領主館にて2
着替えも終えると、メイドに案内されて領主館のサロンに通される。
通されたサロンはお客様用ではなくて、家族用の方だった。
私はここでは身内の扱いだからいつもこちらに通される。
こちらは伯母様の趣味で木材の温かみがある調度品に囲まれた落ち着いた雰囲気の空間になっている。
「やっぱりロッティは温かな色が似合うわね。そのドレスも良く似合っているわ」
伯母様が私のデイドレスを見てそんな感想を言う。
今着たのは、オレンジに淡いグリーンの刺繍の入ったウエストに黄色のリボンがアクセントになっている可愛らしいデイドレスだ。
ウエストのリボンは琥珀の私の瞳に合っていて、着心地も抜群で気に入ってしまった。
「伯母様の見立てが良いのもあると思います。いつもいろいろありがとうございます」
そんな私の言葉に、伯父様も伯母様も苦笑している。
「グローレルは商才は確かにあるのでしょうけれど、子育て家族に関してはダメ人間ね。自分の娘がどうしているかも把握できないままじゃ駄目よ」
そこは容赦ないライラ伯母様の一言。
まぁ、事実なので庇いようがないので私も苦笑で返すしかない。
「グローレルはな、たしかに仕事人間過ぎる。気づいたときには一人になってるだろうなとは思うが。こればっかりは自分で招いているものだから仕方ないな」
父とは母と共に幼馴染であり年長者である伯父様の言葉も事実であり、そして行く先の結果であるのだろう。
父は会えば親としての愛情を感じはするが、年に1回か2回で親が出来るなら子育てに苦労などない。
そしてそこが父には備わっていなかったのだろう。
義母が居るから大丈夫と思っていたのだろうけれど、自分の子が出来れば継子は可愛くないのも当たり前で、扱いが変わるのも理解できる。
実際にあそこまでやるのはどうかと思うけれども。
守り切れなかったお母様の形見の品はいくつもある。
お母様の使っていたガラスペン、机、ベッド、服、アクセサリーも回収する前に売られてしまった品もある。
私がもらったクマのぬいぐるみも、服も、靴も取っておいた品で捨てられたものも多数だ。
母が長くないと悟って先々までそろえていた品のいくつかはリーリアに横流しされた物まである。
そんなことも、不在が多い父は気づいていなかった。
私の声も届かないほど身近に居てくれない父は、私にとってもとうとう名前だけになりそうなほどに希薄になってしまった。
家族と言われると辺境伯家の伯父様、伯母様、レイゼルにマリエラお姉様の方が浮かぶくらいには。
「それで、魔術師団の入団まで辞退してここまで来た理由は?」
伯父様は核心の部分を聞いてきたが、私はニッコリ笑って玄関の前と同じことを言う。




