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仮面舞踏会での過ち~なかったことにはならなかったのでしっかり遁走致します~  作者: 織原深雪


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隣国への脱出2

 さて、あれからちょうど一か月。

 私はクーロン皇国の端にある村で、大いにスローライフを満喫していた。

 小さな一軒家で、まず畑を耕し野菜やイモ類を植えて育て始めている。

 その片隅にはいくつかの薬草も植えて育てている。

 そんな私をパライズはのんびりうちの周りの草を食みながら見守ってくれている。

 大変、のどかで有意義でここ十五年ほどの中で一番落ち着いた生活が出来ていると実感する。

「ここは気候も安定しているし、作物のための土壌も良いし、村の人も気さくで動物たちも良い子が多くって。控えめに言っても最高ね!」

 実家ではたまに料理にすらありつけないこともあり、薬学を学びながら調理まで出来るようになっている私は貴族令嬢とはいえ一人でも難なく田舎のスローライフを満喫できるのだ。

「妊婦でさえなければ、冒険者としてあちこちの国を回っても良かったよね?パライズとならきっとあちこち行けたもの」

 そんな私の言葉には、ブルルと嘶いて同意を示してくれる。

 でも、私のお腹にちょこんと優しく鼻先を向けてブルと首を横に振るパライズは今はダメと言っている様子。

「そうね。今はまだ無理よね。この子が産まれて少し落ち着くまでは。ここで腰を落ち着けられると良いのだけれど。そろそろ捜索の手が伸びてきそうよね。さて、どうしたものか」

 私はこの子と穏やかに慎ましく薬師として暮らしていくのが希望だ。

 この子が少し大きくなったら、こっそりまたレイストン王国に戻るつもりはある。 

 ただ、この子が第三王子の子と知られれば結婚が強要されそうなのも嫌で皇国に出たのよね。

 他国で生まれた子はその地の国の国籍を取ることが出来る。

 それを利用して私も皇国の国籍取得を狙っている。親子で国籍が違うと厄介なので他国民でも国内で出産すると子どもと一緒に国籍取得が可能になるのだ。

 そうすれば、その後は名を変え、容姿を魔法で変えて皇国人としてレイストン王国に移住する。

 そして細々と国内に居れば国主守の仕事はこなせるのだ。

 国内に居るだけで国守りの要になるのが聖魔法の使い手を国外に出したくないレイストン王国側の理由だ。

 すでに聖魔法の使い手が王太合様で70代、エイネイ様で60代なので向こう五年は大丈夫と思ってはいるが大切な辺境伯領の伯父様や伯母様にマリエラお姉様、レイゼルにクリスティアにマノンがいる国を荒らしたいわけではないから。

 それでも、結婚を強要されるのだけは嫌だ。

 私にだって愛し愛されて家族を持つ夢を諦められないのだ。

 なんと言おうと、今回のハプニングの責任で結婚してもらうのは違うという私の唯一と言っていい乙女な部分の叫びに従ったらこうなった。

 気持ちと思い付きで行動できちゃうところが私の長所で短所なのかもしれない。

 それに付き合ってくれるのはパライズとクリスティアくらいだが、一人と一頭が理解し支えてくれるなら十分だと、私は薬草の根付きを確認しながら今日のお昼は何にしようと考えつつ一軒家へと戻るのだった。

 


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