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人妖乃村のイレギュラー  作者: 傘丸うどん
第一章 旅の終わり
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復活祭

 廊下内はとても静かで、自分の足音以外聞こえない。加えて、廊下を進めば進むほど、だんだん悪臭が強くなっていっている。

 そんなことを不思議に思いつつ歩いていると、目的の料亭のある場所にたどり着いた。 


 「……何だ?この扉。」


 しかし、そこには料亭ではなく重苦しい見た目をした鉄の扉があった。

 扉には、何の装飾も掘られておらず、少し錆びついているだけの何の変哲もない、むしろ不気味に思える。


 道を間違えたのだろうか。こんな鉄の扉なんて、料亭にはなかったしな。どうしよう、一応、確認をしてみるか?本当は、この中かもしれないし。


 「……いや、別の道を探すか。」


 少しの間、中に入るかどうかの葛藤があったが、扉の異様な雰囲気が怖かったので手を出さないことにした。

 それに、何だか嫌な予感もするからイレーナに会ったほうが良いだろう。


 そうしてこの場を離れる。


 「何やってるんだ。」


 しかし、離れる直前、その扉が開かれ、中から目元のみが開いた袋をかぶった男性が出てきた。

 そして、こちらを見るやいなや腕を掴んでくる。


 「さっさと入れ。もう始まるぞ。」

 「え?いや、何を――」

 「だから、さっさと入れって。」


 そのまま、腕を引っ張って強引に中に連れて行かれる


 「ちょっ、離してくださいよ!」


 男性の腕の力は強く、いくら抵抗したとしても引き剥がせない。

 

 そして、そんな抵抗も虚しく、鉄の扉は閉められてしまった。


 「ちょっと、何するんですか!」

 「お前こそ、何をやってるんだ。集合にも遅れるし、正装の赤服でこないし、それに、そんな大声を出したら先客の方々に迷惑じゃないか。」

 「はぁ?だから、俺は関係ありませ……は?」


 関係ない、と言いかけた時、恐怖で体が固まる。

 

 部屋の中にいる全員が俺の事を見つめている。男性のような袋を被っていて、赤い服を着ている全員が俺のことを見つめている。

 まるで、俺のことを殺すような目で見てきている。


 「ほら、早く座れ。」

 「あ……はい。」


 結局、黒影はその異様な威圧感に流されるまま空いた場所に座った。すると、男性を含む部屋の中にいる全員は何ともなかったかのように両手を合わせて、まるで、神に祈りを捧げるような姿勢をとった。


 ここは、何なんだ。これは何をやっているんだ?寺の様子がおかしかったのはこれのせいなのか?

 それに、何でこんな事をやっているんだ?黙祷?お祈り?何もかもわからない。

 

 状況が飲み込めずに混乱していると、神棚に男性が上がってきた。

 男性は、白い装束を身にまとっており、その姿はまるで神社の神主のようであった。


 「皆さん、遂に我々が神に供物を捧げる日がやって参りました。このときのために、皆様が協力してくださったことを大いに感謝します。それでは――」


 白装束の男性が、数秒ほど間を開けた。

 その光景からは、何か大事なことを言おうとしているのが予見できた。


 「――復活祭の幕開けです!!」


 そう男性が言い終えると、とてつもない歓声が沸き上がった。

 その声は、部屋中に響き、常人なら間違いなく喉が潰れるほどの大きさだった。そのせいか、歓声はだんだんと薄れていって、歓声を上げたと思われる全員が喉元に手をおいて苦しそうにしている。


 「それでは、さっそく儀式を始めてる……と、言いたいところですが、贄の数が人数ほど集まらなかったため、儀式を行う者の選別を行いたいと思います。」


 男性がそう告げると、神棚の上に、目、口、更には耳まで塞がれた大男が上がってきた。

 そして、びくびくと体を震わせると、俺の方を指さしてきた。


 「……俺?」

 「第一の選別者は、彼です!皆様、どうぞ、盛大な拍手を!」


 そして、部屋いっぱいに拍手が沸き上がった。その音は、部屋の中に響き渡った。

 黒影は、部外者の自分が選ばれたことに驚いたと同時に、何ともいえないような気恥ずかしさを持つ。

 

 「さあ、次の方は――」


 そんな風にして大男は次から次へと選んでいき、最終的に俺を含む100人ほどが選ばれた。

 俺以外は、皆、ぐすりぐすりと涙ぐんでいるようだった。


 「さて、それでは、儀式の方に移りたいと思います。」


 男性が、指を鳴らすと、後ろから男性と同じような格好をした人達が、100個ほど色とりどりの袋を持ってきて、神棚の上に置いた。

 袋は、もぞもぞと蠢いており何やら声を発している。


 「彼らは、我が団体が皆様のために用意した贄たちです。皆様、どうか彼らを魂と分離させてくださいませ。」

 

 そう、男性が言い終えると、1人の男性が神棚に上がって、







 グチ、グチャ、グチャ、








 と、肉を刺すような音を出しながら、白い袋に刃物を突き刺す。

 すると、袋から叫び声が聞こえると同時に赤い液体が袋を染め上げると同時に滲み出る。

 そして、周りからは歓声が上がった。先程の歓声の比にもならないぐらい大きな歓声が。おそらく、彼らにとっては嬉しいことなのだろう。


 しかし、俺の場合は冷や汗が額を伝った。同時に、腹の底から吐き気がした。

 多分、中身が何なのか予想がついたからだと思う。


 「おお、素晴らしい。きっと、神もお喜びになるでしょう。それでは、次の方も、同様にお願いします。」


 そんな黒影とは裏腹に、白装束の男性は、気味の悪いほど不気味な笑顔を浮かべていた。


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