領主館にて1
「まぁ、レイゼルったら行方不明だなんて。確かに魔術師団は辞退したけれど。それはそのまま魔術師団に入っても今後義母と義妹に搾取され続けそうで面倒だったからよ?」
玄関でニッコリ私が返せば伯父様はちょっとため息をつきつつ、館へと迎え入れてくれる。
「まぁ、とりあえずいつもの強行軍で移動してきたのだろう?今日はここで休みなさい」
伯父様の言葉にライラ伯母様もマリエラお姉様も同意を示す。
「本当に、道なき道をぶっちぎってこの辺境伯領に王都から三日で移動してくるのはあなたくらいよ、ロッティ」
マリエラお姉様は心底呆れると同時に、しょうがない子ねと言った感じで私の頭を撫でてくれる。
それは仕方がない。
街道を五日かけて一人で移動したときは、野盗との遭遇、街でのナンパ、宿屋での不法侵入などなど様々なことがあり、このぶっちぎりの道が一番安全だったという結果なのだから。
この中身は話していないが伯父様あたりは把握していそう。
「ふふ、それも賢いパライズが居てくれるおかげよ。あの子じゃなきゃこの移動は出来ないもの」
パライズは元々この辺境伯領で生まれた葦毛の駿馬だったが、王都に遊びに来た際に子爵家で私と出会ってしまった。
パライズは穏やかな子だけれど、それは主人に対してのみ。
認めた人でないと乗せない、ある意味頑固な子でもある。
なので馬車は引けないし、子爵家でも私しか乗ることが叶わない子だったがだからこそ私だけの馬になってくれた。
義母と義妹には懐いていなかったので、危うく捨てられそうになったこともあったけれど私の母の実家である辺境伯領主から私にと譲られた馬なのでと言われて諦めていた。
そんな感じで一時は危なかった時もあるけれど、パライズとはずっと一緒に居られたのだ。
「まずは、お風呂にゆっくり入ってきなさい」
伯母様の一言で、私は領主館のメイドに連れられてお風呂に向かった。
ゆっくりと旅の埃を落とし、さっぱりとするとようやく乗馬服からデイドレスへと着替えることになった。
たまにしか来ないにもかかわらず、ここには子爵家の私の部屋よりドレスが揃っている。
お父様は本当にめったに帰ってこないから、私のワードローブの扱いもぞんざいであることに気づいていないだろうなぁと遠い目をしてしまう。
なにしろ商売が大好きすぎで自分で各地を回って仕入れては売りさばくのを楽しんでいる根っからの仕事人間で、小さな領地は父の弟を代官に据えて運営してもらっているのだから。
あちらの叔父様も父には困っているだろうが、仕事できるので我が家は下手な伯爵家より潤っているのも事実なのだ。
私には還元されていないが!
そんな私のワードローブに気づいたのは社交で王都に来た際に私の部屋を見たライラ伯母様とマリエラお姉様である。
それから辺境伯領の館に私の衣装が増えたのである。




