一時のお出かけ
クーロン皇国の端にあるこの村は本当に住人までのどかで、気候も土も良く大変過ごしやすくすっかり気に入っているが、村でお産を手伝ってくれるおば様達に言われた。
「さすがにこのくらいの頃に一度お腹の子がしっかり育っているか一度産婆と医師に診てもらったほうが良い。産み月の目安も教えてくれるしねぇ」
という話を出された。
今なら、まだ馬に乗っても差し支えないだろうけれどもう少しお腹が大きくなると馬に乗ること自体が難しくなるからと勧められた。
そしてこの村はヴィンスレット辺境伯領とも仲がいいので、クーロンの医者の居る地域まで行くよりヴィンスレット辺境伯領の医者の方が近くて何かとお世話になっているという。
だからいったんレイストン王国の医者に診てもらっておいでとお話しされた。
隠しているが、聖魔法で自分の妊娠経過は一応追っている。
順調に成長しているが、医者ではないため問題があるかどうかまでは分からないし大きさからの産み月の産出も自分では難しい。
いつごろ産まれるかの予測は確かに必要なので、私は一旦準備も落ち着いたので短期間ヴィンスレット辺境伯領へと戻ることにした。
その旨をヴィンスレット辺境伯である伯父様夫妻とクリスティアとマノンに知らせを出しておく。
三日後には一度ヴィンスレット辺境伯領に行くこと、医者に今の経過を観察してもらうこと、その後また村に戻ることを短めに伝えた。
すると私の移動に合わせてマノンとクリスティアは私が向かう医院に行くと返事が来た。
経過観察が済んだらそこで会わないと会うことも難しいだろうからと、少しでもお茶しましょうとなり了承の返事を出した。
伯母様からも診察に付き添うこと、医師に先触れを出しておくのでそのまま医院に向かっていいことの返事が来た。
マノンやクリスティアとお茶をするというと店も予約しておくことと、伯母様とマリエラ姉様が一緒にお茶をしたいとのことで再び二人に連絡すれば辺境伯家の参加も無事了承された。
「さ、パライズ久しぶりにヴィンスレット辺境伯領へ行きましょう?」
パライズは任せてと言わんばかりにブルルと鳴くと、鼻先でお腹にもちょこんと触れる。
するとお腹の我が子もポコとパライズの鼻先に動きで返しているのが分かった。
「まぁ、あなたたち産まれる前からすでに仲良しさんみたいね。ありがと、パライズ」
パライズが賢いからこそ成り立つのである。
パライズは妹分の子はボクおじさん?みたいな感じでちょっと自慢気なのが面白かった。
「そうね、まだまだ立派なパライズは良いおじさんになるわね!さ、ゆっくりと行きましょうか」
そう声をかけて鞍に乗ると、パライズは普段の並足よりも揺れに気を使ったゆったりとした足取りでヴィンスレット辺境伯領へと向かって移動を始めたのだった。
まさか、その出発の一時間後にトーラス殿下が我が家に来ているとは知らずに……。




