領主館にて5
「それじゃぁ、王宮魔術師団の入団も蹴ってこの辺境に近いところで薬師として生計を立てていくと」
そんな伯父様の言葉に私は頷き、そして言った。
「えぇ、そのつもりよ。そしてそれによってある程度貢献したと思ったら、数年で国を出るつもり。色々状況も変わるだろうし。薬師としてならどこでもやっていけるもの。私は私らしく生きられる道を選ぶわ。聖魔法の使い手以前に、一人の女性として人生を自由に選ぶ権利があるはずなのよ。貴族としての務めはそれこそ父や義母と義妹がすればいいわ。私はナローズ家から除籍するよう父にすでに手紙を書いておいたから。それを伯父様から父に送るよう頼みたいの」
私の言葉に伯母様が言う。
「自分の居場所を知らせたくないのね?だから手紙もコールエル経由にしたいのね?」
ライラ伯母様の言葉に頷き、私は一言。
「伯母様、レイゼルがここに帰ってきても私が来たことは言わないでね?王都でのことは事故だから気にしないこと。家族関係で出奔したことだけ話しておいて」
私の言葉に、王都で何かしらあったことは察したが私が話さないことも同時に理解してくれた。
私がそのあたりが頑固なことも、幼少期から父より関わる機会の多い伯母様はよく知っているのだ。
それはマリエラお姉様も同じで、深いため息と共に言った。
「何かしらあったのでしょうけれど、ロッティがすでにこうと決めたら曲げないことは知っているわ。そしてそれは大抵はロッティの深い懐でも我慢の限界だったり理不尽だったりすることだもの。分かったわ、私たちも追求しないし居場所は話さない。でも、折に触れ連絡くらいはしなさい。一方通行でも私たちはあなたが無事で、元気ならそれでいいのよ」
マリエラお姉様もよくよく私を分かってくれている。
「ありがとう、お姉様。必ず連絡はするわ。でも、この先はどこに住むかもとかは、話さないわ。王族に聞かれても知らないと言えるように」
私の一言で伯母とお姉様はすこしピンときたかもしれない。特にレイゼルに話すなという一言から。
伯母様もお姉様もとても感も良く、賢い方たちなので。
それでも問い詰めず、聞き出すこともせず私の好きにさせてくれる。
辺境伯家のその姿勢を、嬉しく思う。
「伯父様、伯母様。少しの間迷惑をかけるかもしれないけれど、私は大丈夫なので心配しないで。ちゃんとしっかりやっていくから」
その一言に、伯父様も伯母様もしょうがないといった苦笑を浮かべ頷いた。
「ロッティがしっかりしているのは分かっているからそこは心配していないよ。でも、どうにもならなくなったらしっかり連絡すること、私たちを頼ること。一人で頑張ることは悪くないけれど、頑張るにも限界がある。そこの見極めは出来ると信頼しているから送り出す。そのことを忘れないで」
伯父様も伯母様も、マリエラお姉様も最後まで詳細を聞かずに送り出してくれた。
そのことに感謝でいっぱいだった。
私はその話の後、早々に領主館を出て話したこととは裏腹に隣国への国境を越えてレイストン王国からクーロン皇国へと移住のために移動した。




