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人妖乃村のイレギュラー  作者: 傘丸うどん
第一章 旅の終わり
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日乃村

 暗い森を抜けると目の前には、稲畑が広がる。畑は、先が見えないほど広がっている。稲は、ほのかに黄金(こがね)色に輝いて、幻想的な雰囲気を漂わせていた。

 また、稲畑を見ながら歩いてると、時折、稲の香りを運ぶ爽快な風が通って心地が良い。

 そんな中、この畑について色々とイレーナから聞きながら歩いていると、巨大な木の扉の前にたどり着く。


 扉には、太い丸太が何本も使われており、留具には金属までも使われている。

さらに、この以下にも屈強そうな見た目の物が、この村を囲むように連なっていた。

 

 「そうだ、これを被ってちょうだい。」


 イレーナが、懐から2つの小さな穴の空いた木箱を取り出す。

 

 「どうして、こんなのを被らなきゃいけないんですか?」

 「あの村の人間は、妖怪のことを嫌っているのよ。だから、あなたのその顔を見られると村から追い出されるかもしれないの。」


 黒影は、『なんで嫌いなんだ?』と不思議に思いつつ、言われたとおりに木箱を被る。

 木箱の中は、ニスの香りで充満しており少しだけ臭い。しかし、視界は良好で普段と全く変わらない。


 「じゃあ、そこで少し待っててちょうだい。」


 イレーナが、近くにある小さな木の戸口にコンコンと軽い音を立ててノックをすると、着物を着た男性が窓を開けた。

 男性は、目をこすっており、軽くあくびもしている。

 

 眠たそうだ。


 「どちら様です?」

 「私は、事務所の者です。こちらで起きている―――」


 イレーナが男性と話しているのを横目に、黒影はこの屈強そうな木の扉をじっと見つめる。


 どうしてこんな物が必要なんだろう?別に、見渡す限り周りには畑以外何にもないのに……あ。でも、野生動物とかの危険が及ばないようにするためと考えたら、別に不思議でもないか。まあ、こんなに屈強なものがいるかと言われたらいらないとも思うが――

 

 「さあ、この先が日乃村よ。」


 そんな事を考えていると、いつの間にかイレーナが真横に立っていた。

 急に話しかけられたもので、少しぎょっとしてしまう。

 

 「もう一度言うけど、その被り物は絶対に取らないで。」


 イレーナがそう口にした瞬間、扉が開かれる。

 

 村の建物は木でできていて、どれも立派でみすぼらしく見えるようなものが一切ない。また、商店や屋台などが見受けられて、子供、大人が楽しそうにしており、とても活気がある。

 しかし、子供、大人、それぞれが皆、同じような着物を着ており、あまり特徴的ではない。しいて言ったら、時折豪華な花がらの付いた着物を着ている人がいるぐらいだ。 


 そんな日乃村を歩いていると、人通りが一番多い場所にたどり着く。

 ここは、東西南北に別れている大通りの中心となっており、これらは村の外に出れる唯一の通りらしい。

 また、ここには人が容易に十人は入れそうなほど大きな井戸が置かれている。井戸は、ただ大きいだけではなく、不思議なことに水が一切なく底が見えないほど深い。

 

 「さて、これから何をしましょうか。」

 「え?なにか考えがあるんじゃないんですか?」

 「別にそういうわけではないわ。ただ、ここに来れば少しは見たことがあるものがあるんじゃないかと思ったのよ。」


 『どうしようかな』と小さな声でイレーナが呟く。

 そして、井戸に寄りかかって、考え込み始めた。








 数分ほど経つと、イレーナがぱちんと両手を合わせる。

 その音は、近くのベンチで座って、うとうとと眠そうにしていた黒影を起こす。


 「まあ、色々考えても仕方がないし、できることを全てやってみましょうか。付いてきて。」


 イレーナは、そう言うと公園に向かって歩いていく。

 黒影は、不安に思いつつもその姿を追いかけていった。


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