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人妖乃村のイレギュラー  作者: 傘丸うどん
第一章 旅の終わり
4/6

緑の池

 山の奥へと連なっている石畳の道を歩いていくと、あたりがだんだん明るくなっていった。

 そして、更に進むと森が一切なく、あたり一面が、真ん中にある橋を除いて光る池に覆われていた。

 池には、ところどころ小さな島のようなものがあり、島には竹や、木、草などがまばらに置かれている。また、池の中には、鯉、ナマズ、小魚などの魚類がおり、まるで池全体が小さな海のようなものになっている。


 「どう?綺麗でしょ?。」

 「そうですね。」


 黒影の返答にイレーナが、でしょ?と少し興奮気味に答えた後、池を眺める。


 「そういえば、なんで、この池は光っているんですか?」

 「それは――」


 イレーナが、島の方を向くと突然話を止める。水鏡には、眉をひそめた姿が写っている。

 しかし、島にはとくだん、変わったものはない。しいて言えば、大きな木が中心に立っているぐらいだろうか。


 「……なるほど。こんなところにあったの。やっぱり―」


 イレーナが、独り言をブツブツと喋りだす。何を言っているのかは、あまり聞こえない。


 「あの……大丈夫ですか?」


 黒影が、質問した途端、イレーナが、バッとこちらの方に振り向く。


 「もしかして私、なにか言ってた?」

 「はい。」

 「そう……あっ、独り言だから気にしないでちょうだい。それで、えっと……この池が光っている理由だったかしら?ほら、あれを見て。」

 

 イレーナが指した方向には、ぼこぼこと不自然に空いた岩壁がある。そこから、池の水がダラダラと無限のように水が流れている。


 「あの岩壁は、緑色の光る成分を含んでいたの。だから、昔は緑の洞窟と呼ばれていたわ。でも……」


 今度は岩壁と池の狭間を指差す。

 そこには、一列にきれいに並んでいる木の棒があった。

 イレーナが、そこに向かって石を投げると、もぞもぞと木の棒が動き出し、水の流れている穴の中に入っていく。


 「五年ほど前、あそこにいる虫が、この洞窟の岩を無作為に食べて、穴だらけにしたのよ。そのせいで、緑の成分が大半失われたの。しかも、その時、その穴から水が流れ出してきて、洞窟が浸水したのよ。」

 「え?じゃあ、虫が水がある場所まで穴を掘ったんですか?どうしてそんなことを?」

 「さあ?私もよくわからないけど、定期的に緑色の成分をその水に吐き出していたみたい。それで、その水が今の池になったのよ。」

 「へー。面白いですね。」

 

 黒影は、話を横流しに聞きつつ、イレーナが先程まで見ていた島をじっと観察する。

 

 これといって、不思議なものはないな。それに、違和感も感じ取れない。

 一体何を気にしていたのだろうか?

 草……木……これぐらいしかないような――


 「あれ?イレーナさん。あの島の真ん中にある――」

 「ああ……あれは、別によくある自然現象よ。さっ、もう夜は遅いのだから、急ぎましょ。」


 そう言って、イレーナが、黒影を引っ張りながら連れて行く。


 黒影の姿がどんどん遠くなる中、黒影が見ていた場所には、不自然に盛られた土があった。


















 そこから数分ほど歩くとイレーナの言っていた公金寺にたどり着く。


 公金寺には、屋根の瓦を除いてすべて赤く染色された木が使われており、外装だけ見れば中華風とも言えるような見た目をしている。

 

 イレーナが、ランプの火を消して、扉を開けた。

 公金寺の中は、旅館と言われれば分かるような内装をしている。また、光源がないにも関わらずなぜだか明るい。

 しかし、受付、宿泊者などの人影すら見えず少し不気味に見える。


 「あの……勝手に入って大丈夫なんですか?」

 「別に大丈夫よ。元々部屋は取っているんだし。」

 「でも……誰もいませんよ?」

 「まあ、今は深夜だからみんな寝てるんじゃない?」

 「でも――」

 「はぁ。ちょっと、静かにしてちょうだい。少し疲れてるのよ。」


 イレーナが、少しどすの効いた声で返してくる。

 黒影は、その声を聞いて言いかけた言葉を飲み込む。

 すると、何事もなかったように、再びイレーナが歩き始めた。


 ……怖い。あんなニコニコしていたイレーナが怒るとここまで怖いのか。

 しかも、周りの雰囲気も相まってより怖い。


 そんな事を思いつつ黒影は、なるべく静かにして部屋に向かって歩いていく。

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