閑話 その頃の王都では2
そうして、王都の邸には義妹のリーリアが使用人と共に残されることになったが使用人たちは夫人が逮捕されるのを見るや否や暇を申し出てさっさと去っていく。
残ったのは執事と数人の昔からの使用人のみだった。
一応タウンハウスなので、昔からの数人でも仕事は回るがリーリアは自分の専属侍女まで居なくなったことが不満だった。
「なんでお母様は騎士に連れていかれたの?」
それには執事が深いため息で真実を告げた。
「あなたの母君は不当にシャルロッテ様の給金の一部をご自身の口座に送金するよう文書偽造なさった罪で騎士団に捕まったのですよ。これを知れば、旦那様は離縁し、あなたも子爵令嬢では無くなるでしょう。幸いにもこの家にはきちんと跡継ぎのシャルロッテ様がいらっしゃいますので」
その一言に、リーリアは衝撃を受けた。
今まで一応子爵令嬢故に下位貴族の中では上の方だった。
そのおかげで準男爵や男爵家の令嬢にはかしこまってもらい、気分よく学園で過ごせていた。
それが子爵令嬢じゃなくなる?私はどうなるの?
リーリアは先行きの不安になすすべなく流されるしかなかったが、それも今までの母親と自分自身の行動の結果であることも事実。
しかし、それが飲み込めるようなリーリアではないのでまたひと悶着あるのは言うまでもない。
さて、シャルロッテの手紙を受け取り子爵夫人を騎士団に受け渡し、公文書偽造の証拠を持ってくるように魔術師団の副師団長のエイネイ様にも文を早々に届けてもらうよう手配して、レイゼルは第三王子の執務室へと戻る。
これからの報告に胃を痛めつつ、レイゼルは向かうしかない報告へと向かう。
執務室の前には近衛騎士が控えており、レイゼルの顔を見ると軽い会釈と共に執務室に入室許可を取ってくれる。
「殿下、レイゼル様がお戻りになりました」
「通せ」
その声と共に扉が開き、レイゼルはキリキリと痛む胃を抱えて入室し報告を始める。
「トーラス殿下。確認に参りましたシャルロッテ・ナローズ嬢に関しまして報告いたします。すでに王都のナローズ邸よりすべての身の回りの持ち物を出して邸から出ておりました」
事実だが、まさかの殿下が媚薬からの想い人との一夜ののち相手に去られるとは思いもよらなかった。
ここにいる側近は皆、殿下がシャルロッテ嬢に想いを寄せていることを知っていた。
今回の媚薬事件で、媚薬の緩和をお願いしたが隣国から裏ルートで流され始めた厄介な媚薬であることが災いし、未婚であるシャルロッテは王子のお手付きとなってしまった。
すでに婚約は断られていたので、かなり消沈していた王子だったがそれでも今回の事件でハプニングとはいえ既成事実が出来たのであれば令嬢のためにも責任を取り婚約となる運びであった。
しかし、肝心のシャルロッテは既に出奔済み。
手紙には今回のことは事故であり何の責任も負う必要はありませんときっぱり記されており、渡した手紙を読んだトーラス殿下に大ダメージを与えている。
シャルロッテが記しているのは紛れもないシャルロッテの本音であろうことは間違いがないと、断言出来てしまうだけの付き合いのあるレイゼルは、内心で大いに頭を抱える羽目になった。
ロッティ姉様、もう少し居てくださればどうにかなったのに。
無駄に行動力があるからなぁという感想しか出てこない。
それは副師団長のエイネイ様もで、入団辞退の書類とすでに出奔済みの連絡と、追跡魔術の喪失で証拠の偽造公文書を提出後に泡吹いて倒れたのであった。




