隣国への脱出3
お昼ご飯は、自分で焼いたパンに野菜とチキンのスープと簡単に済ませてまたのんびり薬草畑と野菜の家庭菜園の面倒を見て、その後はやはりのんびりと調薬をする。
国境沿いの小さな村には薬師も医師も居ない。
なので、この間お腹を痛めたご老人に胃腸薬を作ってあげたら大変喜ばれた。
「こんなに効く薬は初めてじゃ。若いのに腕のいい薬師さんじゃなぁ」とご満悦の様子。
その後も傷薬や熱さましの薬も要望に応じて作っては村人に提供した。
そのおかげでここに住んで一か月ですっかり村には若いが凄腕の薬師が来てくれたと認識されて、よそから来たにもかかわらず有難がられて、すっかり村仲間認定を受けることができた。
そうした環境なので、大変のどかにスローライフ満喫しています。
「ふふ、ここの空気とっても良いものねぇ。過ごしやすくて助かるわ。あら、今日もお客さまね?」
そんな私の声に答えるように、家の前に簡単に作った椅子と机でお茶をしているとテーブルにちょこんと可愛いお客様。
『ピィィ、ルルルル』
可愛らしい鳴き声の小鳥は、右の羽を痛めている様子。
「それじゃあ。飛ぶのが辛そうね? さぁ、こっちにいらっしゃい」
声をかけて右手を差し出せば、小鳥は私の手のひらにちょこんと乗って佇み、大人しく撫でられている。
その間に聖魔法で治癒をすれば、小鳥にとっては重症だった羽の傷もすっかり癒えている。
「もう大丈夫なはずよ。今後は気をつけなさいね」
そう言ってふわっと飛ぶように促せば小鳥はピィチチチと鳴いてしっかりと羽ばたいて去っていった。
見送っているとパライズが近寄って来る。
その傍には子ぎつねを連れた母狐の姿が見える。
「まぁ、今日は可愛いらしいお客様の多いこと。どうぞ、いらっしゃい」
そう声を掛ければ、母親の後についている子ぎつねは左の後ろ足を地に付けられずプランとしている。
「あぁ、脱臼しているのね。生まれつきだとなかなか難しいのだけれど。ここまであなたが頑張って育てたことが良く分かるから。きっと大丈夫よ」
声に応じて母狐は子ぎつねを私の前に導くと、私と子ぎつねを見守るように側に居た。
「きっと大丈夫。あなたもお母さんみたいに立派に駆ける狐になれるわよ」
プランとした左の後ろ足を撫でながら治癒を掛ければ、子ぎつねの足はしっかりとした様子を見せる。
「さ、これでおしまい。きっともうあなたは駆けることが出来るわ」
その声に恐る恐る自分の足を地に付けた子ぎつねは驚いたような表情を見せた後に一気に我が家の前を行ったり来たりして見せた。
それは喜び溢れんばかりの様子で、大変微笑ましく和やかな雰囲気だ。
『キュン!』と嬉しそうな鳴き声に母狐も大変満足そうな様子を見せた。
そして、親子は頭を下げると森へと楽しそうな子ぎつねをたしなめつつ帰っていった。
「今日も大変有意義で和やかな一日で、私は満足しているわ。パライズもここでのびのび出来て良いでしょう?土地が広いっていいことよね」
なんと、村の端っこにある我が家。
クリスティアによると森の中ほどまでは、この小さな一軒家の所有地だというのだから驚きだ。
クリスティアのひいおじいさんが、その昔に隠居用に建てたもののその後誰も使うことなく手入れだけ定期的にされていたマクレガー家所有の隠れ家の一つだという。
ここの雰囲気が気に入っていたクリスティアはこっそりとここを引き継いでおり現在の所有者はクリスティアだという。
なので、好きなだけ住んで構わないし、カスタムも可。
住みやすいように使っていいという許可を頂いている。
なので、今はゆっくりと子どもを迎える準備を始めたところだ。




