閑話 その頃の王都では
シャルロッテがサクッと王都脱出を図ったその日。
ナローズ家の邸では、少ないながらにあった家具までごっそり空になったシャルロッテの部屋を見てアネリアがほくそ笑んだ。
ようやく、邪魔な継子が家を出て行った。
今後はその継子の収入まで手に入れられるし、ナローズ家は自分の娘のリーリアに継がせられる。
これで自分の子爵夫人の座も安泰というもの、そう安心していたところに王宮魔術師団から問い合わせが入った。
「シャルロッテ・ナローズ嬢は御在宅でしょうか?本日より勤務のはずが王宮魔術師団への登城がありませんので、もしや体調不良ではと副師団長様と団長様より確認のため派遣されました」
そんな騎士の登場に内心慌てたのは言うまでもない。
空っぽの部屋など見られた日には大変なことになる。
そこにシャルロッテの母方の従兄弟であるレイゼル・ヴィンスレット辺境伯令息まで来てしまった。
「こんにちは、ナローズ子爵夫人。シャルロッテの部屋は聞いています。第三王子殿下も心配しておいでなので部屋を確認させてくださいね」
笑顔で押しの強い縁戚のレイゼルは返事を待たずに、迷いのない足取りで騎士を連れてシャルロッテの部屋に向かう。
止めることも叶わず、空っぽの部屋を目撃したレイゼルは笑っていない瞳の笑顔でアネリアに聞く。
もはや背筋を流れる汗が止まらないアネリアである。
「夫人。シャルロッテはいつから、こんななにも無い部屋で過ごしていたのですか?そして、肝心のシャルロッテはどこでしょうか?ご存じないですか?」
素直に答えなければ、どうなるか分からない気配を察したアネリアはありのままを答えた。
「私が朝、ここに来た時には昨日まであったベッドも服も机も椅子も綺麗に消えていたのです。てっきり今日から王宮の魔術師の寮に移動のために手配でもしたのかしらと思っていたところで。なのでシャルロッテはてっきりすでに登城したものとばかり」
そもそもが、今日には移動の予定だったのでそう思っても何ら間違いはない。
備え付けの家具などもあるだろうが、気に入っていたものだから持っていくという者も居ないわけではないだろうからおかしなことでもないはず。
アネリアはそうも感じて、見つけたときのことを話した。
しかし、そこにレイゼルが現れることを予期していたかのようにレイゼルに向かって一通の手紙が浮き上がって来た。
そんな魔法は見たことが無く、アネリアは驚きを隠せぬまま固まってしまう。
その手紙を驚くこともなく、きちんと宛名も自分であるとレイゼルは確認するとその場で封を切り手紙を読み始めた。
そして、ニコッと笑顔を浮かべるとレイゼルは軽やかな声で騎士に命じた。
「ご婦人は公文書偽造の疑いありと言うことで、騎士団詰め所までご同行願いましょう。なんで、王宮魔術師団に入るロッティの給金の一部をナローズ家のましてや婦人の口座に送金手続きするのか?裕福なはずのナローズ家で?おかしいですね?搾取にもほどがあるこんな書類にロッティが署名するはずがないですからね。さぁ、行きましょうか」
シャルロッテ不在の中でも、義母の犯罪はしっかりと裁かれることになりそうでなによりなのだがナローズ家にはまだ問題があることを、出て行ったシャルロッテだけが知らなかったりする。




