるわけにはいかないのだ。
「俺はシャルロッテ嬢に話したいことがあるんだ。きちんと顔を見て、あなたに伝えたいことがある。どうか、話す機会をくれないだろうか?」
王族なら、無理に踏み込んだって問題にはならない。
ただここはレイストン王国内ではなくクーロン皇国なので、無理に立ち入らないだけだろうとは思うがどうしても踏ん切りはつかない。
だって、どうしたって責任のために来ただけだと思う。
貴族令嬢に王族のお手付きがあったら、その方以外に嫁ぐ道なんて無い。
それを望まないから逃げ出したのに、しかもこの子を取り上げられたくなんてない。
その思いから踏ん切りがつかないまま、そしてドアを開けられないままに立ち尽くしている。
「いきなりここからレイストン王国に連れ出したりはしない。それは約束する。ただ、あの日のことにはきちんと話をしなければいけないことがある、それをきちんと伝えるためには顔を合わせたい。お願いだ」
そこまで低姿勢になっている王族など、そうそうないだろう。
ここに居られる? 王国に無理に連れて行かない?
本当に? この子の存在を認識しても?
疑問だらけで、やはりまだドアを開けることが出来ない私にもう一人の声が届いた。
「シャルロッテ姉様、僕も来ています。殿下が無理強いしないように僕が必ず止めるから。どうか殿下の話を聞いてあげてくれないかな?」
もう一人は私の従兄弟のレイゼルだった。
殿下の側近として護衛も担当する騎士として側に居るはずのレイゼル。
学園も一年飛び級で私と同じ年に卒業した文武両道の秀才であるレイゼルも一緒。
物理的に殿下を止められる人物が居て、それなら一応話だけ聞くべき?と悩んで私はここで通信魔法を発動した。
その動きに外も一瞬緊張した様子だったが、魔法に強い騎士も連れていたのだろう大丈夫ですというこう掛けに外は一旦落ち着いたようだ。
私はクリスティアに通信を繋いだ。




